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時の迷路  作者: 幽雛
第一章 幻想の過去
2/5

密かに封を その①

 枕木で作られたうねうねと曲がりくねる面白い道や、小川を跨ぐ可愛らしいアーチの橋、その端々に植えられた美しい色とりどりの花。

 そんな屋上庭園の中を歩き始めたのは、もうかれこれ二時間も前のことだ。昼が過ぎたころに出発して、ひとしきり散策し終えた頃にはもう日が傾きかけていた。

 秋の空は高く、茜色に染まっている。

 見渡す限りでは一つも雲がないから、夜になればさぞ綺麗な星空が見えることだろう。ここ最近は空の機嫌があまり良くなく、雨や曇りが続いて蒸していたのだが、それもどこかに置き忘れてしまったかのようだ。

 上京して生活を始めてから七年、大学生になって勉学に勤しむこと二年になる神埼時音は、ベンチの上で満足げなため息を漏らすのだった。

 林の中とは言っても、ベンチがある場所は円形の広場となって拓けているので視界は良い。ぐるりと見渡せば見ごろを迎えた楓がさらにその身を紅く染めていて、風にさらわれた紅葉が踊るように舞っている。そんな紅葉たちが偶然たどり着いたのか、広場中央にある噴水の控えめな水柱に洗われているものも見られた。紅、黄、橙、さまざまな色の葉が上がって降りてを繰り返す様は、植物のアクアリウムのようだ。

 いつもはこうして穏やかな時を感じていると心が安らぐのだが、今はちょっとした喪失感に苛まれている。郷愁の秋とはまったくもってその通りで、過去にあった出来事を思い返していたのだ。

 絶対に忘れることはできないだろう、絶望するほど悲しい出来事があったあの日。けれども、確かに楽しい出来事がたくさんあった日々。

 己の無力さと自責の念に駆られたのは、一度や二度のことではなかった。そのあまりの重責に耐えられず、目を逸らしたときや現実逃避をしたこともある。だが、失くしてしまったものはもう二度と戻らないのだという現実を突きつけられるばかりで、周りの人間に無様を晒すだけだった。どうにもならない感情のあまり自分の殻に閉じこもってしまうようなことはなくなったが、今でもその枷は心を縛り続けている。

 時音は常々思っていた。

 この枷は、自らが犯した罪に対する償うべき罰なのだろうと。この身と精神が生き長らえる代わりに、神から与えられた代償なのだろうと。この世に生き続ける限り、その枷からは絶対に逃れられないのだ。


「はあ……」


 そんな幾度したかも分からない思考を噛み潰すようにして目を瞑り、深く深くため息をつく。そのため息から出た憂いと倦怠で、周りの植物が腐り果てるのではなどと真剣に思ってしまう。

 散策している最中は歩くたびに変わりゆく風景に気が釣られて全く気にならなかったのに、休憩した途端にこの有り様だ。出発を決める前に多少は覚悟していたものの、いざこうなるとやはり来なければよかったかと少し後悔する。そもそも夕刻前に引き上げれば良かったんだな、と気が付いても時既に遅しだ。

 一つ何かを思い出せば連鎖的に他のことを思い出してしまい、それがさらに自分を追い込む悪循環へと繋がっていく。そんな負の感情しか生み出さない思考を巡らしたのも、数えるのが面倒になるぐらいのものなのだから、少しは学習したほうがいいんじゃないかといささか自分でも呆れるところだ。

 被害妄想だろうが、そんな自分を正面で揺れ動く一本の楓があざ笑っているようにも見えて、何だか泣きたい気分になった。

 

「……一本?」


 またもため息を吐くか吐かないか、といったところで違和感に気が付く。

 何かの見間違いではなかろうかと思って目を擦ってから見てみても、その対象は見紛うこともないほどあからさまなものだった。

 さっきまでは思考の渦中にあったせいか特に意識することもなかったのだが、周りを囲む木々の中で一本だけ、確かに揺れ動いていた。

 人は突然の怪奇は己の常識の範疇に収めようとする本能があるというが、それは時音とて例外ではない。すぐさま考えられる可能性を頭の中で組み上げて、瞬時に検証する。

 今しがたまで吹いていた風は、ほとんど無風に近い。そもそも風が吹いていれば他の木々だって枝葉を揺らすことになるわけで、これは確信を持ってあり得ないと言い切れる。ごく狭い範囲で突風が起こることも可能性の問題で言えばないわけではないが、それにしても木一本は範囲が狭すぎる。竜巻とか、つむじ風とか、そういった類のものだ。

 野狐が木の上で喧嘩をしているのか、それとも野鳥が木の中にいる虫を食い荒らしているのかと思って目を細めても、それらしき姿は見当たらなかった。前者は距離がそれほど離れていないので目視ですぐにわかり、後者は野鳥が動くにしては枝葉の揺れが大きすぎるという下での結論だ。ちょっと先入観が入りすぎかと思うが、それが真実なら後々鳴き声が聞こえるなり羽ばたく音が聞こえるなりするだろう。

 

「…………」

 

 しかし、しばらく待っても楓はがさがさと大きく耳障りな音を出すだけで、とても何か動物や鳥がいるようには思えなかった。あれほど揺れていたら、例え木の上に登れる動物でも今頃まっさかさまで苦しげな鳴き声をあげているに違いない。

 自らが揺らした足場のせいで落ちるなど間抜けにもほどがあると苦笑いを浮かべてしまいそうになるが、目の前の予断を許さない状況を見ればそんな笑みはすぐに引っ込んだ。

 やはり、何かが引っかかる。

 時音はひとりでに動く楓に只ならぬ何かを感じ、警戒しながら立ち上がってから、睨みつけるようにしてすっと目を細めた。

 それがどうしたと言わんばかりにがさがさ、がさがさという葉が擦れる音は、辺りの静寂と相まってやけに響いて聞こえる。

 不規則にその身を揺らす楓の木はどことなく不気味で、こちらへ来いと手招きをしているようだ。

 これがぼんやりと月明かりの下に照らされた、という状況だったら、流石に平静を保つ余裕はなかったかもしれない。

 心に齎すのは最大限まで引き上げた警戒心。そして、その正体を暴いてやると使命にも似た好奇心。

 郷愁の憂いは、もうどこかに吹き飛んでいた。


「……さて、お前の正体は何かな」


 そう呟いても、楓はさきほどより葉が擦れる音を大きくするだけで、何も返答はない。

 植物なのだから当たり前かもしれないが、ただの植物と決め付けられるほど物事の視野は狭くないつもりだ。

 すなわちそれが植物とは異なるイキモノなのではないかという、一つの懸念。時刻が時刻だけに、その懸念をさらに増長させる。

 二十年余とさして多くもない人生だが、一度だけ見て、話を聞くことは何度もあった。

 世のあずかり知らぬところに存在する伝説、妖怪だ。

 妖怪は日が暮れて闇夜が訪れる時間帯、逢う魔が時に人を襲い、攫っていくという。中には人に危害を加えないものや、ただ驚かしてくるだけのものもいるが、記憶の限り木の妖怪にはそんな温厚なものはいなかった気がする。

