表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法使いに平穏は訪れない  作者: 三上堂 司
魔法使いの戯れ事、見習い魔術師の勝負

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/348

7.童話の魔法『その弐』魔犬狩り

前回に引き続き、流哉の視点になります。

楽しんで頂けたら幸いです。


タイトル付け、加筆と修正を行いました(2025/02/20)

 神代流哉は(おおよ)その検討をつけたが、それ以上の事は、本人に会って確認するまで分からない。


 ただ、魔法を使っている少女の好みはよく理解しているつもりだ。

 ある程度の絞り込みはできる。


 童話の魔法使い、西園寺(さいおんじ)(つむぎ)の魔法はモチーフとなる御伽噺おとぎばなしの類いを現実の世界へ侵食させ、本の内容を再演するものだ。

 ロマンチストな少女は、その題材に英雄と呼ばれる人物が活躍するものを選ぶ傾向けいこうにある。


 それに……予想が外れていたとしても、問題なく対処は可能だ。


 最悪の形として考えられるのが魔法を使っての衝突(しょうとつ)だが、そうなったとして万に一つの可能性としても、流哉(オレ)に敗北はありえない。


 故に、今は自身の感を信じて、見当をつけたモノを当たりと信じ、突き抜ける。


 未だに奇襲(きしゅう)を仕掛けて来る獣を相手にしつつ、より確信へと近づく。


「これのモチーフはケルト神話群の『アルスターサイクル』と見るのがベストかな」


 この奇妙な空間を作り出している(つむぎ)の魔法。今回モチーフとして選んだ本はケルト神話辺りだと狙いをしぼる。


 その中でも『アルスターサイクル』はケルト神話群最強の英雄(ヒーロー)であるクー・フーリンが活躍する話し。

 あの少女の好みとも合致する。


「さしずめ『クランの番犬』辺りが今回のお題って所か。

 またマイナーのモノを選んだものだと言いたいが……童話(どうわ)の魔法使いもホントに英雄譚(えいゆうたん)が好きなようだ。

 さて、見当もつけたし、自分の感を信じるなら打って出る他ないが……」


 首にかけていた槍の形をしたペンダントを外し、魔力をそのペンダントに込める。

 込めた魔力に反応し、ペンダントその物は砕け散り、本来の姿を現す。


 影を実体化させたような黒く、鈍い鉛の色をした一本の(やり)

 この世界に顕現けんげんしたそれは異質なまでに死の気配を(まと)っている。

 

 流哉はその槍を手に取って構え、敵を見据える。

 ここに居るのは狩る者と狩られるモノ。

 犬畜生(ちくしょう)共は自らの身を案じてか、飛び掛るのを躊躇(ちゅうちょ)していた。


「なんだ、来ないのか?

