タダより高い物
情けは、人のためならずって言葉の意味を色々と考えてみました。
場末の酒場に二人の男が居た。
「いま困っているんだって?」
そう一人の男、小金井が親友の男性、根元に尋ねた。
「ああ、生活費にも困る有様だ」
暗い表情の根元に小金井は、一つの懐中時計を渡す。
「俺も余裕が無いが、これを売って、金にしろよ」
「そんな、それは、親の形見だろう!」
根元は、断るが、小金井は、笑顔で言う。
「親父も俺の親友の為なら喜んでくれるさ」
根元は、涙ながらに言う。
「ありがとう!」
それから数年の年月が経ったある日の話。
小金井が家に帰ると、そこには、妻子の死体が転がっていた。
「お前達!」
驚愕する小金井。
「お礼に来たぜ」
そう言って現れたのは、根元であった。
「お前、どうしてここに?」
困惑する小金井に根元が言った。
「言っただろう、お礼に来たんだよ。その二人を殺したのも俺だよ」
掴みかかる小金井。
「何で、そんな事をしたんだ! お前には、感謝される覚えがあっても恨まれる覚えは、ないぞ!」
それに対して根元が睨み返す。
「全て、お前が悪いんだ! 何れ買い戻そうとあの懐中時計を質屋に入れた。だがなお前がくれた懐中時計は、この世に一つだけの貴重品だった。質屋の亭主がそれに気付いて、その懐中時計を手に入れる為にヤクザを使って、俺達の家族をグチャグチャにしたんだ! お前があの懐中時計さえ渡さなければ、少なくとも俺達の家族があんな目に会う事は、無かったんだよ!」
「そんなの逆恨みじゃないか! それで、俺の家族を殺したのか!」
小金井の反論に根元が頷く。
「そうだ。少しでもあの懐中時計に関わった人間を皆殺しにしないと、俺の気がおさまらないんだよ!」
その目には、既に正気が無かった。
「お前も、死んでくれ!」
根元のナイフは、小金井の腹に突き刺さる。
ナイフが抜けると同時に大量の出血し、小金井は、床に倒れる。
死んだ妻子の姿がどんどん曖昧になっていく視界にうつる。
「何が、いけなかったって言うんだ……」
そのまま絶命する小金井。
タダより高い物が無い。
それを実体験した根元。
情けは、人の為ならず。
本来は、情けは、人の為にやるのでなく、回りまわって自分に戻ってくるという意味なのだが、今回の小金井は、情け以外の物が帰ってきました。
本人は、何が悪かったんだと言って居ますが、彼は、中途半端な善意を示した事が悪かったのです。
街角で募金した時、募金した人間は、良い事をしたという気分になると思いますが、実際にそうなのでしょうか?
そのお金は、正しく使われているのでしょうか?
もしかしたら、そのお金が悪い組織に流れ、違法な取引の資金になっていないでしょうか?
考え出したら限がありませんが、最低限、自分がやった事の結果を常に気をつけないといけないって事です。
逆に懐中時計を売れない場合もありました。
違法品でそれの出所を警察で尋問される可能性もあります。
善意の行動だからこそ、人は、その行動に責任をもたないといけない。
自分がやったことがちゃんと実になるのか確認して、初めて善意が成立するのです。
中途半端な善意では、逆に相手を困らせたりする事があるって事です。
ですが、善意をする事を怖がっては、いけません。
正しい善意なら、間違いなく回りまわって自分に恩恵が巡って来るのですから。
その上で大切なのは、話すこと、押し付けでない、お互いが納得できる行動をする、それが正しい行動なのでしょう。
明日のナージャってアニメには、資産家の青年が孤児院に大金を寄付するって話があります。
しかし、そのお金に孤児院の責任者が狂わされ、お金を持って雲隠れしてしまいます。
間違いなく悪いのは、孤児院の責任者ですが、青年にも罪があります。
お金には、それなりの意味があるのです、それを簡単に渡すのでなく、それをどう活用するかを一緒に考えてあげれば、こんな事には、ならなかったのでしょう。