 思い当たるところとして、ひとつは『木霊』。年を経た樹木に宿るといわれる精霊で、木を切ろうと幹を傷つけたら血が出たなどの逸話が残る。もう一つは、『樹木子』。大量の血が染み込んだ大地に根を張る木がこの妖怪になると言われ、通りがかった人間の血を吸うために枝を伸ばして襲う。

 ただ、どちらも屋上庭園という今の環境に照らし合わせればちょっと考えにくい。ここはせいぜいが人の手によって管理された樹齢数十年の植物しか生えておらず、多くの人間が血を流した古戦場でもないからだ。

 といっても、人間の都合に合わせて書かれたりするために伝承や伝説に歪曲はつき物なので、一概に判断するのは難しい。

 妖怪かそうでないかの判断は保留にして、現状で向こうから危害を加えてこないのならばひとまず様子見するのが定石だろう。

 良識ある普通の人間ならば馬鹿馬鹿しいと一笑に付すような思考回路だとは自他共に認めているが、時音は全く気にしていない。

 社会的に言えばそれが正しい反応だし、周囲に認められるにはそうでなければならないのだろう。

 だが、実際に自らの身を以って「経験」してしまうと、そんな悠長なことは言っていられなくなる。死ぬか生きるかの瀬戸際に立たされれば、いくら自分の意思があろうがそれが真実であると認識してしまうのだ。

 死んでしまっては元も子もないのだから、いくら奇怪な行動だと笑われても身の安全を守るのが最優先だと時音は考えていた。


「――――い……」

 

 観察を続けていると、がさがさ、がさがさと楓が枝葉を揺らす中で、何かの声が聞こえた。

 それには思わず総毛立つ。

 よもや喋りだすとは思っていなかったという予想外の出来事でもあったし、何よりそれが不穏な、まるで地獄から蘇った死者か何かのようなものに聞こえてしまったからだ。

 小さく掠れた声で何と言っているのかよく聞き取れなかったが、声質は低くなく、寧ろ高いほうだろう。男というよりは、女の声に近いものがある。

 辺りに誰かいるのかとも思ったが、見渡す限りでは人の影は見えないし、遠くから声を発したにしても反響するような感じはない。もしいたのだとすれば、目の前の異常な光景に声をあげるか、目を点にするか、はたまた逃げ出しているだろう。遠くで木の陰に隠れるようにしていたらちょっと分からないが、隠れる理由のほうがもっと分からない。

 やはりこの楓は本当に妖怪なのだろうか。 


「?」


 そんなことを考えていると、葉の擦れる音が収まった。

 あまりに唐突な出来事に呆気に取られて力が抜けてしまったが、すぐに警戒心を取り戻すようにして楓を睨みつける。

 激しい動きのせいか、多くの紅葉がその周辺に散らばっているだけで、さっきまでの出来事が何もなかったかのように静まり返っていた。 

 どうするべきか、と迷う。

 見なかった振りをしてそそくさと逃げるのが最も安全な手段かもしれないが、もしこれが本当に妖怪であるとするならば放っておくにはあまりにも危険だ。何も知らない人間が通りかかって、襲われてからでは遅い。妖怪などという存在が世間で認められていない以上、その人間が抗えずあっさりと死んでしまうことは想像に難くなかった。

 ならば、せめて認めている人間が被害を抑えるために対処すべきではないだろうか。

 幸い懐には、それなりに対処できる護身用の武器が収まっている。飽く迄も護身用なので息の根を止めるというのは難しいだろうが、襲われた後一旦離れて機をうかがうことは容易なはずだ。

 妖怪かそうでないかさえ証明できれば、その他のことは後で考えても遅くはない。

 そう結論付けてから、時音はゆっくりと懐に手を入れた。

 戦場に赴くことを覚悟したように深く息を吸い込んで、楓のほうへ近づいていく。一歩一歩、隙なく着実に。

 歩を進めるたびに、じわりじわりと額に脂汗をかくのが嫌でもわかった。

 喉に張り付くような不快感を齎す静寂の中に、紅葉を踏みつけたくしゃりという音だけが響いていた。


「ふー……」


 警戒心が抜け出してしまわないように、恐怖と安堵をまとめて吐き出す。

 ようやく手を伸ばせば幹に届くか届かないかという距離まで近づいた。

 枝葉や幹を見上げて観察するが、何か仕掛けをしてあるようには見えない。周りの楓と見比べると木の幹がちょっと太いことと、揺れのせいか葉が多く散ってしまったぐらいで、それ以外に目立った特長はなかった。

 それから、右手はしっかりと懐に入れたままた試しに幹をゆっくりと撫でる。

 しかし、これも体温が感じられるほど温かいというわけでもなく、ざらざらとした鑢のような感覚が、無機質な冷たさの上に感じられるだけだった。

 そこで、もしや、と思う。

 今襲いかかってこないのは、こちらを油断させるための作戦なのだろうか。

 攻撃が届かないために何とかして獲物を近づかせようと一旦様子を確認しに行かせ、やっぱり何もなかったと安堵したところを襲う。だが、獲物が近寄るとも限らないし、それなら奇怪な行動を取らず少し興味を惹くような動きをすればいいだけのことのようにも思える。全く合理的でない、意味不明な行動パターンだ。

 それを逆手に取って、という複雑怪奇な作戦なら不意を突かれるかもしれないが、相手の攻撃範囲がある程度わかっていてそれに対処できる以上、痛手を負うようなことはないはずだ。ひとまず相手が隙を狙っているというのなら、こちらがその油断した隙を狙うのみ。

 悟られないようにと無表情で楓を睨んでいたが、内心ではさてどうするのかと少しだけ楽しみでもあった。

 相手の企みを覆したとき、自分はそれ以上の利益を得ることができる。

 そのことをいざ証明しようと、楓に背を向けて歩き出す。

 その瞬間だった。

 

 「――――っ!」


 背後で枝葉の擦れる音、そして動く気配。

 好機きたれりと懐に忍ばせていた手をすぐさま引き抜き、空気の流れでその対象の位置を予測。

 暗器のごとく振りかざしたそれは、敵を一撃で仕留めるごとく急所を正確に――。


「ひいっ……」


 捉えなかった。

 数秒のこと、時音は目の前の光景を理解できず、ただ呆然と見つめることしかできなかった。目はちゃんと機能して情報を伝達しているものの、脳がそれを拒絶しているような状態。わけのわからなさに、己の顔に冷水をぶっ掛けたくなるほどの困惑。

 小さな悲鳴をあげたのは、自らのものではない。

 そんな事実を把握するのに少なく見積もっても五秒はかかったが、時間さえ経てばどんな不可解な状況でも頭は理解するらしい。

 目の前にいたのは、今まさに襲おうとした楓の枝葉でもなければ、樹木に宿った精霊でもなかった。恐らくは人間。手に握られた唯一無二の切り札を突きつけられて、怯えているのか目を強く閉じたまま固まってしまっている少女だった。