 先手は譲ってやろうと思ったのに、チャンスをものにできなかったな」


 何も考えずに突進してきてくれれば、早くことが片付いたのにと流哉は内心で呟く。

 距離を取る、もしくは逃げるという判断ができる程度には、番犬も精巧に作られ、再現されているのだろう。


 魔法という神秘に、魔法を使わずに挑むのだ、早々思い通りにはならない。

 そもそも、魔法を相手に魔法を使わずに挑むのは無謀であり、蛮勇の類いである。


 勿論、それを成すのが流哉オレでなければ、と前置きが付く。


「ならばこちらから仕掛けさせてもらう。

 こんなところでいつまでも足止めを喰らっている訳にはいかないからな。

 先達者に習って、ここは槍の一撃で決めさせて貰おうか」


 流哉(オレ)は構えた槍を投げるのではなく、力の限り、思い切り地面へと突き刺す。


 地面に突き立てられた槍のを、石突いしづきから先端へ向かって血管のような線が脈打ち走る。


 紡の魔法で作られた犬畜生共は(わず)かでも理解する知性があるのか、ほんの少しの時間で諦めを付けている。


 この槍は正しい方法で使用され、『もう我々は助からない』という事実を。


 地面から流哉を中心に黒い槍が無数に突き出す。


「ファランクス起動、殲滅(せんめつ)しろ」


 槍は地面より敵へ向かって射出された。


 一本の槍が十、二十と分散し、槍は増殖(ぞうしょく)を続ける。

 飛翔ひしょうした槍は犬共を串刺し、地面へ貼り付け、突き刺さる。


 一匹の魔犬(まけん)へ突き刺さる槍は無数であり、確実にその息の根を止めた。


 数分も経たずして、魔犬の殲滅を完了する。

 槍の耐久的に、あと一回、発動に耐えられるかどうかだ。

 槍へ供給する魔力は負荷をかけない程度に抑え、即座に発動できるよう待機させる。


 本格的に、魔法を解き明かし、紡を誘い出した方が良さそうだ。


 完全に解体される前に、魔法の所有者は姿を現すものだ。


「試練『クランの猛犬』の攻略方法は、決められた条件で呼び出されたモノを殺すこと。

 しかし、こいつらを殺す為の条件、正解を知っているのは使い手の魔法使いだけ」


 どこかに隠れ潜んでいる魔法の主へ聞こえるように、少し大きめの声で、魔法の解体を始める。


「決められた条件以外の方法で殺そうとすると無数の魔犬によって()み殺される。

 仮に、成功したとしても、それは物語の筋書きをなぞっていくだけ。

 最後に待ち受ける魔槍(まそう)の英雄に刺殺される、そんなオチだろう?

 まさに成功しても失敗しても同じ結果が待っている試練だ」


 流哉の立てた仮説は、成功させるにはそれ相応の実力が必要になる方法。

 普通の魔術師であれば、抵抗するまもなく魔犬によって噛み殺される運命さだめにある。


 用意されている道を辿った先に待ち構えているのは、紡の本命である大英雄。

 正しい方法を見つけたとしても、その先には確実な死という結果のみが待っている。


 英雄を相手にしないで済むのであれば、それに越したことはないが、それは用意された道から反れることだ。

 無数の魔犬と魔槍の英雄。

 どちらを相手にする方が楽なのかは、比べるまでもなく前者だ。


「待ち受ける結果を回避するには、製作者が予想の出来ない方法で殲滅すればいい。

 英雄と戦わされるくらいなら、殲滅する手段を用意した方が楽だ、

 決められた条件“以外”で試練を突破すれば、英雄を相手にすることなく終わらせることが出来る。

 (つむぎ)、オレの立てた仮説は合っているか?」


 屋敷の敷地内にある木の影、そこから感じ取った気配へ向かって問かけた。


 木の影に隠れていた紡は大人しくその姿を現した。

 その手に携えている本のタイトルは『赤枝のサイクル』。

 流哉の推測は正しかったようだ。


「私がいるってよく分かったものね。

 あと、悪かったわね、英雄譚が好きで」


「オレの羅針盤(らしんばん)が熱を発したのはお前が魔法を使う前だ。

 近くに魔法使いが潜んでいることを察し、熱を発してオレに知らせてくれた。

 ここら辺で魔法使いはお前だけだろう?

 それから、別に悪いとは言ってない」


 紡が姿を表した今も流哉は警戒を緩めない。

 飄々(ひょうひょう)としている紡の手に携えている本からは、未だに魔力が漏れ出しているからだ。


 いつまた魔法を発動させるのか分からない。

 そんな状況で気を抜くほど傲慢(ごうまん)になった気もないし、紡は油断していい魔法使いじゃない。

流哉の視点、どうでしたか。


魔法使い同士の戦いですが……あまり大きく書きませんでした。

それぞれの魔法や、戦いはまたの機会にしっかりと書きたいと思います。

楽しみに待って頂ければ幸です。


お読み頂き、ありがとうございます。

「面白かった」「続きが気になる」等、思って頂けましたら、ブクマ・評価頂けると励みになります。

今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