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魔法使いに平穏は訪れない  作者: 三上堂 司
生徒会長冬城燈華の優雅?な一日

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Ex.壁から生えた髑髏 『その玖』 後輩を迎える生徒会長

今回も引き続き燈華の視点です。

楽しんで頂けたら幸いです。


※Exエピソードになります。

時系列をある程度無視しておりますので、本編と関わりなく楽しめるようになっております。


2025年1月16日 改訂

 桜が(つぼみ)をつけ、一部の蕾は花開く中、私立宇深之輪高等学校では新入生を迎え入れるべく、入学式が執り行われた。


 期待や不安な思いをそれぞれが抱えて今日を迎えているのかと思うと、冬城燈華はなんだか少し申し訳ない気持ちになってくる。


「しかしまあ、案の定というか三年の役員は皆来てないわね」


「仕方ないよ、燈華(とうか)ちゃん。三年生は受験もあれば就職活動もあるんだし……」


「こんなんだから選挙で私に負けるのよ」


「燈華ちゃん以上に頼りになると感じられるスピーチをした人はいなかったからね……」


 三年の役員は皆揃って欠席している。


 二年の役員のみしか出席していない為、在校生を代表して入学式に出席するはずの生徒会役員が少なくなってしまった。


 部活動の為に学校へ来ていた生徒の中で知り合いに声をかけて、お願いして、急遽入学式に参加してもらえるよう頼みこんで、なんとか頭数は揃えることができた。


 燈華が生徒会長である間にやるべき事として、三年時の生徒会役員も式典への出席を強制するように制度を変えることを心の中でリストに入れる。


「なんとか人数は揃えられて良かったね……」


「引き受けてくれた人たちには後でお礼をしなきゃいけないわね。

 ヒメ、面倒だけどさ、後でお礼を言いに行くの付き合ってくれる?」


「良いよ、燈華ちゃん。

 会長だけに行かせて、副会長は何もしないんじゃ示しがつかないだろうし」


 こんな事を式の最中に話していられるのは、司会進行を大和田(おおわだ)美都子(みつこ)に任せて、ステージ裏というのか、舞台袖というのか、そんな場所に引っ込んで、“新しく書いたばかりの祝辞”を見直している。


 こんなことになってしまったのは、今朝、登校して生徒会室に入る際に鍵が開いていたことがそもそもの始まりだった。


 昨日帰る際にしっかりと鍵をかけたことを確認したハズなのに、それでも鍵が開いていた。

 無くなったモノや、持ち出されたものがないかを大津(おおつ)秋姫(あき)と二人で確認する。


 大事な書類や、電子ケトル等の備品類は隣接している資料室、別名“第二生徒会室”の方へ入れてあった為被害はなかったのだが―――


「ドコの誰だろうね、こんな幼稚なことをするのは」


「おおよその検討はついているんでしょう?