 印象としては、賢い。顔は歪んでいるせいでお世辞にも綺麗とか可愛いといった判断はできないが、理知的な顔立ちであることはすぐにわかった。

 焦げ茶色の髪は染めたような不自然さがない。その上に乗せられた若干ずれた黒のハットや、純白のワイシャツにしっかりと留められた赤いネクタイは、少女の賢さというイメージを象徴している。黒いスカートと黒い肩掛け鞄も相まってか全体的に黒い印象だが、少女からはそれほど暗いものを感じなかった。

 ふわり、と思い出したように風が吹いたところで、時音は少女の視線が向けられていることに気が付く。

 こちらの様子を伺うようにして器用に片目をあけながら、ちらちらとこちらを伺っていた。


「……あの」


 少女が、小さく口を開いた。

 恐る恐ると言った感じではあるが、声は震えておらず、むしろ透き通った張りのあるものさえ感じる。さっきまでの反応は、恐怖というよりも驚きのほうが大きかったのだろうか。

 

「これ、どいてくれない?」


 怒るでもなく怖がるでもなく、努めて冷静な様子で少女は言った。

 片手で作った人差し指が向けられているのは、時音が少女の喉下に未だ突きつけているもの。護身用の、札だった。


「…………」


 返事をする気はなかったが、傍から見れば少女を刃物で脅迫しているようにしか見えないだろうと考えてひとまず手を下ろすことにした。

 すると少女はことさら安心するように「はあ」とため息をついて、力が抜けたように後ろの楓の幹に寄りかかってしまう。

 その様子は敵意などさらさらないということを示しているようだったが、時音は気を抜くようなことをせず、少女から目を離さない。


「聞こう。さっきまでの一連の出来事はお前の仕業か?」


 護身用の札は未だに握ったまま、覇気を込めた強い口調で言った。

 この札は陰陽道を使った攻撃と防御に使えるもので、霊力を流し込むことで力を発現させることができるという。この大学にいる、切っても切れない関係の教授から譲り受けたものだ。試しに使ってみたことはあるものの、実際に妖怪と遭遇して使ったような経験は一度もない。強大な妖怪ならばたちまちのうちにやられてしまうだろうが、裏返せばそれほど強くないものならば大丈夫だということになる。丸腰よりはよほどましなはずだ。

 しかし、時音の言葉に少女は呆けたような顔をした後、可笑しそうにくすくすと笑い出した。


「し、仕業って……くす、面白い表現ね」


 必死に笑いを堪えているのか、目には涙が滲んでいるし、片手では木の幹を押さえ、空いた手で自らの腹を押さえて、前かがみでふるふると震えていた。

 そんな風に笑う様は純粋に楽しんでいるようにさえ見えて、年相応の少女のように可愛らしい。

 だが、不覚にもそう思ってしまうからこそ余計に腹が立つ。


「……何がおかしい」

「くっふふ、だ、だって大袈裟すぎるんだもの」


 少女は腹を押さえていた手で目じりの涙を拭うも、依然としてくすくす笑っている。

 その振動のせいか、ただでさえ落ちそうになっていたハットを慌てて直したのが何だか滑稽で、こちらも笑いを隠すのに必死になってしまった。それを舐められないようにと下唇を噛みながら我慢して、努めて無表情を装ってから本来の目的を思い出す。

 とにかく、目の前の人物が何者であるかということだ。木霊や樹木子と何ら関係もなく妖怪ですらないのだとすれば、順当に考えるのならばこの大学の学生だ。身分を証明するものさえ見せてくれれば、ある程度は信用することができるだろう。

 そう考えて、時音は口を開いた。


「お前は何者なんだ?」


 少女は隠しきれていない笑みをこぼしながら、ゆっくりとこう言った。


「この大学の学生、宇佐見蓮子よ」

「在学証明証は?」


 間髪いれずにそう言うと、蓮子は下げていたバッグから財布らしきものを取りだして、入っていた一枚を時音に渡した。

 この大学の、在学証明証。

 硬質なカードの上には無機質な文字で、宇佐見蓮子、と書かれており、顔写真を本人と見比べてもまったく変わらないように見えた。

 流石に住所生年月日まで見るのは不躾にも程があるので、注視せずに蓮子のほうへと返す。


「納得してくれた?」

 

 蓮子が財布を鞄にしまいながら、聞いてきた。こみ上げる笑いはもう収まったようで、機嫌がいいのか今は優しい笑みを浮かべているだけだ。

 さすがに、これ以上疑うのは失礼だろうか。在学証明証を見る限りでは、この大学の学生であることは間違いなさそうだ。僅かに可能性が残るとは言っても、お前は妖怪か、などという質問はおいそれとできない。それは笑い者になるのを避けるためという意味もあるが、世に生きる多くの人間の一部なのだとすれば、本来の意味でというよりは形容として受け取ってしまいそうだからだ。妖怪のような少女、と言われて良い気分をする者などいないし、繊細だと聞いている乙女心を傷つけることになればこちらが悪者になりかねない。本心から言えば、妖怪などとは全く無縁な、可愛らしい少女だと思っている。

 そんなことを俯きながら考えていると、不意にしゃがみこんだ蓮子と目線が合ってしまった。


「ふふっ……」


 その楽しそうな表情は、可愛らしい笑顔。

 思わず直視してしまい目を逸らそうと思ったが、体は正直だったようでしばし見つめ返してしまった。顔が赤くなっていないかという問題をやっと思い出して目を逸らしたものの、返ってきたのはおかしそうな忍び笑い。大丈夫かと思ったのもつかの間のことで、止めを刺された時音は顔が紅潮するのを抑えられない。

 そんな蓮子のあどけなさに篭絡されたわけでは決してないが、と胸中で十回は繰り返してから、時音は雑念を振り払うように言った。


「わかった、わかったよ。お前は怪しい者じゃない、普通の学生だ」


 時音がため息混じりに言いながら札を懐に納めると、蓮子は満足したように頷いた。


「それで、そうなるとあの楓を動かしていたのはお前だったんだな?」


 また笑われてしまわないように、仕業、という言葉を使うのは避けた。

 

「うん、そう。どうやってたか、知りたい?」


 今度は白い歯を見せて、意地悪げな笑み。

 表情豊かだな、という感想を胸中で述べただけで彼女の愛嬌なのか腹が立つようなことはなかった。


「魅力的な提案だが、俺は別のことを知りたいんでな」

「むー。……うん、まあ、いいよ」


 納得するかしないか、といった感じで眉根を顰めて迷っていたようだが、やがて納得したようだった。聞いてくるのをよほど期待していたのか、とても残念そうだ。一見しただけでは分かりそうになかったし、仕掛けにはけっこうな自信があったらしい。

 そんな蓮子を見ているとやはり聞いたほうが良かったのかと思い直してしまうが、時音は自分を戒めるようにして一つ咳払いをして、場の空気を締めなおした。

 蓮子の今までの反応を考えて、驚かそうとしてきたことは間違いないのだろう。驚いて慌てふためくような無様は見せなかったはずだし、これに関してはあまり怒ることはない。大袈裟だと笑われたのは心外だったが、その楓を妖怪だと思っていたことがばれていなければ、蓮子の笑いのツボが理解できなかったということだろう。蓮子が社会の常識に適合している人間なら、こちらから教えない限りは気が付かないはずだ。

