第161話 休日・その3
【空間転移】で飛行中のヘラクレイトスのすぐ側に出た。ヘラクレイトスは僕が飛べることに驚いたようで、
「ガイウスよ。お主は飛ぶこともできたのか。」
「ああ、言って無かったね。うん、一応、飛べるよ。この通りね。」
そう言いながら、横方向に一回転する。
「ううむ、なんとも。信じられん。神の御業を見せられているようだ。」
「あー、中らずと雖も遠からずってところかな。僕は“フォルトゥナ様の使徒”なんだ。」
「なんと!?フォルトゥナ神の使徒様だったとは!!ガイウスよ、いや、使徒様。貴殿について来て良かったと思っている。」
「口調は今まで通りでいいよ。でも、魔物もフォルトゥナ様を神として知っているんだね。」
「貴殿がそう言うなら今まで通りに話させてもらおう。それで、フォルトゥナ神のことだったかな。勿論、我らも信仰しておる。龍の方々よりこの世界をお作りになった方だと話しを聞いたからな。それと、魔物というのはゴブリンどもも指すのかね?」
「うん、そうだよ。」
「ならば、我らは魔物ではない。魔力を持った生物といった点では魔物であろうが、それは人も同じであろう。」
「確かに。じゃあ、飛竜は何と呼べばいいのかな?」
「以前、我が童の時に語ってくださった黒龍様は我らの事を“亜龍”と呼んでおった。龍に次ぐものとしてフォルトゥナ神が生み出されたのだと。」
「なるほど、“飛竜”じゃなくて“飛龍”ということかあ。人間の発する言葉では音が一緒でも文字表記が違うんだね。」
「そこのところは、我にはわからぬ。人間の文化のことだからな。」
「でも、ヘラクレイトス達は人間を襲うでしょう?少しは人間の文化を知ってはいないの?」
「好き好んで襲っているわけではない。縄張りに入ったり、攻撃をしたりしてくれば、反撃のために襲う。森に獲物となるモノが居なければ、人の住むところまで出て行き、あれは人の言葉で何と言ったか・・・。そうだ、家畜だ。家畜を襲う。だから、人を喰うなど余程の悪食か、空腹の者だけであろう。我も一度襲って来た人間の腕を噛み千切ったが、あれは、不味かった。身にゴテゴテと色んなモノを付けているのもだから、喰わずに後で吐き出した。であるから人間の肉にはあまり興味がないのだ。」
「なるほど、なるほど。研究している人に話しをしたら泣いて喜ぶかもね。っと、問題発生の予感がする。クリス、ヘラクレイトス、群れを一気に【空間転移】で目的地の近くまで、移動させる。ヘラクレイトスは混乱しないようにみんなに伝えて。」
「承知した。皆の者!!これよりガイウスの力によって目的地まで移動する!!動揺するでないぞ!!」
ヘラクレイトスが吼えて指示を出すのを横目に見ながら、僕は【遠隔監視】で表示された映像を見る。それにはエドワーズ空軍基地から1台の車が出てきて、衛兵分隊のほうに向かっているのが映し出されている。これは僕がいないと絶対にややこしくなる。ちなみに、車というのは馬が曳かない馬車みたいなものとジョージが言っていた。馬車より形が洗練されているけど、本当にそんな感じだ。
「ガイウスよ。準備はいいぞ。」
「よし、では【空間転移】するよ。」
クレムリンから1km離れた黒魔の森の上空に【空間転移】した。ヘラクレイトスは「ほう・・・。」と感心したように呟いた。クリスは「帰ってきましたわー。」とのんびりとした感じだ。他の飛龍は景色が一変したのに驚いているようだった。
「動揺するなと言ったはずだ!!落ち着け!!新しい住処に着いたのだ。ガイウスよ。場所を示してくれぬか?皆にも聞こえるように。」
「うん、わかったよ。それでは、目の前に見える。下は黒魔の森で変わりはないけど、目の前、1kmぐらいさきかな?そこに見える赤い壁で囲まれた建造物群は僕やクリス達の家であるクレムリン。左に見えるのがニルレブという僕が治める領の領都。まあ、人が沢山住んでいる場所だね。そして、クレムリンのさきにある広い砂地と建造物があるけど、そこが今から向かう目的地。君たちの住処だよ。エドワーズ空軍基地という名前なんだ。これで、わかったかな?」
【風魔法】を使って満遍なく聞こえるようにしたけど大丈夫かな?
「わかっておらねば、我が教えるのみだ。ところで、問題があるのでは無かったかな?」
「ああ、そうだった。とりあえずみんなを砂地に待機させといてねヘラクレイトス。クリスもヘラクレイトスに乗ったままでお願いね。」
「わかった。」
「わかりましたわ。」
2人?の返事に頷き、僕は飛行速度を上げ、向かってくる車に対して警戒しているウルリクさん率いる衛兵分隊の側に着地する。ウルリクさんが敬礼をして迎えてくれる。僕は答礼をしながら言う。
「今、戻った。飛龍の群れももうすぐ到着する。こちらに向かって走って来るモノには警戒しなくてもいい。馬が無い馬車だと思えばいい。」
「魔道具の類ということでしょうか?」
「ま、そうだな。“これ”を【召喚】した際についてきた人物が挨拶にでも来たのだろう。おそらくは施設の責任者だ。ああそうだ助っ人を【召喚】しておこう。ああ、今更だがなるべく私の【召喚】については口外しないように。」
ウルリクさん達に軽い口止めをして【召喚】にかかる。アメリカ空軍の基地なんだから、同じアメリカ軍のジョージを【召喚】しよう。すぐに、召喚陣からジョージが現れる。
「ジョージ・マーティン中尉、急なことで悪いが命令だ。今からこちらに来る人物を一緒に迎えて欲しい。」
「了解しました。どなたでしょうか?」
「名前まではわからんが、エドワーズ空軍基地の責任者だろう。頼んだぞ。中尉。」
「へっ?」
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