16.生徒会秘匿ファイルVol.1の顛末『その肆』流我の思惑
流哉の視点と言っておきながら、今回は父親である流我の視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
流哉の視点でなく、すみません。
タイトル付け、加筆と修正を行いました(2025/01/22)
冬城燈華たちを見送って、机の上に置いた結婚式の招待状を見る。
小さい頃からしっかり者だった新山由紀子が、もう結婚をするような歳になったのかと思うと、月日や時間が経つのを早く感じてしまう。
「そこにいるのは分かっているよ。出てきたらどうだい?」
社長という立場ゆえに与えられた部屋の一角にある本棚。その影が揺らいだ瞬間、絶対に人が入れるような隙間などないところから我が息子、神代流哉が出てきた。
「よく気づいたね。
絶対にバレない自身があったんだけど」
「気づいたのはたぶん僕だけだよ。
燈華ちゃんが本棚に近づいたときにわずかに影が揺らがなければ僕も気付かなかったよ」
「なるほどね。
そんなミスをするなんて、まだまだ未熟なようだ」
「流哉くんでも焦ったりするんだね」
「少し前に『見つけてみろ』だなんて言った後だから……こんなところで見つかったらバツが悪いだろう?」
少しだけ俯きながら話す息子の姿に、彼には悪いと感じつつも神代流我は安心した。
自身が思っているよりも圧倒的な速度で成長していく息子に、何もできない自分が情けなく、また何もできないことが仕方のないことだと受け入れていた。
息子の流哉は、魔法使い。
我が母であり、偉大なる魔法使いにして神代家の先代当主であった神代月夜。その魔法使いとしての後を継いだ息子に一般人の流我ができることは何もない。
何もできないと思っていた流哉の意外な一面に、親としては安心してしまった。
「君が弱気な事を言うなんて、たぶん初めて聞いたよ」
「弱音なんてここしばらくは聞こえるように口にしたことはなかった。
最後に聞いたのは……きっと祖母さんだろうな」
流哉は祖母の事を口にした瞬間、表情が曇った。
これは……聞くべきことじゃない。
これ以上は踏み込むべき領域ではない。
線引きを出来ないものから滅ぶのは世の常だ。
「これ以上は聞かない方がいいね」
「踏み込まないのか?」
「僕は君の親だ。
息子の過去を暴いて喜ぶ業は持ち合わせてはいないよ」
流哉は流我の回答に納得したのか、これ以上口を開く気がなくなったのか。
本棚に寄り掛かり、瞳を閉じた。
これ以上、流哉から話すことはないという意思表示だ。
「流哉君、コレを」
流哉に由紀子から贈られた招待状を渡す。
コレを渡すことが出来れば、最低限の流我の目的は達成できたことになる。
「結婚式の招待状?」
「そう、由紀子ちゃんの結婚式の招待状。
流哉君、この式には出て欲しい。
親としてのお願いではなく、神代家の代表としての命令だと言えば分かるかな」
流哉の表情に変化はない。
怒っているとかそういうことはなさそうだ。
「神代家としての判断だというのであれば従うよ。
オレは神代の家に連なる魔法使いだ。
祖母さんから受け継いだのは立場だけじゃないつもりだ」
「それならもう一つだけ頼みごとをしようかな」
招待状を懐にしまう流哉に頼みごとをしたいと声をかける。
何の感情も籠っていない瞳で流我を見る流哉。
そんな流哉に自身の携帯端末を見せる。
「警視庁の友人からの依頼なんだけど、こいつの始末を確実なものにして欲しい」
携帯端末に記された文字は、
『迷惑をかけたようで済まない。
謝罪は後日、必ず伺わせていただく。
始末はこちらでつけるので、そちらから手出しはしないで欲しい。
コチラの手のモノが不始末であった場合は除く』
であり、最後の一文を除いて簡素なものだ。
「先ほどの失礼な侵入者に関しての罰が決まったようだ。
迅速な判断はコチラが求めたモノであり、相手方はソレを重んじてくれた。
ただ、取り逃がす可能性はゼロじゃない。始末は確実なものにしたい。
神代の名をあの愚か者は小馬鹿にしてくれた。これは決して見逃すことのできない」
「祖母さんが守ってきたものを汚したというのなら、オレの行動は決まっている。
自身の不始末は必ずつけさせるさ」
「確実にこの町の領域を出てから始末をして欲しい。
母の愛したこの町を、あの愚か者の血で汚すことは耐えられない」
「その願い、聞き届けた」
流哉はそういうと再び影の中に消えて行った。
今から始末に向かうのだろう、流我の頼みごとを片付ける為に。
「燈華ちゃん、コレは僕からのプレゼント。
流哉との鬼ごっこの終わりの日は決めたから。
後は、どう転ぶのかだけを見届けさせてもらうよ」
社長室の中は本当に流我一人だけになった。
流我がこぼした独白は、誰にも聞かれてはいない。
さて、これから出勤してくる社員よりも働いていないなどという事は許されない。
他の社員の誰よりも働き、その姿を社員に見せなければならない。
その上で社員の心身の健康を気遣う。
ここまでするのは社長という立場の責務だ。
私情を優先させた分、それ以上の働きをしておかなければ下の者に示しがつかない。
一番下の者に楽をさせてやるのが上の立場の者の務めだから。
流我の視点、どうでしたか。
流哉の視点でない理由等は活動報告の方で書きたいと思います。
次は必ず流哉の視点です。
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