 問題は、どうして蓮子がそんなことをしたのか、ということ。

 どうも蓮子がただ驚かせるのを目的にして行動したのだとは思えない。少なくともこちらから蓮子に話しかけたことは一度もないし、顔を見たことすら初めてなのだが、そんな初対面の人間に考えなしに驚かせるというのはちょっと考えにくいのだ。仕掛けがどんなものであるにせよ、そこに少なくない労力がかかっていることは違いないだろうし、だとすればなおさら他に理由がある気がしてならない。

 教えてくれるのかどうかは分からないが、とにかくそれを知るべきだと考えて、時音は口を開いた。


「お前がどうしてこんなことをしたのか、理由を教えてくれ」


それを聞くと、蓮子は至極当然といった感じで頷いてから、言葉を返した。


「最初は普通に話しかけようと思っていたの。けど、名案を思いついちゃってね」

「名案?」

「そう。あの方法を使って、あなたの反応を調べようと思って」


 そんなことをして何の意味があるのか、と思った。

 予想される反応としては普通に驚くか、怖くて逃げ出すか、様子を見るか、といったところだろうが、わかることと言えばその人間の肝の太さや性格といった心理テストのようなものだ。たとえそれらが分かったとしても、ただ話しかけるだけが目的なら必要がないし、今後関係を築いていくのだとしたら悪影響になることもある。中には怒らずに笑って済ませてくれるような人もいるかもしれないが、いたずらを仕掛けられて気分が良くなる人はそんなにいないだろう。

 理由が分からず考え込んでいると、それに見かねたのか蓮子がヒントを出してくれた。


「大方、あなたの考えてることは当たらずとも遠からずだと思う。問題は、相手の気分を害するリスクを背負ってまでする必要があったこと」

「ふむ……」


 蓮子が考えていることを当てることができたのは、簡単に思いつく答えだとある程度予測できていたからだろう。

 リスクを背負うのだとしたら、蓮子にとってはそれだけ確認しなければならないか、確認したい事実でなければならない。蓮子がそのリスクをどれほどの大きさと考えているかは分からないが、リスクに対して見返りがそれ以下ということは考えにくい。

 そして、蓮子の反応から推察すると、そのリスクに見合うとまではいかなくとも、何かしらの結果が手に入ったということだ。つまり蓮子は今までの時音の言動や態度からその結果が正しいと導き出したわけだから、それがそのままヒントになっているということになる。


「あ……」


 そこで、ようやく思いついた。

 思いついたと言うよりは、ごく自然すぎて忘れていたものを思い出した、といったほうがいいかもしれない。

 時音が妖怪だと思って警戒していたのを、蓮子が知っていたかもしれないということだ。思えば、蓮子にした最初の質問で突然笑い出したのも、妖怪だと思っていたことが馬鹿らしかったというのが理由でもおかしくはない。驚くでもなく怒るでもなく、あまりに真剣に聞いていたから笑ったのだと思っていたのだが、よもやそんなことだとは思わなかった。蓮子が姿を見せる前もこちらを窺っていたはずだから、恐る恐る近づいていく様子を見られていたかもしれない。それに振り向きざまに札を喉もとに突きつけるなんていうこともしてしまった。見た目こそただの紙に文様が書いてあるだけだが、何も知らない人間からすればおかしなことをしているとしか思われない。

 蓮子にとっての時音の気分を害するというリスクは大したものではなく、馬鹿にする以上の価値はなかったということだろうか。驚かせてからかうのが目的ではないと思っていたのはまったくの勘違いで、人を見る目がなかった時音が愚かにも騙されていたということだろうか。


「わかったー?」 

「いや……」


 蓮子が催促をしてきたが、右から左だった。

 まだ、そうと決まったわけではない。楓のことを妖怪だと思っていた、とは公言していないし、それにたどり着いてしまうような言動を取った覚えはないのだ。それに、蓮子が妖怪のことを知らない可能性もある。

 馬鹿にするためのいたずらだったのか、と言えば、それは自らが愚かな行動をしていたことを認めることになるし、違った場合はそれらが無駄になってしまう。

 ならば早まって答えを出すよりも、蓮子から何かしらヒントをもらってからでもいいだろう。

 

「それじゃあ、あなたはあの楓を何だと思ってたの?」


 蓮子の表情は、いつの間にか意地悪げな笑みに変わっていた。


「え……」

 

 唖然としたまま、声が出なかった。

 蓮子は、妖怪だと思っていたという事実を掴んでいたのだ。どこでそんな失態を犯したのかはわからないが、きっと今更考えたところで無駄だろう。ならばやはり、蓮子の目的は最初からただのいたずらであり、初対面の人間に無礼を働くようなどうしようもないやつだったというわけか。

 そう考えると、腹が立つと同時に悲しくもあった。腹が立つのは蓮子に対してというよりも、それを見抜くことができなかった自分自身。悲しかったのは、僅かながら蓮子と仲良くなれそうだと期待したが叶わなかったこと。

 もう二度と顔を合わせることもないだろうから、最後は潔く負けを認めて立ち去ったほうがいい。

 そう考えて、時音は観念したようにため息をついてから、言った。


「妖怪だと思っていた」


 きっと、何だそれはと見ているこっちまで釣られそうなほど大笑いしてくれるだろう。

 楓が揺れ動いているのを見て妖怪だと思うなど、この大学の全学生の意見を集めても正気の沙汰とは思えないと言われるに違いない。実際に妖怪がいることを信じていたりと周りとはちょっと異なる認識をしているのだから、笑われても仕方のないことだ。

 世界は幻想を受け入れない。そんな分かりきったことは前々から受け入れているはずなのに、どうして幾度も同じ過ちを繰り返してしまうのだろうか。


「本当、に……?」


 蓮子は呆けた表情をしているだけで、笑ってはいなかった。だが、あまりに突拍子のない言葉に困惑しているだけなのだろう。

 自ら処刑台に赴くような理不尽な悔しさを感じながら、時音は現実を突きつけるように言葉を返した。


「ああ、本当だ」

 

 ぎり、と歯軋りをする音が蓮子まで届いたかどうかはわからない。もうこれ以上言わせないでくれ、という半ば懇願にも似た思いが、そこには滲んでいた。

 今すぐにでも蓮子の前から早足で立ち去って、一分でも早く自宅に引きこもりたい気分だ。

 しかし、硬直状態にあった蓮子の反応は意外にして予想外すぎるものだった。

 

「やった……やったああああああ!!」

「え」


 果たしてそんな言葉が出たのかどうか、自分では判断がつかなかった。それは蓮子から出た思わず飛びのいてしまうほど大きな声にかき消されたのかもしれないし、目の前の状況に困惑していたからかもしれない。妖怪が襲ってきたと思って札を突きつけたら蓮子がいた、というさっきの状況よりもわけがわからなかった。

 蓮子の意地悪げな笑みは最初からなかったかのように消えうせ、溢れるのではないかというほどの満面の笑みに変わっていた。あまりに嬉しいのか、さっきまではしゃがんでいたというのに立ち上がっていて、幼子よろしくぴょんぴょんと飛び跳ねている。さすがにずれてしまうのか片手で帽子を押さえていたが、空いた片手は喜びを噛み締めるようにしっかりと握られていた。

