脅威の正体
「ま、ざっとこんなもんだ」
ムロは、テレポートでビルの人達を地上に降ろしていた。
「ムロ、ごくろうさんだぜ!」
「このくらい何でもない」
ビルが震える。
「雁斗君は大丈夫かな」
「大丈夫だぜ、夏郷さん! 雁斗ちなら相手をコテンパンにして戻ってくるぜ」
「ガントなら大丈夫だ。リリの話を静かに聞いてくれていたから。大丈夫」
「……なぁ夏郷。結局、世界の脅威はグリムの野郎で決まりなんだろう?」
「ナーデの言う通りならね」
夏郷達の前に一台の車がやってくる。
「グリムから連絡が入ったが……貴公達!?」
「ウダホ!?」
車から降りてきたウダホは、夏郷達を見て驚き、夏郷も驚いた。
「てめえ、グリムに助太刀しにいく気か!」
「グリムは、ここ数年イードに報告をしていない。既にイードとしてもグリムは部外者扱いとなっている。そんなグリムからイードに連絡が入った為に私が出向くことになったのだ」
「ウダホ隊長。ウダホ隊長は、イードの目的を遂行する為なら、命を蔑ろにしても仕方ないと思いますか?」
「リリちゃん!? 貴公達に囚われていたのか」
「違います! リリは、リリの意思で行動を共にしています!」
「……イードを裏切るのか……リリちゃん」
「そう受け取ってもらって構いません」
「分かった。リリちゃんの気持ちもガディラの事態も……。そうか、街の死体はそういうことだったのか。この街の妙な雰囲気の理由もグリムの仕業か」
ウダホがビルを見つめる。
「ウダホ、この街を管理していたのもグリムだ。本来の治安局の人間は……おそらく……」
「過ぎた話はよせ。このビルの中にグリムが居るのだな」
「オレが送ってやるよ」
「あのときの野次馬を飛ばしたようにか?」
「てめえ気付いてやがったのか!」
「いや、今、確証を得たよ」
「嵌めやがったな!」
「早くしてくれ、手早く済ましたいのだ」
「……たくっ!」
ムロがウダホをグリムの元に飛ばした。
「……何か変……落ちてくる」
リリは、指を差した。
「黒い霧?」
夏郷が近付くと、黒い物体は獣へと変貌した。
「あのときの魔物だ!」
ムロは、武装石を発動して魔物に剣を向けた。
「神聖な判決!」
ムロの放つ光は、魔物を瞬く間に消滅させた。
「グリムが倒れてるぜ!?」
ぐったりとしているグリムに緋が気付いて近付いた。
「どう? 緋」
「……」
夏郷の問いに、緋は首を横に振った。
「おーーい!!」
ウダホを抱えながら雁斗が飛び降りてきた。
「ガント!」
リリは雁斗にしがみついた。
「雁斗ち!? その怪我」
「グリム相手には何ともなかったけど、黒いの相手だと手こずっちまった」
「手こずっただと!? 雁斗、マジで言ってるのか?」
「単体なら楽勝だった。あの黒いのの真髄は、人間の身体に取り付いてしまうことだ。自分の力をいかんなく発揮するために取り付く習性みたいだった」
「グリムの身体に取り付いていたってのか!? 取り付かれたことに耐えきれず死んだって訳か」
「グリムも死んで、街の人間も大勢死んでる。ビルに残されていた人達も、半ば軟禁状態だったから外の事は知らない。どうするんだぜ?」
「……皆、これからオレがする事は、他言無用で頼む」
「分かった。派手にしろ」
雁斗は察した。
「無限蘇生」
ガディラ全体に光のシャワーが注がれる。
すると、死んでいた者達が次々に目覚めていく。
「……!」
「お! 起きやがった。どうだ? 生き返った気分は」
「なんだ、いったい!? 私は何を!?」
グリムの表情は青ざめている。
「お前、いつから取り付かれたんだ?」
「取り付かれた、だと!?」
「成る程……繋がった。世界の脅威の正体は、あの黒いので決まりだ」
「雁斗、それだとあまり脅威とは言えないんじゃないか?」
「充分に脅威だ。もう既に、この国の人間に取り付いて溶け込んでいるとしたら、な」
「マジかよ、それ」
ムロが絶句した。




