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星海のストライヴガールズ!Side ~惑星ナンヤネンの攻防!~  作者: エミール藤峰


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プロローグ!

「あ~~あ、あたし専用のアーキ・ヴェセルナーが欲しいなぁ」

 ある日の昼下がり。

 レアは、屋外のカフェテラスで、ちびちびとアイスティーを飲みながらぼやいた。

「本当に、欲しいと思ってるなら購入費用にあてるはずのバイト代をガチャで溶かすなよ」

 ため息交じりに言うのは、レアの友だちのジュンだ。

 ふたりは、ルミナスという星域に住む10歳の女の子だった。

 レアは、濃いオレンジ色の長い髪で、ぱっちりとした青い瞳をしていた。

 背丈は、スラっと高く、同年代の子よりも大人びて見える。

 ジュンは、黒髪のショートヘアで、切れ長の金色の瞳。

 背丈は低めで、華奢な体型をしていた。

 今日は、学校もお休みで、ふたりで街に繰り出していた。

 だけど、普段は明るいレアが、今日はつまんなそうにぼやいてばかりだった。

「溶かすつもりなんてなかったんだよぉ。あたしは、ただ30連だけしよっかなって課金しただけだったのに、気づいたら天井までガチャを回してたんだ。ほんとは、そこまで課金するつもりなんてなかったんだよぉ。おかげで、バイト代が吹っ飛んじゃった」

「それを溶かしたって言うんだろ。お前さあ……いい加減に、ガチャ運がないことに気づけよ」

「気づいてるよぉ。気づいててなお課金しちゃうんだ」

「どうしようもないな」

「はあ……バイト代があれば、ライフルの一本くらいは買えたのに」

「いまさら、後悔したって遅いっての」

 レアは、街中にある広告塔から流れる映像に目をやった。

 そこには、騎士を思わせる機械的な装備を身に着けた女の子たちが、颯爽と宇宙を駆け抜ける映像が映っていた。

 彼女たちが、身に着けているものはアーキ・ヴェセルナーと呼ばれるものだ。

 ファンタジックな見た目をしているが、すべて最新のテクノロジーで造られたガジェットで、あれを身に着けた女の子たちは、フォージ・ブレイヴと呼ばれる勇者になれる。

 その手にした光り輝く剣は宇宙の闇を裂き、まばゆく閃くライフルの軌跡は星をも砕く。

 身にまとう流麗な装甲は、見た目よりも頑健で、流星群の衝突にも耐えられる。

 背中の羽のようなスラスターは、ひとたび粒子を放てば、宙間戦闘機よりも速かった。

『ルミア・ギアード最新作、シュヴァリエフレームシリーズV17好評発売中! これを装着すれば、貴女も星の姫騎士になれる! お求めは、ルミア・ギアード直営店で!』

 広告から流れる音声を聞き終えたレアが、ため息をついた。

「ルミア・ギアード……略してルミギア。あたしたちの住むルミナス星域にある最大手のアーキ・ヴェセルナー製造企業。そのシェアは、ルミナス星域の50%を誇る。あたしたちルミナス星域の女の子たちの憧れのブランド」

