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【完結】『一騎当千』を極めた孤高の天才貴族、仕様によってただ美しく光る置物になる  作者: 山原かいな


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エピローグ

 巨鯨との激闘を(結果だけ見れば)一瞬で制した伝説の卒業試験から数ヶ月。

 学園の伝統ある大講堂では、厳かな雰囲気の中で卒業式が執り行われていた。

 「――卒業生総代、シン・スメラギ」

名前を呼ばれ、シンは白銀の卒業生用ガウンを華麗に翻して登壇した。

 詰めかけた数千人の在校生、教授陣、そして国賓席に座るミネルバ王女からの熱い視線が彼に集まる。

 シンは壇上でゆっくりとマイクに向き直り、完璧な美声とキメ顔で『卒業生答辞』を読み上げ始めた。

 「……我々が学園で学んだ武理、それは単なる力の誇示ではありません。

 真の強さとは、仲間を信じ、あえて己をノーガードの死線へと置く『覚悟』の先にこそあるのです。 敵の猛攻をその身に受け、肉を切らせて骨を断つ。

 それこそが、我が一瞬の神域……」

 それは、ただ仕様を勘違いして自分から巨体にぶつかって額を割り、カカシ状態でシステムに肉体をジャックされていただけの情けない現実を、極限まで美化させた答辞だった。

 「おおおっ……! なんという至高の武理……っ! 仲間を信じるがゆえに、自らノーガードで死線を超える……! これぞ真の王者の背中だ……っ!」

 最前列の席では、元肉壁のアランが早くもタキシードの袖で涙を拭い、ミネルバ王女は「やはり私の見込んだ男だわ……」とうっとりと頬を染めている。

 マリンも顔を真っ赤にしながら

 「ふ、ふん、相変わらず大口叩くんだから……」と感動していた。

 そんな感動の渦の中、特待生席のカイトだけは、両手で顔を覆って絶望していた。

(……いや、嘘つけよ。

 ただの『味方依存の強制自動追撃』なのに、なんで『仲間を信じる気高き背水の陣』みたいに綺麗にまとまってんだよ。

 お前が流血してたのは自分からボスの体に突っ込んだ自業自得だし、王女の号令で瞬時に完治させられてただろ。

 ダメージなんか皆無だったじゃねえか。

 これで全校生徒が『よし! 次の戦闘からは自分から壁に頭をぶつけて血を流そう!』って勘違いしたらどうすんだよ。

 この自傷系発光カカシ、最後の最後まで世界観の前提を歪ませやがって……っ!)

 カイトの鋭すぎる内心の剃刀ツッコミを他所に、式典は万雷の拍手の中で幕を閉じた。

◇

 卒業式後の騒がしい中、シンはカイトに声を掛ける。

 「うむ、これで晴れて卒業であるが、私は知っている!

 君が裏でコソコソと女子2人を誑かしていた事を!

 私の目が黒いうちは、パーティー内でそんな不埒な真似は絶対に許さないから!

 まぁ、君は、素晴らしい才能を持っている。

 これから真面目に生きる事だな!」

「えっ?はぁ、まぁ分かりました、私は国に従うしかありませんから、当然真面目に生きますよ」

 (何を言ってるんだ?コイツ、さっぱり意味が分からない)

 カイトは、さも俺はすべて知っているというようなシンのドヤ顔を見て、何か言い返す気力もなくなり、その場を後にしたが、その後ミリアに大講堂の裏まで呼び出されたのである。

 将来の聖女候補であるミリアは栗毛のオカッパ頭を縮こまらせ、顔をこれ以上ないほど真っ赤に染めながら、カイトの手をぎゅっと握りしめてきた。

 「あの……すいません、あのっ……! カイトさん、私、カイトさんがプロポーズしてくれたあの放課後の教室のことを一生忘れません……っ!

 卒業後もよろしくお願いします!

  私みたいな元孤児ですけど、カイトさんの『愛の盾』になって、一生お隣で起きていますからぁぁっ!」

「……え?」

 カイトの死んだ魚のような目が、点になった。

 プロポーズ? 愛の盾? 一生隣で起きている?

 急速に脳細胞をフル回転させ、数ヶ月前のあの日、自分が放ったセリフを思い出す。

 ーー『君には絶対に寝てほしくないんだ。だから特別に3つ受け取ってくれ』ーー

 「(……あ。あー、あーーーっ!!! 完全にやらかした!!!)」

 カイトは手遅れすぎる勘違いの事実に気づき、血の気が引いて白目を剥いた。

 ただの睡眠対策(マリンの1個でお守り程度じゃ寝るというガチの検証結果に基づいた、ヒーラー睡眠耐性100%の3つ積み)だったのに、ミリアの脳内超翻訳フィルターで「愛の重さが3倍の熱烈なプロポーズ」に化けていたのだ。

 マリンに1個渡したのは「ただの仲間の証(カモフラージュ)」として女子トークで消費されているとも知らずに。

 「カイトさん……? 顔が真っ白ですけど……嬉しすぎて魂が抜けちゃいましたか?」

 「あ、ああ……そうだな……」

 影の軍師として完璧に立ち回っていたはずの特待生は、聖女候補という将来の宗教界のVIPを射止めた「禁断の天才軍師」として、学園の伝説となるのである。

 以降、二層での素材狩りが、卒業前の学園の風物詩となるのだった。

◇

 一方、学園の正門前。

 シンは卒業証書を片手に、これからの輝かしい未来を想像してフハハと高笑いしていた。

 「フッ、これでガチガチの堅苦しい学園ともおさらばだ! これからは誰にも縛られず、僕の無双する孤高で自由な生活が始まるぞ!」

 しかし、シンの淡い期待は、背後から響いた二つの美しい声によって、音を立てて粉砕された。

 「待ちなさい、シン! 貴方のこれからの冒険、海都アーモリアの国家予算をすべて注ぎ込んで、私が最前線でバックアップするわ!

 どこへ行くにも私が共に前衛あって『庇護の号令』をかけ続けてあげる!

 あなたの背水を守るのは私よ!」

 「ちょっと王女様、抜け駆けは許さないわよ!

  シンに必要なのは、共に戦うアタッカー、私の銃の連撃がお供に決まってるんだから!

 卒業したって、アンタの隣は私よ、シン!」

 「え……?」

 振り返ると、白銀の鎧を身にまとったミネルバ王女と、魔銃剣を構えたマリンが、バチバチと視線で火花を散らしながら迫ってきていた。

(いや、僕が欲しいのは『アランの頑丈な盾』であって、国家権力の超回復とか、感情に任せた不安定な連撃じゃないんだよぉぉぉ!!

 これじゃソロ活動どころか、お守りしながら、永久に先頭にたたなくちゃいけないじゃんかァァァ!!!)

 「さあ行きましょう、シン! 遥かなる第三層の死線へ!」

 自由の終わりを告げる、

 終わりなきシンの正妻戦争の幕が上がる。

 神のシステムが万物を支配するこの世界で、シンの受難の日々は、これからも一生、どこまでも続いていくのであった。

これにて終了になります。

多数のキャラを、自分の設定だけで動かす事の難しいこと!

自分の力だけで、世界、キャラを構築できる人を本当に尊敬します。

ではまた、Geminiさんと何か書こうと思いますので、よろしくお願いします。


励みになるので、少しでも面白いと思ったら、ブックマーク、評価、感想等お願いします。

お読みいただきありがとうございました。


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