15.生徒会秘匿ファイルVol.1の顛末『その参』燈華の駆け引き
今回も燈華の視点です。
楽しんで頂けたら幸いです。
タイトル付け、修正と加筆を行いました(2025/01/21)
有馬と名乗る男が帰り、ジンダイの社長室には冬城燈華と大津秋姫、新山由紀子、神代流我だけとなった。
途中、横槍を入れられはしたものの、説明責任を果たすというのは達成できた。
あとは、コチラの用事を済ませたい。
由紀子が流我と話したそうにしていたので、軽く肘で小突く。
「流我おじ様、この度は助けて頂きありがとうございます。
今日の事、そして昨日の事、なんとお礼をして良いか」
「昨日も言ったけど、これはお礼をされるようなことじゃない。
それよりも謝罪をしないといけないのはコチラの方だ。
由紀子ちゃん、済まなかったね」
そういうと流我は由紀子に向かい頭を下げた。
一企業のトップとして、簡単に頭を下げるものではないと燈華は思うが、己に非があるのであれば、すぐに謝罪を行える人は少ないとも思う。
おそらく、ジンダイの代表としてではなく、神代流我という一個人の問題としての対応なのではないか。
「言い訳をするようで情けないけど、本来はここで有馬と女性警官だけを呼んで、少人数で話しを聞く手筈になっていたんだ。
それが不快な思いをさせる事になってしまい、本当に申し訳ない」
「流我おじ様、頭を上げてください。
本来であれば学校で大人数に囲まれて話さなきゃならないところを、私の為に少人数で済ませて頂き、感謝しかありません」
「それならこの話しはここまでにしよう」
「はい」
由紀子と流我の話し合いは、流我が幕を閉じる形で終わった。
由紀子もお礼を言いたかっただけのようで、表情は満足そうだ。
それなら、燈華の個人的に聞きたいことを聞いて、それで終わりにしよう。
「流我おじ様、私の質問にも答えて頂けますか?」
「なんだい燈華ちゃん。
答えられるかどうかは質問を聞いてからでもよければ、になるけどね」
「リュウちゃんの居場所を教えてください」
「ほう……何故、僕が流哉の行方を知っていると思ったのか聞いても?」
流我は流哉の行方を知らないとは言わず、何故知っていると思ったのかを聞いてきた。
知らないと、白を切ってくれれば追及する手はいくらでもあったというのに……
「昨日の電話で言っていたじゃないですか。
結婚式の招待状を『息子にもコッソリと送って欲しい』って、それで気づいたんです。
実は流ちゃんが家に帰ってきているんじゃないかなって」
当たり障りのないことを言って、直接会ったことは言わない。
切れる手札は多い方が良いに決まっている。
「燈華ちゃん、流哉と会ったことは言わないんだね」
「知っていて黙っているのは人が悪いですよ……」
「これでも社長だからね、これぐらいの腹芸はやってみせるさ。
さて、『なんで知っていたのか』だっけ?
それはもちろん、本人から聞いているからだよ。
ついでに言ってしまえば冬城翁と流哉の契約の場に居合わせたしね」
手札を残して話しを聞こうだなんて、まだ燈華には早かったらしい。
今はまだ交渉事は一人ではできていない。
だったら、手札を全て晒してでも欲しい情報を引き出す。
「先日、助けてもらったんです。
お爺様からの依頼だという事もその時に教えてもらいました。
今は、私と彼でゲームをしている最中です」
「うん、それに偽りはないみたいだね。流哉から聞いている通りだよ。
それから誰の手を借りても良いというルールのことは聞いているよ」
「おじ様はこのゲーム、私に力を貸してもらえますか?」
流哉との間で交わされている約束を知っているという事は、確実に彼からこの『かくれんぼ』のルールを聞いている。
ここで流我を味方に引き込む、または力を借りることができたのなら、流哉の足取りを追うには最短距離で行けるはず。
燈華の目的を達成するためにも、流我の協力を得るのは必要なことだ。
「燈華ちゃんを幼い頃から知っている身としては協力をしてあげたい。
冬城翁に恩を売れると思えば手を貸さないという理由もない」
「それなら―――」
「ただ、期待させてしまったならば謝罪をしなければならない。
燈華ちゃん、僕は君に協力をすることはできない。
僕は流哉に、これ以上迷惑をかける訳にはいかないからね」
流我からの返事は望んでいたものではなかった。
そして、返事を聞いた瞬間に悟ってしまった。『ああ、この人は決してコチラ側に着くことはない』のだと。
そうであるならば、これ以上の会話は危険でしかない。
「そう、ですか……力を借りることが出来ず残念です。
これ以上お邪魔してしまってはご迷惑ですし、私達もそろそろお暇させて頂きます」
「そうだね、君たちをいつまでも引き留めておくのは意味のないことだ。
長く引き留めてしまって悪かったね。
これから用事もあると聞いていたのに、コレは僕のミスだ」
「そんなことはありません。むしろ引き延ばしてしまったのは私です。
すみません、忙しいのに……」
燈華は流我に謝罪をし、帰り支度をする。
由紀子の分の荷物は秋姫がまとめてくれていたみたいで、直ぐに出発できそうだ。
「あ、燈華、少し待ってくれる?」
「ゆきちゃん、どうしたの?」
由紀子は自身のカバンから何かを取りだすと、ソレを持って流我の机に歩いて行く。
「流我おじ様。コチラお約束していた招待状です」
由紀子が流我に渡したのは自身の結婚式への招待状だった。
つい先日、燈華と秋姫のところへ郵便で届いたものとは少し違っていたけど、中身はきっと同じものだと思う。
流我はソレを嬉しそうに受け取っていた。
「ありがとう、妻も楽しみにしていたし、当日は夫婦そろって行かせてもらうよ。
流哉が行くかは分からないけれど、用意してくれてありがとう」
「迷惑になるんじゃないかと思って招待状を送れなかったんですが、私も今から当日を迎えるのが楽しみです。
それでは、失礼します」
「「失礼します」」
由紀子と共にジンダイの社長室を退室する。
外には既に秘書の方が待っていて、燈華たちをエントランスまで案内してくれるようだ。
広くて大きい迷路のような会社、案内無しでは初めて来た燈華たちは迷ってしまう。
ここを出たら、由紀子たちの家の進捗具合を見に行って、引っ越し業者を探す予定。
今日はまだまだ始まったばかりだ。
燈華の視点、どうでしたか。
今日は作者からクリスマスという事もあり、プレゼントがあります。
流哉の登場を待ってる人たちへの朗報です。
次回は流哉の父親である流我の視点で進みますが、その次は流哉の視点を予定しています。
先週は二話しか更新できず、すみません。
今週はできる限り更新していこうと思います。
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