第4話「思いがけない展開!」
敵襲に対して、一緒に出撃するように命令するフィオちゃん隊長。
完全に、レアとジュン、そしてモグリのことを採掘施設ホレホレに配属された新人の守備隊員だと勘違いしている。
フィオちゃん隊長の接し方を見る限り、まったく疑っていないようだ。
(しめしめ……! なんか、面白いことになってきたよぉ~~!)
レアは、その場のノリに任せるまま、フィオちゃん隊長の命令に従うことにした。
(楽しみにしてた試着コーナーがどうなるかわかんないんだから、せめて、こうやって状況を楽しまないとねぇ~~! あははっ!)
謎の敵対勢力が襲撃してきているというのに、のん気なものだった。
「やばい……状況に流されてる」
ジュンは、戸惑いながらも、自分たちは施設見学会の参加者だと言い出すタイミングを計りかねているようだ。
「ひ、ひぃ~~……ど、どうしよう……!」
モグリは、青い顔をして気絶寸前みたいだ。
どうして、そんなに怯えているのかわからないが、たぶん、いまの状況を思考するどころではないだろう。
(モグリちゃん……だいじょうぶかなぁ。また、吐いちゃわなければいいけど)
この子まで、巻き込んじゃって悪いことしたかな、とほんのちょっとだけ思った。
「あっ! フィオちゃん隊長! 大変であります!」
レアは、重大なことに気づいた。
「なに!? なんだ!? どうした!?」
「あたしたち、アーキ・ヴェセルナーを持ってないであります!」
「はぁ!? なんだってぇ!? アーキ・ヴェセルナーを持ってない!?」
そうなのだ。
レアとジュンは、施設の見学会に来ただけでアーキ・ヴェセルナーなんて持参していない。
そもそも、まだ自分たちのアーキ・ヴェセルナーなんて持ってない。
モグリは、どうか知らないが、特に何も言い出さないので、その場の流れに任せるつもりなのかもしれない。
フィオちゃん隊長は、「ふむ」と、うなずいた。
「そうか、きっと配属が決まったのが急すぎたんだな。守備隊員用のアーキ・ヴェセルナーの手配も間に合わなかったってことか」
「そういうことであります!」
よくわからないが、レアたちにとって都合よく話が進んでいるらしい。
「それは、すまなかった! こちらの落ち度だ! よし! ついて来い! 保管庫に置いてあるアーキ・ヴェセルナーから好きなものを貸してやる!」
「えッ!? いいの!?」
「えッ!? まじ!? なんでも、使っていいの!?」
好きなアーキ・ヴェセルナーを貸してやると聞いて、ジュンの目つきも変わった。
ふたりにとって、思いがけない展開だ。
「うむ! 緊急事態だからな! お前たちが、使いたいものを見繕ってくれ! ルミア・ギアード製のアーキ・ヴェセルナーなら、大抵のものは置いてある! 襲撃者に、うちの製品の力を見せつけてやるんだ!」
レアとジュンが、顔を見合わせる。
「い、いまの聞いた!」
「あ、ああ!」
お互いの目がキラッキラに輝いていた。
「「やったぁ~~!」」
レアとジュンは、笑顔でハイタッチした。
「ねっ! あたしの直感を信じて良かったでしょ!」
「まじかよぉ! うそみたいだ!」
「おい! お前たち、早く来い! 緊急事態なんだぞ!」
足早に歩いて行くフィオちゃん隊長から、早くしろと呼びかけられた。
「「了解であります! フィオちゃん隊長!」」
びし! と、敬礼するレアとジュン。
ルミギアのアーキ・ヴェセルナーを好きに使えると聞いたら、ジュンもノリノリだ。
「あ、あの……わた、わたしは……ほ、ほかにやることというか……! ええと、なんていうか……その、わたしは……!」
モグリが、ようやく言葉を絞り出した。
だけど、何が言いたいのかはっきりしない。
「ほら! モグリちゃんも行くよ! 一緒に、襲撃者からホレホレを守ろう!」
レアは、モグリの手を引いて歩き出した。
ノリだけで行動しているので、モグリが何を言いたいのかなんて気にしてない。
「え、ええ~~~~? いや……あの……!」
モグリは、まだ何か言いたげだが、急に大人しくなった。
「うう……ここで、なにか言い出したら疑われちゃうかもしれないし」
「どうしたの?」
「な、なんでもありません! わ、わたしもがんばります!」
「うむ! その意気だ! いやぁ、今回の新人は、みんな士気が高いなぁ! 守備隊長として、うれしくなっちゃうぞ! あっ~~~~はっはっは!」
フィオちゃん隊長は、心の底から嬉しそうだ。
よっぽど、レアたちは気に入られたらしい。
(や~~、そう喜ばれましても……。ここにいる子たち、みんな部外者なんだけどねぇ)
ちょっぴり……本当に、『ちょっぴり』だけ罪悪感を感じるレアだった。
「ここが、我らルミア・ギアードの製品が眠る保管庫だ! いま開けてやる!」
採掘施設内の長い通路を歩いた先に、保管庫の出入り口があった。
フィオちゃん隊長が、出入り口の横に備えられたパネルを操作する。
が~~――! がたん――!
大きくて重そうなゲートが、音を立てて開いた。
「さあ! ここにあるもの、なんでも使っていいぞ!」
「「うお~~~~!!」」
レアとジュンが、大興奮で保管庫の中へと駆け込んだ。
保管庫の中に、ぐるりと視線を巡らせると、所狭しとばかりに多くのアーキ・ヴェセルナーが並んでいる。
「うひょ~~! 高レアアイテムばらまきイベントきた~~~~! あっ! これ、カタログで見て、欲しかったやつ! あっちには、第8世代のバンカーライフルもある!」
「す、すっげぇ……! B級どころかA級モデルまである! これ、新型のサブアームユニットだ! こっちの実体剣は、デモンストレーションで戦艦をぶった斬ってたやつ!」
どれを見ても、かなりの値が張る代物だ。
本来なら、レアやジュンが手を出せるようなものじゃない。
だけど、それらをどれでも使っていいのだ。
「うあ~~! 夢みたいだよぉ! ねっ! ジュンちゃん!」
「お、おう! ほんと、夢のようだ!」
ふたりとも、夢見心地だった。
「ここにあるのは、元はデータ取りやディスプレイ用に使われていたものだ。だが、整備はしてあるから新品同様だぞ。ほら、セットアップ用のタブレット端末だ」
フィオちゃん隊長は、小型のタブレット端末をみんなに配った。
「リストから使いたいものを選んだら、アセンブリーチェンバーに行くんだぞ。サポートアームが、アーキ・ヴェセルナーを運んでくれる」
「おっけ~~おっけ~~! 心得ているであります!」
「お前、な~~んか軽いやつだなぁ。まあ、堅苦しいよりもマシか」
フィオちゃん隊長が、苦笑する。
でも、レアの軽い性格に悪い気はしていないように見える。
むしろ好ましそうな雰囲気だ。
「よっしゃ~~! 盛りに盛るぞぉ~~!」
「急げよ! 緊急事態なんだからな!」
「わかってるでありま~~す!」
レアは、タブレット端末を片手に瞳をキラキラさせながら物色を始めた。
ジュンも、うきうきとしながらアーキ・ヴェセルナーを選び始めた。
モグリだけが、
「……ど、どうしたらいいんだろう」
青い顔で、震えていた。




