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7.いつもとは違ういつも通りの朝『その弐』慌ただしい午後

燈華の視点です。

楽しんでいただければ幸いです。


加筆と修正、サブタイトル付けを行いました(2025/1/3)

 (つむぎ)が住む館の二階。

 多くの部屋の一室の一つ、秋姫(あき)が借りている部屋の前に立ち、扉を軽くノックする。


「ヒメ、お昼出来たけど、起きている?」

「起きているよ。着替えたら下りて行くから先に食べていて」

「じゃあ、先に食べているね」


 燈華はリビングへ戻り、自分で作った昼食を食べ始める。

 紡へ視線を向けると、食後のお茶を飲んでいた。

 思わず噴出しそうになるのを(こら)え、震える指先で紡の手元を差し問いかけた。


「ねえ、(つむぎ)。聞きたいことがあるんだけどいい?」

「ええ、良いわよ」

「お昼ご飯、焼きそばだったよね……」

貴女(アナタ)が作ったのだから一番理解しているでしょう?」


 怪訝(けげん)そうな紡の表情に文句を言いたくなるが、今はそんな事はどうでもいい。

 カップの中身、亜麻色の薄い茶色の液体に用があるのだから。


「ええ。だから聞くんだけど、それ紅茶だよね? 

 しかもミルクティーだよね?」

「見れば分かるでしょう? 可笑(おか)しな事を聞くのね」

「いや、普通のお茶なら分かるけど、ミルクティーは焼きそばに合わないでしょう?」

「いいのよ、口の中は一度(ゆす)いだから」

「そういうものなの?」

「そういうものよ」


 紡の回答に納得はできないが、本人が良いと言っているのだから、これ以上の追求は止めた。

 ふう、と息を吐き、音を立てて開くドアへと視線を向ける。


「二人で何の話しをしているの?」


 着替えを終え、下りてきた秋姫(あき)は席に着かず、そのままキッチンへ向かう。

 手伝おうと(はし)を止めて席を立とうとする燈華を制止し、席に着かせた。

 ふと正面の紡を見ると、ついでとばかりにお代わりを催促していた。


「飲み物ね。私はお茶だけど、(つむぎ)さんは紅茶よね。燈華(とうか)ちゃんは?」

「私? 私も基本お茶だけど炭酸でもコーヒーでも何でも良いよ。ただ牛乳の系統はダメ」

「私もミルクのみは嫌ね。今日はウバの茶葉しかないからミルクティーを淹れたけど」

「まあ、どれでもその人がいいと思うもので良いんじゃないかしら。

 燈華ちゃんも深く気にしていないみたいだし」


 食べ終わったお皿を片付ける為にキッチンへ来たついでに秋姫の様子を除くと小鍋(ミルクパン)で暖めた牛乳に茶葉を入れていた。

 キッチンから紡へと視線を移すと時計をじっと見つめていた。


「それより、あなた達時間は大丈夫なの? そろそろ行かないと午後の授業始まるわよ」

「大丈夫、そろそろ出るところだし、今日は授業を受けないから」

「それに、今日は生徒会の会議がなければ休む予定でしたから」


 ミルクティーと緑茶を二つ持って秋姫はテーブルに着いた。

 秋姫は紡の前にミルクティーを置き、燈華の前に緑茶を置く。

 紡が無言のまま口をつけるのを見てから、秋姫にお礼を言って緑茶を口に含む。


「そう。まあ、私には関係のないことね。

 それにしてもヒメ、ロイヤルの淹れ方上手くなったわね。とても美味しい。

 茶葉を開かせてから入れる工程を丁寧にやってあるのが分かる味よ」

「ありがとう。練習したかいがありました」


 紡は再び紅茶に口をつけ、秋姫は『いただきます』と言って焼きそばを食べ始める。

 燈華は再びお茶を飲んでいる紡の姿に、出掛けに友人から頼まれたことを思い出す。


「そうだ、アレックスから紡へ言伝(ことづて)を預かっていたんだ。

 紡が欠席することを伝えておくそうよ。帰ってきたら御礼言っておきなよ」

「はいはい。感謝しているし、御礼は帰ってきたら直接言っておくからあなた達は早く行きなさい」


 秋姫が食べ終えるのを待つ間お茶を飲んで一息つく。

 既に学校へ行く用意は終えてあり、身支度を整えるだけだ。


「燈華ちゃん、ごちそうさま。美味しかったよ」

「おそまつさまでした。ヒメは自分の荷物取りに行って。私はもう用意済んでいるから。

 紡、悪いんだけど洗い物お願いできる?」


 秋姫が急ぎつつ、しかし走らないように荷物を取りに行くのを見てから、先程の本へ視線を落としている紡へ頼みごとを切り出す。

 本を見つめていた瞳がゆっくり視線を合わせてくる。


「別に構わないけど」

「ありがとう。今度洗い物の当番代わるから」


 タイミングよく秋姫が降りて来た。

 用意しておいた鞄を持ち、最後に鏡を見て身だしなみのチャックを軽く済ます。

 玄関でローファーに足を通していると、珍しく見送りに紡が出てきていた。


「じゃあ、紡、いってきます。後の事はお願いね」

「紡さん、すみませんがお願いします」

「二人ともいってらっしゃい」


 紡の送り出す言葉を確かに受け止め、もう一度「いってきます」と言い、玄関を閉める。

 午後の授業にすら絶対に間に合わない時間だけど、そんなことは先刻承知。

 少し先に小さく見える校舎を目指し、出発する。


燈華の視点、どうでしたか。

楽しんでいただけたら幸いです。

燈華たちの日常をしっかりとかけていると良いのですが……

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