 私だって予想がつくんだから、燈華ちゃんが気付いていないわけないよね」


「同時に答え合わせする?」


「良いよ」


「じゃあ、せーの」


「「笹山(ささやま)」」


 生徒会長用の机の上に置いてあった祝辞の文が、まあ見事なまでに切り刻まれていた。


 おかげで掃除をしなくてはならなくなるは、新しい紙に祝辞の文を書き起こさなきゃならなくなるはで、朝からバタついていた。


 生徒会の担当教員になっている新山(にいやま)由紀子(ゆきこ)には事情を説明し、司会進行を別の人に任せる事の承認を直ぐに取り付けた。


 燈華と秋姫の次に登校してきた美都子にお願いし、司会進行役を引き受けてもらう。


 その間も紙に筆で墨を走らせる作業を止めることはしない。


「何とか書きあがったけど、墨が自然に乾くわけがないから、魔術でチョットズルはしたけどね」


「まあ、みんな犯人捜しで躍起になっていたし、入学式の準備もあったしで、気にかけていた人はいなかったと思うよ」


「それにしても、防犯カメラまで切られていたとはね……ヒメ、今回の嫌がらせは笹山だろうけど、少し手が込んでいると思わない?」


「私も少し手が込みすぎだと思うよ、燈華ちゃん。

 防犯カメラを切るまではプロの手口に見せかけるには十分だし」


「プロの仕業に見せかけるにしたって、生徒会室をピンポイントで狙うなんてマヌケすぎだけどね。

 昨日の報復って感じが丸わかり。

 だけど、校長の今回は被害届を出して、よりセキュリティーにお金を使いますってアピールに持っていくって判断は流石だね」


「あえて事件を大きくすることで、理事会に予算の審査を通らせるってやり方は、私たちじゃマネできないからね」


 由紀子から報告を受けたのか、出勤して早々に校長は生徒会室まで足を運んできた。


 燈華(わたし)秋姫(あき)美都子(みつこ)の三人で入学式の段取りを話しながら、書き上げた祝辞の原稿を確認している最中だったのには驚いていたが。


 被害状況を説明し、切り刻まれた原稿は証拠として提出し、おそらく昨日の事に関する笹山の仕業ではないかと進言し、式の司会進行の変更を伝えた。


 祝辞の文を頭に叩き込み直すために、式の最中は出番までステージの陰にいることの許可を直接貰う。

 そうこうしている間に他の役員が集まってきた為、司会進行役が燈華から美都子に変わったことだけを伝える。


「カイチョー。三年生が全員居ないんですが、どうしますか?」


「ナンデスッテ」


 いつも親しげに話しかけてくれる二年の役員の女生徒から三年生の役員が一人も登校していないことの報告を受け、慌てて校内中を巡り、見かけた知り合いには片端から声をかけて頭数を揃えた。


 そんな一苦労もあって、ようやく入学式本番を迎えることが出来た。


 散々な目に合った報復は、いつか必ず原因を作ってくれた連中にする。


「燈華ちゃん、そろそろ出番だよ」


「ありがとう、秋姫(あき)

 こんなことをしでかしてくれた連中への報復は、また後で考えるとしますか……」


「燈華ちゃん、その話し私も一緒にするからね?」


「分かっているよ。目には目を歯には歯を、報復には報復を。

 私たちの流儀で借りは絶対に返してやろう」


「そうだね。じゃあ、燈華ちゃん、頑張って」


「行ってくるね」


 丁度、美都子が祝電の紹介を終えるところだった。

 祝辞の紙を持ち、声をかけられるのを待つ。


「続きまして、歓迎の言葉。生徒会長、冬城(とうじょう)燈華(とうか)さん」


 美都子から紹介があり、燈華はステージの袖から出ていく。


 ステージ中央にセットされた演説台に行き、礼をしてからマイクの位置を調節し、巻いてある祝辞の文を少しだけ広げる。


「今年度より生徒会長に就任した冬城(とうじょう)燈華(とうか)です。

 新一年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。―――」


 要点だけをまとめた、至極簡単な文章を暗記したままに話す。

 しっかりとした挨拶は生徒総会の時にでもすればいいので、今回は型にはまったモノを揺らぐことなく読み上げる。


 時間にして五分弱。

 この日の燈華(わたし)の表向きの仕事は終わった。


「お疲れ様、燈華ちゃん」


「ヒメ、ありがとう。

 まあ、そこまで疲れてもいないし、これから行う化け物退治に比べればどうってことないよ」


「そっちの下準備は任せて」


「頼りにしているよ、ヒメ。

 それにしても……今年も出てきそうだなって感じがして、そっちの方が私としては憂鬱だよ」


「ああ、去年に続き今年の新学期早々の告白事件から続いて、次は新入生か……」


「毎回振るのって割と疲れるんだよ……」


「私も他人事じゃないからね……」


「秋姫も大変だね……」


「燈華ちゃんほどじゃないよ……」


「「ハアァー」」

 

 舞台袖で二人揃ってため息を吐く。


 ステージから見えただけで、熱い視線を送ってくれている人がチラホラいた。

 毎年出てくる一目ぼれという熱病に侵された男性。


 今年からは丁寧に相手をすることはやめると昨日早々に決めた燈華(わたし)は、この後決行する予定の化け物退治を前に、秋姫と同時にため息を吐いた。



燈華の視点、どうでしたか。

主人公である燈華を際立たせる為に、役立たずの役員や、意地悪な教師を用意してあります。

くれぐれもフィクションですので、こんな人達は基本いないと思います。


お読み頂き、ありがとうございます。

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今後ともよろしくお願いします。

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