3.真夜中の贈り物『その参』燈華の気づき
燈華の視点です。
加筆・修正を行いました(2024/12/31)
針と綺麗になった図面を見ていると違和感があることに気づく。
偽装された情報を紡が剥ぎ取ったにも関わらず残り続けるソレは、燈華の中で確信へと変わる。
「ねえ。私の思いついたことを話してもいい?」
「別に許可を求めなくても良いわよ。今はそれぞれの思いついたことを話すだけですもの」
「そうだよ、燈華ちゃん。まずは話してみて」
紡と秋姫の二人からの許可も出たから思いついたことを話す。
「紡のおかげで図面の細工は解けて、年代の違いについては分かったよね?
それでも、その針がどうしても私は気になるの。
ヒメのように魔導器に詳しい訳でもないし、紡のように見通す眼を持っている訳でもないから、私の感が正しいかは分からない。
それでも、私は図面以上に一緒に送られてきた針そのものが余計に気になる」
図面の正体が分かったからこそ、針が余計に気になってしまう。
祖父母がわざわざ何でもない物を送る為に、添えたものへ細工するとは思えない。
別の羅針盤のパーツだということ、年月を多く経過しているということ、それを誰かの手によって加工されたということを抜きにしても、針にはまだ何か隠されているような気がしてならない。
「燈華ちゃんの感はたまに大当たりを引くから無視はできないけど、この針に誤魔化しとかはないと思うよ。
性質を変えずに誤魔化しのための細工をするなんて、そんな芸当は……」
「何か心当たりがあるの?」
秋姫にはきっと心当たりがあるのだろう。
『そんな訳は……』とこぼしながら考え込んでいる。
「ヒメ、その心当たりを私と燈華に話してみない?
一人で考え込んでも先には進めないわ」
「紡さんがそう言うのでしたら」
「私が分かるかどうかは別として、話してみてよ。
誰かに話すことで考えがまとまることもあるし」
秋姫は話すために整理をしているのか、眼を閉じた。
準備ができ、口を開くのを紡とただ待つ。
「こんな芸当ができるのを私はたった一人しか知らない。
私たち錬金術師を代表して連盟の重鎮に名を連ねる人、シェニッツァー・バームロイム氏しか心当たりが私にはないわ」
秋姫の出した名前は連盟の重鎮に名を連ねる大物中の大物だった。
このことが本当であるならば、連盟の重鎮が、魔法使いとはいえ個人に協力しているという事になる。
「重鎮の一人が協力してくれるなんてことあるの?」
「燈華、ないと断言することはできないわ。
私たち魔法使いだって苦手なことは知人を頼りもするし、依頼を出すことだってあるわ」
紡の話しは燈華にとって意外なものだった。
魔法使いと呼ばれる者たちは、自身だけで何でもできてしまうと思っていたからだ。
紡が何かをする時に燈華たちを頼るとかはないし、祖父母は何でも自分たちだけで済ませてしまう人で、燈華にとっての魔法使いというのはそこが基準となる。
だからこそ、紡の口から誰かを頼ることもあるという言葉は意外だった。
「私の想像でしかないけれど、燈華ちゃんの御爺様と御婆様はシェニッツァー氏と個人的な交友があるんだと思う」
「あの二人の交友関係は広いからありそうかも……」
「あまり交友関係を築かないのが魔法使いだけど、あの二人は特例で別格ね」
孫の燈華から見ても交友関係は広いと感じていたけど、どうやら思いの外広いらしい。
交友関係の少ない紡の別格と言う発言を信じて良いのか分からないけど。
「そうなると、この針が羅針盤のパーツだったのかどうかも検討する必要がありそうね」
せっかく解き明かせそうだった紫電と雪乃の思惑は、また迷宮入りしそうだ。
「紡さん、羅針盤の針っていうのは間違いないと断言するわ。
いくらシェニッツァー氏でも全く別の用途のモノを性質を変えることなく変化させるなんてことはできないはずだから」
「ヒメはこの針に大まかな当たりをつけているのね?」
「だいたいは。だけど検証するために時間が欲しいです。
燈華ちゃん、紡さん、この針と図を私に預けてください。
必ず秘密を暴いて見せます」
いつになく本気の表情を見て、燈華は秋姫を信じることにした。
元々信頼していないという訳ではなく、祖父母から贈られたものを預けても良いという意味で。
これ以上燈華がここに居てもできることはないし、役に立てるとも思えない。
燈華の中の判断は決まった。
「私は良いよ。これ以上私にできることはなさそうだし、あとは姫に任せるよ」
「私も構わないわ。もともと燈華に宛てて送られてきたモノだし、私もこれ以上役に立てられるとは思えないわ」
紡の反応を待つ予定だったけど、その予想は大いに裏切られた。
あの紡が自分を役に立たないと表現することは意外だった。
「二人ともありがとう。
早速これから作業に入ります。
燈華ちゃん、今日中には間に合わせるから、待っていて」
秋姫は広げていた道具、図面と針を抱え、紡から借りている一室のある二階へと上がっていく。
あとは秋姫を信じて待つ以外に燈華たちにできることはない。
「私達はヒメを信じて待ちましょう。
アレは私達の領分じゃない、あとはヒメの領域よ。
貴女は今日の疲れを明日に残さないよう早く休みなさい」
紡に促され、燈華はバスルームへと向かう。
今日の事は今日の内に終わらせる。
それが疲労であろうと燈華たちには例外ではない。
いついかなる時であっても、万全の体制を整えておかなければならないと紡に教わった。
だから燈華は疲労を取るために湯船に向かう。
燈華の視点、どうでしたか。
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