 

「ちょ、ちょっとまて。何でお前が喜ぶんだ?」


混乱する頭を冷やすように額に手を当てながら、とりあえず落ち着けと蓮子のほうへ静止の合図を送る。


「思わぬ事実が掴めたからよ!嬉しいに決まってるじゃない!」


 飛び跳ねることこそやめたものの、今度はびし、と人差し指を向けて、決め台詞のごとく言ってくる。

 その顔は、先ほどの喜色満面の笑みとは少し変わって、自信に満ちた笑みだった。言葉の意味も蓮子の態度もさっぱり意味がわからないのに、その姿だけは見るものを無理やり納得させてしまうような迫力を感じてしまう。


「ははあ……。すまんが、全く意味がわからない。その事実とお前が考えていた目的に、いったい何の関係があるんだ?」


 あっさりと降参したのは、蓮子の奇怪な態度と意味不明な言動に気疲れしてしまったからだろう。蓮子がからかうでもなく貶すでもなく、喜んでくれたというのは事実として良かったのだが、それにしたって前後の話が繋がらない。


「うん。まあ、そろそろ答えあわせをしようか」


 鼻歌が聞こえそうなほどご機嫌な声で、蓮子は言った。

 一遍たりとも聞き逃すまいと、時音は無言で首肯を返して耳を傾ける。


「私がいたずらを仕掛けた理由は二つ。一つはあなたの性格や行動を見るための心理テスト。もう一つは、あなたがあの楓をどう思うかについて、調べること」


 前の部分は、いくらか予想できていたことだったので問題ない。後の部分は、時音が妖怪だと思っていたという事実のことだろう。


「それは分かった。だが、お前がどうして俺にそんなことをしたのかの答えにはなっていないな」


 その言葉には、すぐには答えてくれなかった。

 僅かに躊躇うようにこちらから視線を外して、どこを見るともなしに遠くを見つめている。何か昔のことを思い出しているのかと思ったのだが、違ったようだ。

 蓮子の口元には、僅かに弧が描かれていた。

 それが照れ隠しだと気がついたときには、蓮子はふっと後ろを振り返って、こちらから顔が見えないようにしてしまった。


「……仲間探し、かなあ」

「――――っ!」


 心の中で、何かが弾ける音がした。声にならない衝撃とは、こういうことを言うのだろうか。今までに出来ていた不可解な全ての点が、まっすぐな一本の線で繋がっていくような感覚。弾けたのは、きっと片時も離れることのなかった、忘れることのなかった喪失感だ。それを突き破るようにして、暗闇の中に輝く一筋の光が差し込むような、感動。言葉の意味を考えるよりも先に、頭が勝手に理解をしている。

 蓮子のたった一言の言葉には、時音をそうさせるだけの力が込められていた。

 仲間探しとは、すなわち妖怪を信じいるような人間を探していたということだ。ならば、そこから導き出される結論は考えるまでもないくらいひどくあっさりとしている。だが、石橋を叩いて渡るような性格ゆえにか時音はその事実をすんなり受け入れることはできず、どうしても蓮子自身から言質を取りたかった。

 だから、こんな質問をしたのはさほど意識してのものではなかっただろう。


「お前は妖怪を信じているというのか?」


 背中越しに、力強く問いかける。真実であってくれ、と懇願するように。

 初めて見た蓮子の背中は、小さいはずなのにとても頼もしく、見上げた空よりも大きなものに見えた。


「――うん、信じてる」


 そんな言葉は、振り向きざまに。

 蓮子の笑顔が眩しいくらい輝いて見えたのは、紅の日の光を受けていたからではないだろう。

 そんな態度は一見すると子供染みたものに見えるのに、時音にとってはこれ以上ないくらいに説得力のあるものだった。包まれていた不安が一気に解消され、代わりに安堵と喜びが体の中に流入してくる。それは伸びをしたときのように全身に血が駆け巡る感覚がして、心地が良いものだった。

 

「……いや、そうか。信じられないようなことだが、世界は意外と狭いのかもな」


 はあ、と溜め息をついた。だが、さっきまでの負の感情はそこにはなく、誰も知ることがなかった秘境を発見したときのような、感嘆の溜め息だった。

 二十年余の人生のなかで、妖怪を信じていると公言した人は一人しかいない。それは懐に納めてある札を作ってくれた人であり、時音とは切っては離せない縁のあるこの大学の教授のことだ。

 世界は広いのだから、そんな人がもう何人かいてもおかしくはないだろうとは思っていたのだが、それが遠く離れた場所ではなく、この大学という身近な場所にいたことには驚きを隠せなかった。


「私も、まさか本当に当たるとは思わなかったよ」


 肩をすくめて首を横に振る様は、予想しなかった事実に呆れたというよりも、驚きと喜びの余韻を噛み締めているようだった。きっと、蓮子も似たような気持ちを抱いているのだろう。

 そう考えるとより一層うれしくなって、早速いろいろ話をしてみたくなるのだが、それは寸でのところで飲み込んだ。

 まだ、解決していない疑問がいくつかあるからだ。

 既に自らで考察することに関しては負けを認めてしまったし、蓮子に対して警戒する必要もなくなったわけだから、この際洗いざらい聞いてしまったほうが気分もすっきりするだろう。


「……じゃあ、それまでは何だと思ってたんだ?」


 蓮子が妖怪だと確信できていなかったのだとしたら、楓のことを何だと思っていたのか、という質問で意地悪げな笑みをする理由がちょっとよくわからない。それに妖怪だと勘違いすることをわずかでも期待していたというのなら、最初の時音の反応を見てからかう必要はないだろう。


「私のことを不審者扱いしてるのかと思ってた。僅かの可能性にかけてるぐらいだから、まさかと思って疑っちゃったのよね」


 そうなると、話は繋がった。

 蓮子の言うとおり、楓によくわからない仕掛けをして人を驚かすなど、表面的に見れば不審という言葉がこれ以上ないくらいぴったりと当てはまる。


「ああ……なるほどな。確かに不審者ではあるな」


 苦笑いをしつつ言うと、何か思うところがあったのか、蓮子は申し訳なさそうな顔をして俯き加減にこちらを見た。


「うぅ……もしかして、怒ってる?」


 その言葉には、どう答えるべきか少し迷った。どちらかと言われれば、怒っていない。少しやり方が慎重すぎるとは思うが、妖怪を信じているかいないかなどおいそれと人に聞けたことではないし、理由としては納得できる。

 もし時音が蓮子の立場だったとしたら、いたずらを仕掛けるか否かは別にして、直接聞くようなことはせずに他の手段を取っていたはずだ。

 だが、かといっていたずらを良しとしたくないという気持ちもある。

 蓮子が純粋にいたずらを楽しんでいたのかどうかは不明だが、少なからず楽しんでいた部分はあるのだろう。それは理由が如何にせよ時音にとって面白くないことには変わりないし、子供染みてはいるが仕返ししたい気分にもなる。

