4.今日の事は今日の内に。『その壱』賑やかな同居人
今回は紡の視点です。
加筆と修正を行いました(2024/12/31)
「む―――」
二人を見送り、紡は定位置である三人掛けのソファーの右端へ座り直して秋姫が淹れてくれた冷め切ったお茶に眉をよせて飲み干した。
一息つき、新しくお茶を淹れなおす為にキッチンへ向かう。
執事の役割にやらせても良いが、その為にわざわざ呼び出すと言うのも面倒。
お茶を淹れる程度のことは誰かの手を借りるまでもないことだ。
新しく淹れなおした紅茶を一口飲み、小さく頷くと病院跡地で再開した魔法使いの事を思い出す。
久しく会っていない相手ではあったが、紡は彼の事を忘れたことは一度もなかった。
唇に指を当てながら、考え事にふけていく。
神代流哉に初めて会った時の出来事は、紡にとって屈辱と言える出来事だった。
今まで一度も攻略された事のなかった紡と魔術師の間で執り行ってきたゲーム、『英雄に挑みし愚か者』を終わらせた初めての人。
紡が丹精込めて造った英雄を、傷を一つも追わずに倒してみせた常識外れ。
自信を一瞬で打ち壊された。
流哉当人は伸びた鼻をへし折ってやろうって考えだったのだろうけど、それで壊された紡のプライドはズタボロだ。
思い返すだけで腹立たしいあの一件以来、紡の中で流哉は興味の対象になった。
次こそは刈り取ってみせると思っていたのが、次はどんな『物語』で遊ぼうか、この英雄と戦わせたらどんな手で打ち破ってみせるのか、気が付けば彼の事を考えることに思考の時間を割いている紡がいた。
きっと西園寺紡は神代流哉に惹かれている。
冬城燈華は紡の大切な友人。
生涯の付き合いになると紡は確信している。
まあ、燈華の寿命が尽きるまでか、紡が死ぬまでのどちらが先かは分からないけれど。
そんな大切な友人の思い人だけれど、ソレとコレは別のこと。
紡は欲しいものは必ず手に入れてみせる。
たとえ生涯の友人と決別することになったとしても。
今回わざわざ苦手な時間魔術を使ってまで手を貸したのも結局は紡自身の為。
燈華、私はね、今まで手に入らなかったモノはないのよ。
淹れなおした紅茶はポットの中にまだまだある。
燈華がお風呂から出てくるまで、まだ時間は十分あるはず。
ソファーの定位置へ戻り、二杯目をカップに注ぎ、口をつける。
丁度いい濃さになっていて、ホッと息を吐き出す。
きっと気分が高ぶっていたのだと思う。
紅茶を飲んだだけで心が落ち着く。
落ち着いたところで、『まあ、ぶつかって潰し合うのか、分け合うのか、選択するのはあの子だわ』と自身の気持ちを零す。
気持ちを吐き出すことで、少しゆとりができる。
燈華が転がり込んできて以来、退屈することはない。
いつも全力のあの子を見ていると、『色々と楽しいことが起きそうね』と思いながら目を閉じる。
紡の視点、どうでしたか。
今回はかなり短めです。
久しぶりの紡の視点、楽しんで頂けたのでしたら幸いです。
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