賄賂を受け取った男
賄賂を受け取るって悪いことですか?
その男の名前は、腹黒太郎。
公正取引委員だ。
その彼が今、裁判を受けていた。
容疑は、査察相手から賄賂を受け取ったというものであった。
検事が質問する。
「それでは、確認しますが、貴方は、三角物産に招待され、現金を受け取りましたね」
「ああ、受け取った」
即答する腹黒太郎に場がどよめき、検事は、勝利を確信しながら。
「その見返りとして、貴方は、査察に手心を加えた。間違いは、ありませんね」
しかし、腹黒太郎は、はっきりと答えた。
「査察に手心を加えた覚えは、一度も無い」
顔を引き攣らせる検事に腹黒太郎が言う。
「何を根拠にそんな事を言っている。三角物産の査察のどこに不十分な所があったのか説明してもらおうか」
検事が動揺をしながらも答える。
「しかし、現金を貰ったのは、確かなのですよね?」
腹黒太郎は、頷く。
「それは、間違いない」
それでようやく落ち着きを取り戻し検事が言う。
「賄賂を受け取っておいて、手心を加えていないなんて話は、通じませんよ」
それに対して腹黒太郎がおかしな顔をする。
「私は、賄賂を受け取ったつもりは、無いぞ」
今度こそ完全に検事が慌てる。
「何を訳の解らない事を言っているのですか! 現金を受け取っておいて、それが賄賂じゃなかったら何だって言うのですか!」
腹黒太郎は、淡々と答える。
「私が協力している募金への寄付だ。相手にもちゃんと確認した、私に渡したお金は、私が想像した通りの意味があるのかと。相手は、確かに私の想像した通りのお金だと答えた。だから、三角物産名義で募金を行った。その募金の名義は、当時の新聞にも載っているから確認しろ」
検事が苛立ちながら答える。
「そんなの、相手は、賄賂だと思っているに決まっているでは、ないですか!」
それに対して腹黒太郎が肩を竦ませて言う。
「そう思うのは、貴方の勝手。私は、私の考え通りですねとちゃんと確認し、相手も同意した。もしも問題があるとしたら、私の考えを確認しなかった三角物産だ。それでは、もう一度聞きますが、何を根拠に私が査察に手心を加えたというのだ? その証拠があるのだろうな」
黙る検事。
実際問題、そんな証拠は、無い。
査察自体は、それこそここまでやる必要あるのかというほど確りされていた。
検事も賄賂の件で全てを押し通すつもりだったのだが、こんな展開は、想定していなかったのだ。
「検察は、証拠も無いのに私の査察を疑ったのか?」
腹黒太郎の言葉に、口を紡ぐしかなかった。
その後、検察は、必死に腹黒太郎の賄賂を私腹した証拠を探そうとしたが、調べれば調べるほど、間違いなく募金された事が明確になり、査察も確りしたものだと解り、終いには、賄賂疑惑のソースが、賄賂を贈ったつもりがこれでもかというほど査察を受け、多くの利権を失った幹部の仕返しだった事が判明した。
それをもって腹黒太郎の無罪が証明された。
この一件を元に公正取引委員を辞める破目になった腹黒太郎は、後日、テレビでこの一件を聞かれて次のように答えた。
「万が一にもそれが賄賂だと解っていたとしても、賄賂を贈ってどうにかしようとする奴らに返すより、募金をした方がましだと考えただろう」
と答え、物議をかもす。
その後、腹黒太郎は、議員となったが、その後も黒い噂が絶えなかったが、同時にいくつ物、国民の為になる法案を成立させるのであった。
今の政治家を見るとつくづく思う。
悪いことをするなと言わない。
権力を持っているんだからそれを利用するのは、かまわないから、ちゃんと仕事をしろと。
昔の人間は、それがわかっていた。
悪い事もするが、ちゃんとそれ相当の成果をあげていたし、悪い事は、解らないように隠す術を身に着けていた。
それが、今の政治家は、父親達がそれをやっているのを見ていた所為で、それをするのが普通の事だと勘違いして、平然と権力の私的使用だけをしている。
親がやっていたから悪いという自覚も薄いから直ぐばれる。
簡単な悪いことだけを猿真似した政治家が多いのが今の政府だな。