 だから、少し捻ってこう言った。


「複雑な心境だな」


 その言葉に、蓮子は少し考えるふうにして顎に手を当てた。さっきから薄々と思っていたことだが、理知的な顔立ちのせいなのか、そんな様子はとても様になっている。これが立っている状態ではなく座っている状態だったなら、某有名な銅像と肩を並べるほどの芸術作品が出来るに違いない。

 そんな芸術的な蓮子を一人鑑賞していると、「うーん」と唸り出してだんだん声を小さくしていって、そろそろ息が続かないんじゃないかと心配になったところで「あ」と声を挙げた。

 だんだん空が暗くなり始めたなと思いながら、何を言い出すのかと若干の期待を込める。


「奇怪な現象に怯むことなく立ち向かっていたのは、格好良かったよ。特に、最後の振り向き様に紙ぺらを突きつけるところは」


 本音で言っているのか棒読みなのか、微妙な抑揚と真顔からはちょっと判断が難しい。紙ぺらではないのだが、という説明の言葉は真偽を考えるのに忙しくて流されてしまった。そんなことに対して真剣になるのは傍から見れば笑われそうなものだが、この問題は時音にとって己の矜持を守るよりも重要なことなのだ。何せ生まれてこの方、記憶の限りでは異性に「格好良い」という褒め言葉をもらった経験は一度もないのだから。

 だが、そんな時音の懸命の思考は蓮子の一言により一瞬で水の泡になる。


「……これでいい?」

「その言葉がなければなっ!」


 思わず、全力で突っ込んでしまった。その時こそ素直に笑ってくれたからいいものの、余計な確認をしたときは何故か真顔なのだから、蓮子の真意がわかりかねる。許しを乞うのに誉め言葉を使うなど、喜べばいいのか怒ればいいのか、さっきよりもよほど複雑な心境になってしまった。もしかすると、その理知的な顔立ちの裏では何か良からぬことを常時考えているのだろうか。


「でも、そう思ったのは本当だよ?」


 小首をかしげて、今度は屈託のない笑顔。


「あーはいはい。そりゃどうもありがとう」


 今さらそんなことを言われても、欠片も説得力がない。前の言葉さえなければ素直に受け取っていたかもしれないが、時既に遅しというもの。

 そうは考えていても内心ではちょっと残念だったかなと思うのだから、まったく馬鹿なことだと自分を罵りたくなってくる。

 蓮子はなげやりなお礼にちょっと不満そうな顔をしていたが、水掛け論になりそうだったのでこれ以上は否定しなかった。だが、そのままというのもあまり気持ちが良くないので、時音はそれとは関係のない、思ったそのままの言葉を伝えることにした。


「まあ、いたずらであることには変わりないが……仲間ができたことは嬉しく思うよ」


 さすがに後半の部分は目を合わせて言うほどの度胸がなくあらぬ方向に視線を逸らしてしまったが、気持ちは伝わったようだ。

 蓮子は不満げな表情を綺麗さっぱり消し去って、くすぐったそうな笑顔を浮かべた。


「えへへ……苦労した甲斐はあったかな」

「それは、いたずらの仕掛けのことか?」


 ちょっと見ただけではわからないような仕掛けを作るのは、思いの外苦労しそうだ。時音は机上論で物を動かすことはあっても、実際にそんな工作をすることはないので、どれほどのものなのかは想像がつかない。


「それもあるけどさ……実行するかどうかの判断に苦労した、かな」


 疲れ気味な顔でため息と共に言った蓮子の言葉は、その苦労を経験していない時音でもしみじみと気持ちが伝わってくる。

 どうしてだ、と一瞬聞きそうになったが、少し考えてみればすぐに思い当たるところがあった。蓮子のいたずらの目的は、妖怪に絞らないにしてもそういった化け物の類を信じているかどうかを知ることだ。それが当たっていたなら、多少文句は言われようと訳を話せば別段非難されることはないだろう。だが、その逆は話が別だ。本来の目的を話せば馬鹿にするか一笑に付すのは目にみえているので、唯のいたずらだったと白状するしかない。それで怒られたり、非難されたりするだけならまだマシだ。「こいつは見知らぬ人間に悪戯をしかける不躾で非道な輩だ」と悪意で要らぬ噂を流されたりしたら実に面倒なことになる。蓮子がそこまで考えているかどうかは不明だが、自身にとって不利益を被ることぐらいは分かっていたはずだ。

 蓮子が言っていたリスクという部分は、この辺りが掛かってくるのだろう。


「苦労をかけてすまないな」


 こんな風に謝るのも何だかおかしな気がしてつい苦笑いを浮かべてしまったが、それは蓮子も理解していたようで特別指摘されることはなく、「いいえ」と返すのみだった。

 その代わりと言った感じで、蓮子は言葉を続ける。


「あなたのことについては色々と調べさせてもらったんだけど、色々と面白い事実が掴めたよ」


 本人に気付かれないよう秘密裏に調べていたとしても、蓮子の話と合わせれば自然なことだと納得できる。結果を少しでも正確にしておきたいというのなら、下調べをするのが定石だ。

 ただ、蓮子が自分のことについてどこまで調べることができたのかは気になった。面白いと言うからには、それなりに実のある収穫だったのだろう。


「それは例えばどんな?」


 聞くと、蓮子は何から話したものかと視線を宙に漂わせてから、やがてこう言った。


「まずは基本的なところ。名前は神埼時音、年は二十。生年月日は……まあいいか。出生地は長野県の鬼無里で、十九のときに上京しこの大学の比較物理学科に入学した。現住所と通学路はいいとして……日々の日課ね。朝起きてからカーテンを開けて日差しをいっぱいに浴びた後、紅茶を淹れるために台所へ行く。出来上がったら本が散らばるパソコンデスクまで行き、朝のニュースを見ながら至福のひと時を過ごす。一通り読み終えたら、今日一日の食事はどうしようかとネットでレシピを見ながら悶々と考え始める。それから次は―――」

「おいちょっと待てっ!」


 前半の部分は良かったのに、突然あられもない私生活が晒されている現実に耐えられなくなったので、時音は静止の合図を送った。何と言っていいのかわからない状況で困惑しているのにも関わらず、蓮子は不思議そうな顔で時音を見つめている。


「どうかした?」

「どうしたもこうしたもないだろ。何でお前が俺の私生活を知ってるんだよ」

「それは、まあ……」


 と、言葉を濁しつつ黙り込んでしまう。

 蓮子にいたって男の私生活を知るために犯罪まがいの行為をするとはさすがに思えない。もしそれが事実なら、というのは蓮子のイメージが崩れるような気がしたのでちょっと考えたくなかった。

 問題はその情報元だ。言葉を濁すということは、その人物から口封じされているか、もしくは何か理由があって言うことのできない人物なのか。とはいっても時音は一人暮らしであり、私生活を垣間見れるような人物は時おり家にやってくる一人しかいないのだが。

 如何な理由があってもこれだけは答えてもらおうと鋭い視線を向けていると、やがて蓮子が観念したように言った。


「岡崎教授から教えてもらってね。……あ、もしかして何か期待した?」


 ニヤニヤした顔でのたまっている蓮子には、かぶっていた黒いハットを取ることで仕返しとした。「返してよー」と言いながら蓮子が取り返そうとするも、頭上高く掲げられたそれは身長差のせいで届かず、必死に爪先立ちで腕を伸ばしたり、飛び跳ねたりしている。