「……急に、説明を始めてどうした。それ、誰に向けて言ってんだ」

「あたしも、ルミギアのアーキ・ヴェセルナーが欲しいよぉ~~~~!!」

 がたん! と、カフェテラスの席から立ち上がるレア。

「大声を出すな! 周りに迷惑だ!」

「……はい」

 ジュンに叱られ、レアはすごすごと席に座った。

「だいたい、そんなに自分のアーキ・ヴェセルナーが欲しいのなら、ちゃんと購入費用を貯めとけって。何回、ガチャで溶かしたら気が済むんだ」

「だから、溶かすつもりはないんだよぉ。いつの間にか、そうなっちゃってるだけで」

「呆れて物も言えねぇよ」

 ジュンは、やれやれとため息をついた。

 そして、ジュンも広告塔に目を向けた。

「でも、まあ……オレたちのバイト代くらいじゃあ、あんな最新のアーキ・ヴェセルナーなんて買えないな。せいぜい、いちばんグレードの低い廉価版が現実的なラインだ」

「それでも、けっこうお値段するんだよねぇ」

 クルマやスカイシップと同じで、アーキ・ヴェセルナーも商品として一般的な流通に乗って販売されている。

 その値段は、グレードなどによって、だいぶ変わる。

 流行から外れた型落ちのものや廉価版ならば、まだ未成年のレアやジュンのバイト代でも、なんとか手が届くレベルだ。

 だが、有名企業ルミア・ギアードの最新作ともなると、それこそクルマやスカイシップなどと同じくらいの値段になる。

 とてもじゃないが、いまのレアやジュンが、おいそれと手にできるものではなかった。

「はぁ~~……もうすぐ、学校も卒業だっていうのに自分のアーキ・ヴェセルナーも持ってないなんて……。あたしたち、ブレイヴとしてやっていけるのかなぁ?」

「お前は、どうか知らないが、オレは貯金があるから廉価版くらいなら買える。悪いな。先に、ブレイヴとしてデビューさせてもらうぞ」

「ひどい! 抜け駆けなんて、ずるい!」

 むき~~! と、腹を立てるレアにジュンは笑って見せた。

 ブレイヴ――それは、この世界になくてはならない存在だった。

 凶暴なモンスターを退治したり資源をギャザリングすることで、人々が生きていくために必要なものを獲得し供給する重要な役割がある。

 それ以外にも、困っている人たちの依頼を受けて解決することも役割のひとつだ。

 そして、それとは別に、ブレイヴには大事な役目がある。

 それは、ブレイヴとブレイヴが自分たちの能力を競い合うブレイヴバウトという競技で、世界中の人々を楽しませること。

 ブレイヴバウトは、ブレイヴ同士が本気で闘う過激な競技だ。

 だが、その真剣さゆえに、誰しもがブレイヴの闘いに心を躍らせる大人気の競技だった。

 子どもたちは、ブレイヴバウトで活躍するブレイヴに憧れ、自らもブレイヴを目指し、ブレイヴバウトの舞台にデビューしていく。

 そして、その活躍を見ていた子どもたちが、また次の世代のブレイヴに……と、延々と続くブレイヴバウトの人気が、この世界にはあった。

 ブレイヴとブレイヴバウトは、世界の中心的な存在とも言われるくらいなのだ。

 当然、そんな世界に生まれたレアやジュンも、ブレイヴになることを目指している。

 だが、ふたりが目指すフォージ・ブレイヴというものは、アーキ・ヴェセルナーという装備が必要になる。

 それは、ただで手に入るものじゃないのだ。

「はぁ~~……新人向けのアーキ・ヴェセルナーが、支給されるみたいだけど、めちゃくちゃスペック低いんでしょ~~? しかも、すっごいダサイって聞いてるよ。あたし、そんなのでデビューするなんてやだ~~」

「いい加減に、ぼやくのやめろよ。お前らしくもない。未来のことなんて、ろくに考えないくせに」

「だってさぁ~~……あ~~あ、あたしもルミギアのA級アーキ・ヴェセルナーとかを装着して暴れてみたいなぁ」

「いつの話になるやら」

「はぁ~~……うん!?」

 レアが、ガタっと立ち上がった。

「どうした?」

「あれ! あのホログラムバナー!」

 レアが、街中に漂うホログラムを指さした。

 それは、広告記事を立体映像で街中に流して、多くの人に目を向けてもらおうというものだった。

 レアは、ホログラムバナーを指先でつまんで引っ張り、ジュンの目の前に持ってきた。

「これ! この広告記事を見て!」

「ああん? なになに、ルミア・ギアードの採掘施設ホレホレ見学会のご案内?」

 その広告記事に書かれていた内容は、こうだ。

 ルミナス星域の最大手アーキ・ヴェセルナー製造企業ルミア・ギアードが主催する見学会の案内で、行き先はルミア・ギアード所有の採掘施設ホレホレだ。

 採掘施設ホレホレは、ルミナス星域の辺境にある惑星ナンヤネンと呼ばれる星にあり、良質な資源を採掘できることで知られている。

「お前……採掘施設なんかに興味あったのか?」

「ちがうちがう! 大事なのは、そこじゃないよ! ここ!」

 レアのすらっとした指先が、ホログラムバナーの一カ所を指し示した。

「ああ……なるほどな。『見学会の後半には、ルミア・ギアードの最新アーキ・ヴェセルナーの試着コーナーもあります!』か。お目当ては、こっちだったか」

「そうそう! あのルミギアの最新アーキ・ヴェセルナーが試着できるんだよ! あたしたちの手の届かないようなアーキ・ヴェセルナーがタダで動かせるんだよ! これは、行くっきゃないでしょ!」

「ったく、不純な動機だな」

「ジュンちゃんだって、最新のアーキ・ヴェセルナーを使ってみたいと思わないの!」

「……そりゃあ、思うよ。だけど、これ見学者は選考の上、抽選で選ばれるって書いてあるぞ。こういうのって、当たらないんじゃないか?」

「そんなことないよ! あたし、運には自信あるんだ!」

「……ガチャで爆死してるやつの言う台詞じゃないんだよなぁ」

「あはっ! でも、応募するだけでもやってみようよ!」

「まあ、そうだな。当たれば儲けものだ。応募してみるか」

「よっしゃ! じゃあ、応募しよ!」

「待てよ。そんな簡単じゃないんだ。これ見ろよ。選考に必要な書類を送付してくださいってさ。学生は、学校が発行した証明書が必要らしいぞ」

「なにそれ!? 名前だけで応募完了できないの!? めんどくさ!」

「採掘施設ホレホレは、ルミギアの重要な施設だ。身元の保証もないような怪しいやつを中に入れないための保安マニュアルみたいなもんがあるんだろう」

「え~~、めんどくさいなぁ」

「お前から言い出したんだぞ」

「くぅ~~! めんどくさいけど、最新のアーキ・ヴェセルナーのためだ! いっちょ、ジュンちゃんお願いします!」

「オレに丸投げすんな!」

 なんやかんやで、ほとんどジュンが選考のための応募書類を用意することになった。

 その後、レアの運が良かったのかどうかわからないが、無事に選考を通過し、ふたりとも惑星ナンヤネンにある採掘施設ホレホレへ招かれることになったのでした。


 だが、ふたりは知らなかった。

 惑星ナンヤネンで、大変な事件に巻き込まれることに……。


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