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魔法使いに平穏は訪れない  作者: 三上堂 司
事態は何をせずとも動いて行く

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11.嫌な予感は外れない『その拾壱』宝物庫の双鍵

流哉の視点で進みます。

楽しみにして頂けたら幸いです。


タイトル付け、大幅に加筆と修正を行いました。

 神代流哉自身の集めた魔導器や貴重品、外に出す訳にはいかないヤバイモノ等が収められている流哉の為の博物館のような蔵の中。

 そこは、時の流れから切り離された、異質な空間だった。


 流哉は、途中で別れたミスティと落ち合う場所へと向かう。

 道中に展示されているモノを見ながら進むと、展示物の法則に気が付いた。

 貴重品や美術品、武器とそれぞれで項目分けしてあったという事に。


 管理を任せたまま、今までじっくりと蔵の中を見て回ったことはない。


「いつか時間を作って、蔵の中を見て回った方が良いな。

 ここまで真剣に管理してくれていたとは知らなかったからなぁ」


 祖母・神代月夜かみしろつくよの遺品が収められている方の蔵には何度も立ち入っている。

 それこそ置き場所等に色々と口を出した。


 流哉自身の方の蔵はというと、中に入れるモノの指示もしなければ口出しをしたこともない。


 管理を任せているミスティの父バルザスに言ったのは、『いつでも取り出せるようにはしておいて欲しい』だけ。

 今まで外で宝物庫の鍵を使って魔導器を呼び出していた時は、滞りなくモノを取りだすことができたし、しまうこともできた。


 流哉は、なんだかんだと理由をつけて、ほったらかしにしていただけではないだろうか。


 宝物庫に眠る数多の秘宝たち。それらは流哉と祖母の記憶であり記録。

 一度たりとも忘れた事はない。

 しかし、流哉は多忙の日々を言い訳に、いつしか自身の集めたモノを管理することをおこたったのではないか。


 心の奥底に、小さな後悔が突き刺さる。

 

「一人で何をぶつくさ言っているんだ?」


 流哉が自問していると、手にバケツと水差し、水を捨てる用のかめ綺麗きれいな布切れを持ってミスティが声をかけてきた。


 道具を探し出して、合流場所に流哉が居なかったので探してくれたのだろう。

 先ほどミスティと別れた位置から流哉は差ほど進んでいなかったのだから。


「わざわざ探してくれたんだろう、スマンかったな」


「いいよ。それよりも『異世界門の鍵(ゲート・キー)』を磨くなら早くした方が良いんじゃないか?」


 ミスティの言葉からは気にしている様子は感じ取れなかった。

 言葉の奥底に、どのような気持ちが秘められているのか。

 それを知る術を流哉は持たない。


「そうだな。時間の流れが外とは違うといえ、いつ呼び声がかかるか分からないからな」


「こっちだ。今度は手を引けないから、ちゃんとついてくるんだぞ」


 ミスティは、そう言いながら、流哉の先を歩き出した。

 その小さな背中は、頼りないなんて事はなく、暗闇を照らす道標のようだった。


 ミスティの後をついて『異世界門の鍵』が展示されている場所へと向かう。

 途中何度か立ち止まりそうになるものの、時折振り返るミスティの様子に止まりそうになる足を動かす。

 流哉は、ミスティの歩みに合わせ、ゆっくりと歩みを進めた。


 ミスティが振り返ること五度目にして目的の場所へと着いた。

 そこは、この宝物庫全体の中でも、特別と呼べる数少ない場所。

 静寂が支配するその場は空気が重たく感じ、その中心には二本の鍵が鎮座している。


 二つの鍵、それは異世界への扉を開く、禁断の秘宝。


「ずいぶんと派手に飾り付けてあるなぁ」


 流哉は呟く。

 そこには感嘆と、僅かばかりの戸惑いが混じる。


「この鍵の内の一本が精霊界へと通じる鍵だから。

 我々ドワーフにとって妖精女王は崇め奉る神なんだ、粗末に扱うはずがないだろう」


 ミスティが答えたその声には、誇りと、同時に混在するとげ


「その神と契約を結んでいるオレはどうなんだ?」


 流哉は皮肉混じりの言葉で尋ねる。


「別にどうでもいいんじゃないか?