 それでもどこか楽しげな様子の蓮子を見ながら、時音は蓮子が口にした人物のことを考えていた。

 本名を岡崎夢美、この大学で物理学科の教授を務めている一人で、時おり自宅にやってくる一人だ。訳あって教授と学生という関係を超えているために、時音は教授よりも夢美と呼ぶほうが慣れている。その証拠が懐のお札であったり、自宅への訪問だったりするのだが、今の問題はそこではない。なぜ夢美が、一介の学生である蓮子に私生活の情報など提供したのか。がさつではあるが無駄な行動は一切しない人間であることは知っているから恐らく何らかの理由があるのだろうが、そんなことをして何の益になるのかちょっと見当がつかない。無理やり挙げてみるとすれば、夢美は蓮子と仲が良く妖怪を信じている云々の事情を知っていて、時音を紹介したかったから情報を提供した、といったところだろうか。それにしても、わざわざ私生活の情報など提供する意味がわからないが。

 と、一人悶々と考えていると、蓮子が下から顔を覗き込んできた。


「何で、って顔してる」

「まあ、流石にわかるよな」


 そう言って、疲れたのか抵抗をやめておとなしくなった蓮子にハットをかぶせると、蓮子はハットの位置を調整し始めた。

 意外にこだわるんだな、と思いながらその様子を眺めていると、そんな胸中を察したのかどうか、蓮子が僅かに笑みを浮かべてから言った。


「細かいことが気になるの。あなたの性格と同じでね」


 半強制的な心理テストを受けたばかりだったことを、言われてから思い出した。蓮子が言いたいのは身だしなみを気にするような性格、という意味ではなく、細かい疑問が気になるという意味だろう。ただ、そんなテストがなくとも、本人曰く似たような性格らしい蓮子なら、会話を交わすだけでも十分わかっていたことだろう。

 一つの疑問に対してあれこれと思考を巡らせるのは、楽しいからに他ならない。日常に溢れる些細な疑問の数々は、未だ見ぬ発見がそこに隠れているかもしれないという言わば希望の海のようなものだ。その海から誰も知りえなかったような世の真理を釣り上げた日には、さぞうまい飯が食えるに違いない。例え他の誰かが知っていようとも、集めた知識は自らの財産となるわけだから、得をすることがあっても損をするようなことはないだろう。ただ、古い知識は新しい知識に埋没して腐り果てていくので、保存方法はきちんと考えなければならない。


「俺は帽子の位置をいちいち気にしたりはしないがな」


 冗談めかして言うと、蓮子はおかしそうに笑った。


「くふふっ。自分の立ち位置は気にするのにね」

「…………」


 ぐうの音も出ない、というのはまさにこんな心境のことを言うのだろう。

 理知的な顔立ちの蓮子の目には、気付かないうちに見抜かれていたらしい。

 苦労して自分の力だけで疑問を解決すると、好奇心を満たしたときの達成感が大きいというのは事実だ。だが、そこに見栄が全くないのかと問われれば否定はできない。特に、蓮子という異性の前ならば無意識に見栄を張りたくもなってしまうもので、それを指摘されることは男として屈辱的なことだ。それを蓮子に言われてしまっては、反論したい気持ちがあってもどうしようもない。

 黙りこくってしまった時音を気遣うように、柔らかい笑みで蓮子は言った。


「私の前で見栄を張る必要はないよ。疑問に思ったことをすぐ口にするぐらいで、見損なったりはしない。それとも、あなたにとって私はそんなことも聞けないような赤の他人なの?」


 その言い方はずるい、と思った。

 お互いにおいそれと他人には言えないような事実を知って、少なからず繋がりができたと思ったところなのに、そんな言葉を肯定する理由など時音にはあるはずがない。

 

「そんなことは、ない」


 ゆっくりと、しかし意思が伝わるように首を横に振る。


「じゃあ、そうやってすぐに一人で考え込まない。考え込むのは、私に相談してからでも遅くはないでしょ?」


 声色は優しく、諭すように蓮子は言う。

 理知的な顔立ちの、恐らく頭もいいのだろう蓮子には、何でもお見通しのようだった。

 十センチは身長が低いだろう少女に、大の男が諭されている様は傍から見れば不思議な構図だが、時音はそんなことは気にしなかった。これ以上見栄を張るのは、それこそ蓮子に見損なわれ兼ねないと考えたからだ。蓮子のほうから、せっかく一歩こちらへ歩み寄ってくれたのだから、そこは素直に受け取っておくべきだろう。

 見栄を張るだけでなく、己が素直な気持ちになるのも大事だと言ったのは誰だったかなと思い返してみれば、夢美だった。昔から見栄っ張りなところは変わっていないようで、原因が何だったかは覚えていないが、今と似たような状況で諭されていた気がする。そして、謝罪するときはこんな風に言っていた。


「……そうだな。気を遣わせてしまって、すまない」


 素直にそう謝ると、蓮子は満足そうに頷いて、殊更明るい声で言った。

 

「うん。その代わり、次に気を遣ってもらうのは私の番だからね」

「……ああ、わかった」


 何でも見通していそうな蓮子に気を遣う機会など果たしてあるのだろうかと疑問の声が出そうだったが、とにかく頷いておいた。

 世の中に完璧な人間などいないのだから、蓮子も心のどこかで抱えている何かがあるのかもしれない。

 期待に添えられるかどうかは不明だが、そのときは全力を持って気を遣う所存だ。


「それで、教授がどうしてそんなことをしたのか、だっけ?」


 話題を変えたのは、これ以上辛気臭い話はしない、ということだろう。

 蓮子がそうするというのなら、気を遣われた以上こちらはそれに従うのがせめてもの意趣返しだ。

 時音はその意思を汲み取るように頷いてから、説明を始めた。


「そうだ。夢美が意味もなくそんなことをするとは思えなくてな」


 蓮子は夢美に聞いたときの状況を思い返しているのか、いったん視線をあらぬ方向に向けてから、考えを搾り出すようにゆっくりと言った。


「……たぶん、教授はあなたのことを私に知ってほしかったんじゃないかと思うよ」

「それは妖怪を信じているという、似たような考えを持っているからか?」


 蓮子は視線を時音に合わせてから、頷く。


「もっとも、それはあなたが妖怪を信じているという事実が発覚した後だからわかったことなんだけどね。教授は私の考えを理解してくれていたからなのか、あなたのことを聞いたら色々と話してくれた。……本当に楽しそうにね。想い人というよりは、自慢の息子のように」


 最後の部分は、含み笑い共に。

 それが単なる形容でないことは、時音にはすぐにわかった。教授と時音が築いている複雑な関係を、如実に表しているからだ。

 幼い頃に父親を失い、次に母親が床に伏したとき、同じ物理科学者で夢美と仲が良かった母親は、義母になることを頼んでくれたらしい。伝聞調なのは、母親が亡くなった後に夢美から告げられたことだからだ。当初こそ困惑気味の毎日を送っていたが、母親の頼みというのと夢美が良くしてくれたおかげもあって、時間が経つにつれて次第に慣れていった。むしろ、今では夢美に返しても返しきれない恩を感じているぐらいだ。


