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 ムロの無限蘇生によって、ガディラの人々が生き返ってから数時間後。生き返ったガディラの治安局員に事情を話したあと、グリムの身柄を引き渡した夏郷達は、ウダホと共にレヴィスへと戻っていた。


「魔物に取り憑かれる前から、グリムはガディラでイードを名乗り、街の人達を脅してたなんてな」


「ある意味グリムも魔物だったってわけねぇ。笑えねえな、ホント」


 ムロと雁斗は、椅子にふんぞり返っている。


「二人共、態度悪いよ」


「堅いこと言うなって夏郷。グリムの野郎は実際に低俗な奴だったんだからよ」


「ムーロ! 罪を憎んで人を憎まずだよ! グリムは確かに酷い事をした人間だけど、イードを名乗って脅しをしただけだと言っていた。街を牛耳ろうとしただけで、過度に食料を得たりして街の人達を飢え死にさせようだなんて考えてもみなかったらしいじゃないか」


「お人が良すぎるっての夏郷よう。オレが人を生き返らせたことも含め真実を言ったとはいえ、そんな話をあっさりと信じたような治安局やつらだ。グリムの証言が嘘だとしても何の疑問も持ちゃしないさ」


「ムロ、かくいう俺達だって本当の本当なんて知らないんだ。あくまで俺達が戦ったのは、魔物に取り憑かれたグリム……魔物本体だよ。敵を間違えては駄目だ」


「……正直、オレは犯人がどっちでもいい。理不尽な死が起きたことが許せないんだ!」


 ムロがテーブルに拳を叩き付けた。


「ムロ」


「悪い夏郷。少し頭を冷やしてくる」


 ムロはテーブルを離れた。


「夏郷。俺、ムロの気持ち解らなくねえ。命が散るのに正解も不正解もねえけど、どんな理由でも死は悲しいから……」


「貴公。グリムの件は助かった。だが、リリちゃんの身柄は私に一任してほしい」


「ウダホ隊長! リリは、ガント達と居たいです! リリはイードを辞めます」


「イードの掟は絶対だ。リリちゃんが辞めると言うのなら、私は、力を行使しなければならなくなる」


「イードの掟には、背いた者は殺せってあんのかよ? それがたとえ国民でも」


「イードを外れることは裏切りと見なされる。裏切り者は始末しなければならないのだ」


「イードの為なら……イードの命令なら、たとえそれがイードそのものでも殺すってんのか!」


「貴公」


「イードだって所詮、人の集まりで成り立ってんだろ! その集まりがお前にとって裏切りとなっちまったとき、正直に掟を守んのか!」


 雁斗がウダホに掴み掛かった。


「何を言っている!?」


「組織だって人間だってんだ! 強いものには巻かれろ精神で簡単にひっくり返っちまうんだよ! 強いものが掟を破っても、そいつに巻かれた奴等は迷いなく付いていく……。お前、そうなっちまった組織相手にも掟を貫く覚悟あんのか!」


「イードの裏切り……だと!?」


 ウダホは、雁斗に問い掛けられ言葉に詰まる。イードを裏切る者の出現は想定していたが、イードが裏切ることを想定したことなどなかったからだ。


「リリ嬢を殺すってんなら勝手にしろ。殺したら最後、お前もイードも明日を迎えられないと思え」


「……なんて目をしているんだ……貴公」


 ウダホは、雁斗の目に背筋が凍ってしまう。まだまだ子供だというのに、酸いも甘いも経験してきたかのような目に。


「どうなんだ!」


「……子供らしくしていたまえ……お願いだ。リリちゃんのことも任せよう」


 ウダホは折れるとテーブルを立った。


「ウダホ」


「夏郷くん。イード全隊に、貴公達の事は私に一任するように通達しよう。だが、イードの目的の邪魔だけはしないでほしい。国を変える為、我々のような存在も必要なのだよ」


 ウダホが去っていった。


「夏郷さん、信じましょうよ。オレ、ウダホが本当に酷い奴だと思えないぜ。リリっちのことも任してくれたんだぜ?」


「うん。信じてみるよ」


「……夏郷、充分に頭を冷やしてきた……で、地上の者の勢力が増しているとナーデが言っていたのを思い出したんだけどよ。人間に魔物が憑いたことを指しているんだとしたら、ナーデの奴、感知できるんじゃないか?」


「そうか! ナイスだよ、ムロ!」


 思わず夏郷は拳を突き上げた。

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