 妖精女王がダメならダメと言うに決まっているじゃないか。

 そうでないならそのままで良いってことだ」


 ミスティの回答は、単純なものだった。

 そこには特別な感情はなく、無関心という言葉が相応しい、そんな態度だ。


「あの女王様は面白がっているだけだろうけどな」


 神代のガラスで隔たれた展示場所には二つ、鍵と形式上は呼ばれるモノがある。


 その一つは竜の絵が彫られたメダルほどの大きさの結晶がはめ込まれたモノ。

 形も鍵というよりはナイフに近く、刃に当たる部分が鍵のように溝があり欠けていたりする。

 一目で鍵と見抜くことは出来ない。

 竜が司るのは力であり、原初における破壊の象徴。


 もう一つの鍵は、名目上は鍵と呼んでいるモノだ。

 鍵と言っても形状は指輪である。

 妖精の絵が刻まれた結晶がはめ込まれているという点は共通している。

 妖精が司るのは夢幻。夢、幻の如く、この世に存在するあらゆるもの化身アバター

 原初においては、繁栄をもたらす豊穣と秩序を乱す混沌の象徴。


「それにしても……この飾りつけには時間をかけたんだろうなぁ」


 二つの鍵が飾られている場所を見ると、それぞれで意匠が異なっている。


 竜の鍵の方は、赤い布が被せられた台と周りには古い時代の金貨が散らばっている。

 それは、大地が赤く流動する灼熱と死の惑星に君臨した最初の生物である竜の皇帝を象徴する色であり、金は古来より竜が好むとされる富と権力の象徴。

 竜が住む世界を表現しているとも言える。


 妖精の鍵の方はというと、緑の布が被せられた台と周りを覆う草木、そして一本の漆黒の薔薇。

 それは、豊穣と自然を象徴とする色と、妖精女王を象徴する漆黒の薔薇。

 妖精や精霊が住む世界を表現していると言える。


 演出した本人も満足のいく仕様だろうが、流哉としては『ここまで凝る必要は無かったんじゃないか』と思ってしまう。


「ここの飾りつけのアイデアをまとめるだけで父は二、三日寝てなかったからな。

 中途半端な仕事をすると他の連中から袋叩きに合うし、あそこまで考え込んでいる父を見たのは初めてかもしれん」


 ミスティが言った。その声には、偉大な父の姿に対する敬意とも、呆れともとれる感情だ。


「そこまで考え込むことじゃないんだけどなぁ」


 流哉はガラスに向かって腕を伸ばすと、ガラスが水面に波紋が浮かぶように歪んですり抜ける。

 それはドワーフ達の技術のすいを集めて作られた、失われた過去にのみ痕跡こんせきを残すわざ


 何度見ても素晴らしい技術だと思う。

 二つの鍵を手に取り、展示場所から抜き取る。


「ところで、ただ布で磨くだけなのか?」


 ミスティが流哉へ尋ねる。

 ドワーフであっても、知らない事はあるのだろう。


「いや、専用の薬品を使う」


「専用の薬品?」


 流哉の回答へミスティは更に疑問をなげる。

 未知のものへ対する飽くなき知的好奇心は、ドワーフであることを含めても、ミスティの個性である。


「この鍵の結晶部分以外はオリハルコンでできているんだ」


「へぇーオリハルコンね」


 オリハルコン。伝説上にのみ存在を確認する金属。

 ドワーフであるミスティにとっては、そこまで珍しいものではないのかもしれないが、その扱いに関しては詳しくないのかもしれない。


「パッと見だと青銅に見えなくもないからね。

 見分けるポイントとしては、硬さ以外だと磨き上げた時の色合いかな」


「磨き上げるとどうなるんだ?」


「海のような群青に光る」


 流哉はオリハルコンの輝きを海のようだと例える。

 よくあるものを比喩ひゆの対象に選んだという自負とともに答えた。


「綺麗なモノなら見てみたい」


 ミスティが呟いた。

 その言葉にはオリハルコンの輝きへの期待が込められている。


「まぁ、少し待っていてくれ」


 蔵の中にあるモノはいつ何時であろうと、流哉が望めば必ず手元へ現れる。

 それは蔵の中であろうと例外はない。


 宝物庫の管理者であり、主である流哉のみに与えられた特権。


 絶えず水を出すことが出来る『渇きしらずの水差し』からバケツへと水を注ぎ、その中へと手元へと取り寄せたフラスコから液体を注いで混ぜる。

 布を浸して、竜の鍵を手に取って拭き始める。


 徐々に磨いた場所の色がくすんだ色から深い群青へと変わる。

 深い海の色、夜明けまじかの空の色。

 

 海の都市という異名をもったアトランティスが原産国とされているだけあってなのか、理由はイマイチ分かっていないが綺麗なモノだと思う。


「本当に海のような色に変わった」


「ミスティは海を知っているのか?」


 ミスティはこの宝物庫で生まれ育ったと聞いている。

 この場所の外を知らないはずの彼女が、海を知っていることを不思議に思い、流哉は尋ねた。


「ツクヨに見せてもらったんだ。

 この蔵の中に塩を取る為って海水が湧き出る場所も作ってあったはずだぞ」


 ミスティの言葉には、先代の主人である祖母への尊敬と、深い愛情を感じた。


「祖母さんはここで何がしたかったんだ?」


「たぶん、住みついている私たちの為だった気がする」


「それだけがきっかけではないとは思うが……そうだな、そうであったなら良いな」


 祖母はなんだかんだ優しい人だった。

 傍若無人ぼうじゃくぶじんだとか、暴君ぼうくんだとか、何かと悪いうわさは聞いてきたものの、その裏で感謝の声も多く聞く。

 孫の自分には優しい面と厳しい面の両方を見せていたから、どちらも本当だと思う。


 ドワーフ達の為だけに海水を引き込んだ訳ではないと思うが、きっかけの一つにそういう面があったとしたら……嬉しいと感じた。

 フカフカの布を新たに召喚し、その上に竜の鍵を置く。

 残ったもう一つの鍵、妖精の指輪を磨き始める。

今回の話し、どうでしたか。

今話では流哉の道具が収められている蔵と、収められている道具に言及しました。

出てきた魔導器類は別の話し等で説明が入るようにします。

『道具がどんな能力は忘れた』『道具の能力分からねぇ』等ありましたら、道具の紹介だけの話しを別作品として新しく書きます。

もしくは、後書きで軽く書くとかを考えています。

特になければ何もしません。


※三上堂司からのお願い※


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

読者の皆様へ筆者からのお願いがございます。

本作を読んで、「面白かった」「続きが気になる」等、少しでも思って頂けましたら、

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これから物語を書き続けていく上でのモチベーションに繋がります。

今後ともよろしくお願いします。

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