「そのことも、聞いたのか」

「細かい事情までは教えてもらえなかったけどね」


 やはり気になるところだったのか、蓮子は少し悔しそうな苦笑いを浮かべていた。

 残念だったなと同情する一方で、それはそうかとも思う。本来、夢美と時音の関係は公になれば色々と面倒な問題が起きるために、夢美は大学関係者や教育機関の目すら欺いてひた隠しにしてきた。大学の一教授がそんな権力を持っていることには驚きだったが、夢美はどこからそんな資金を持ってきたんだと思うほどの巨大な研究施設を地下に築いていたり、良く分からない実験器具や研究の成果と思われる品を大量に所持しているのが発覚して以来、それも自然なことだろうかと納得するようになっている。

 とかく権力者の夢美でもやはり面倒は嫌いなようなので、蓮子の頼みといっても公開できる情報には限度があったのだろう。

 これ以上話を続けると蓮子に根掘り葉掘り聞かれそうだったので、時音は早急に話題を切り替えることにした。


「他には、何か言ってたか?」

「昔、まだ上京する前の頃に、大きな事故にあったってこと。詳しいことは本人から直接聞けって言われた」


 それには、ちょっと驚いた。

 夢美と時音の関係を表すよりも、時音が最も他人には秘匿したい話であり、心の奥深くで抱えている問題だからだ。郷愁に駆られると思いだすことの多い古い記憶の断片で、今日も一度そのことで頭を抱えていた。こればかりはどうしようもないかと思う反面、何とかして解決したい気持ちもあり、未だに時音の中では整理がつかないでいる。

 夢美と他言無用と約束していたことなのだが、それを蓮子に話したということは、解決できるかもしれないという期待が含まれているからなのだろうか。それでも、一度取り付けた約束なのだから、事前に相談してほしかったとは思う。

 蓮子の最後の言葉は、後をどうするかは自分しだいという夢美のメッセージなのだろう。


「まあ、わかった。真意は夢美から聞くとするよ」


 何はともあれ、事情は本人から直接聞いたほうが早い。今日は時間的に遅いから研究棟にはいないかもしれないが、明日にでも聞いておけばいいだろう。

 

「教授にはそうやってすぐに聞くのね」


 蓮子が目を半分だけ開けて、不満そうな顔で聞いてくる。


「いや……こればっかりは好奇心の達成感以前に、早急に知らなきゃいけないことだからだ」


 いくらなるべく疑問を自分で解決したいという考えであったとしても、すべきこととすべきでないことぐらいの区別はついているつもりだ。飽く迄も趣味に近いものなので、時間と考える余裕があればそうするが、予断を許さない状況ではこれに習わないことが多かったりする。


「ふーん……」


 と口では言っているが、蓮子は不満を通り越して不機嫌な様子だった。

 何か機嫌を損ねるようなことを言ったのかどうか時音にはよくわからなかったが、現実はそうであると告げているようだ。蓮子の機嫌を直そうにも、まさか容姿を褒めたところでさして喜ばないだろうし、それ以前にそういう問題でもない気がする。とはいっても、蓮子に不機嫌になった原因を聞いたとしても答えてくれなさそうな雰囲気がしたので、時音は極めて現実的なことを言うのだった。


「それで、もうこんな時間なんだが……帰らなくても大丈夫か?」


 懐に入っていた携帯端末を取り出してみれば、時刻は既に十八時を回っていた。日の入りからはさほど時間は経っていないし、帰りの交通手段がなくなるような時刻ではないが、辺りはすっかり暗くなっている。広場にある照明の淡い光が、暗闇にたたずむ蛍のように頼りなく自身の周囲を照らし出していた。

 蓮子のいたずらの理由や動機は一通り聞き終えたし、自身の細かい身の上話や蓮子についての話は追々していけばいいので、引き際としてはちょうどいい頃合ではないだろうか。それに蓮子と話しているのは楽しいが、遅い時間に少女を見送るというのはちょっと気が引ける。時音自身は大学からさほど離れていないので徒歩でも十分たどり着けるのだが、蓮子の場合はそうもいかないだろう。

 そんな配慮に気付いたのか気付いていないのか、蓮子が不機嫌そうな顔を直してから口を開いた。


「私は大丈夫だけど……あなたは?」

「俺は問題ない」


 その言葉に、蓮子は少し悩む素振りを見せた。また顎に手を当てて考え込む芸術的な姿を見せてくれるのかと思いきや、違ったようだ。首が痛くなりそうなほど上に傾けて、空を仰いでいた。

 何かあるのだろうか、と蓮子に習って首をあげてみると、周囲の楓で円形に切り取られた空に淡く輝く星々が、粉砂糖をこぼしたみたいに散りばめられていた。天文学には明るくないので有名な星座と星の名前ぐらいしか分からないが、そんなことが気にならないくらいに綺麗な星空が広がっている。朝に見た天気予報ではちょうど満月の夜になっていたはずだが、生憎とまだ高度が低いのかここから見ることはできなかった。

 満月で星の光が見えなくなっても、今日ぐらいは一度拝みたいなと天頂を仰ぎながら考えていると、ぽん、と肩に手を置かれた。少し首が痛くなったのを手で抑えつつ、蓮子のほうへ視線を向ける。

 

「少し場所を変えて話したいんだけど、構わない?」

 

 耳元でささやくような、小さな声。

 その急な切り出しと話し方に困惑しながらも、特に問題はないので相槌を返す。


「別に、構わないが……」

「じゃ、来て」


 と短く言うと、蓮子はすたすたと広場を出る林道のほうへと歩いていってしまう。

 これといって早く歩いているわけではないはずなのにそう見えてしまうのは、ある種の暗闇に取り残されるという恐怖心からなのだろうか。


「お、おい待てって。急にどうしたんだ?」


 蓮子の背中が暗闇に呑まれて消える前に、急いで追いかける。


「色々あなたのことを知ったから。私のことも知ってもらおうと思ってね」


 隣に並んで歩いても、辺りが暗いために表情は見えなかったが、何となく楽しげな雰囲気であることは伝わってきた。

 蓮子の身の上話は、そんなに楽しいものなのだろうか。

 聞いたら、きっと行ってみればわかる、と言ってはぐらかされそうだが、ここは蓮子が気を遣ってくれたことを最大限活用させてもらおう。


「何を教えてもらえるんだ?」


 足元をすくわれないように注意しながら、横目で蓮子を見る。


「私のあられもない姿が公開されているサイト」

「…………」

「……いや、冗談だよ?」

「わかってるっての!」

「あ、もしかして期待した?したよね?」

「してねえ!」


 結局、何だかんだで足元をすくわれている。

 そこから目的地にたどり着くまで、くだらない水掛け論が夜の庭園に響くのだった。


クールで大胆不敵でありながら、少女のような可愛らしいところもある。そんな蓮子を表現したいのですが難しい。

小説を学んでいる途中なので、部分的に段落構成が間違っているかもしれませんがご容赦ください。

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