第一話「ハズレスキル≪確率操作≫」
やってみます。
人生は運ゲーだ。
そう言ったのは誰だったか。
少なくとも、高校二年生の俺――友田尾零は、そう思っていた。
テスト範囲はヤマを外し、ソシャゲのガチャは天井、コンビニくじは外れ、体育祭のリレーでは転倒。
ついでに今も、信号待ちしていた俺の真横に、トラックが突っ込んできている。
「……うわ、マジか」
誰かの悲鳴。
急ブレーキの音。
世界がスローモーションになる。
避けられない。
そう理解した瞬間――俺の視界は白く染まった。
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気づくと、石造りの大広間だった。
床には巨大な魔法陣。
周囲にはローブ姿の老人たち。
そして、玉座の前で豪華なマントを羽織った男が、重々しく口を開く。
「勇者召喚は成功した」
「……は?」
テンプレかよ。
俺を含め、五人の学生服姿の男女が辺りを見回していた。
泣きそうな女子。
興奮してる男子。
状況を理解できず固まる俺。
王様っぽい男が説明を始めた。
「魔王復活により世界は危機に瀕している。諸君には“勇者”として力を授けた」
きた。
異世界転移だ。
だが問題はここからだった。
神官が水晶を持ってきて、一人ずつスキルを確認していく。
「《聖剣術》!」
「おおっ!」
「《超速魔法》!」
「素晴らしい!」
周囲が盛り上がる。
どうやらガチ当たりを引いているらしい。
俺の番が来た。
水晶に手を置く。
一瞬、淡い光。
そして浮かび上がった文字は――
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【固有スキル:《確率操作》】
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……なんだそれ。
会場が静まり返る。
神官が眉をひそめた。
「聞いたことがありませんな」
「効果は?」
「……不明です」
えぇ……。
隣のイケメン男子が吹き出した。
「ハズレスキルじゃね?」
クラスでも中心だったタイプだ。
こういう状況でも順応が早い。
「名前だけなら強そうだけどなー」
「確率ってなんだよ、サイコロでも振るのか?」
笑いが起きる。
王様も露骨に興味を失っていた。
「……ふむ。戦闘向きではなさそうだな」
おい。
まだ何も分かってないだろ。
だが、俺自身もよく分からない。
頭の中に浮かぶ説明は、一文だけだった。
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【事象発生確率を微弱に変動させる】
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微弱。
終わった。
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三日後。
俺は王城を追い出されていた。
「最低限の金貨と装備は支給します」
そう言われて渡されたのは、ボロい革鎧と鉄剣一本。
他の勇者候補たちは城で訓練。
俺だけ国外追放寸前。
「まぁ、死なない程度に頑張れよ」
門番が鼻で笑う。
……クソが。
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王都を出て半日。
森の入口で、俺は猛烈に後悔していた。
「無理だろこれ……」
魔物とか聞いてない。
いや聞いてたけど。
現代日本の男子高校生にモンスター討伐なんかできるわけがない。
その時だった。
茂みが揺れる。
「グルルル……」
現れたのは、黒い狼。
ゲームでいう“初心者狩りモンスター”っぽいやつ。
だが、牙がデカい。
普通に怖い。
「ちょ、待っ――」
狼が飛びかかる。
反射的に剣を振る。
当然、素人剣術なんか当たるわけ――
ズルッ。
「……え?」
狼の足が滑った。
地面の小石につまずき、体勢が崩れる。
俺の剣が偶然その首筋に刺さった。
血が飛ぶ。
狼は痙攣し、そのまま動かなくなった。
「…………」
沈黙。
え?
勝った?
今の、完全にラッキーじゃ――
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【《確率操作》発動】
【対象:敵個体】
【転倒確率:0.4% → 12%】
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視界の端に、青白い文字が浮かぶ。
「……は?」
その瞬間。
頭の中で全てが繋がった。
確率を操作する。
つまり――
「運を、いじれるのか……?」
心臓が跳ねる。
もしそうなら。
もし本当に、世界の“偶然”を操れるなら。
この能力は――
「当たりじゃねぇか」
その時、森の奥で爆発音が響いた。
悲鳴。
誰かが戦っている。
「きゃあああっ!!」
女性の声。
俺は反射的に走り出していた。
木々を抜けた先。
そこには、巨大な赤熊に追い詰められた銀髪の少女がいた。
騎士らしき装備は壊れ、足から血を流している。
「来るな!! 死ぬぞ!!」
少女が叫ぶ。
だが、赤熊はすでに腕を振り上げていた。
間に合わない。
普通なら。
でも――
俺は笑った。
「いや、今日はツイてる気がする」
視界に文字が浮かぶ。
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【対象:上位魔獣】
【心臓発作発生確率:0.0001%】
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「――100%にできたり、するのか?」
次の瞬間。
ドクンッ!!
巨熊が突然胸を押さえ、絶叫した。
そして、そのまま崩れ落ちた。
ありがとうございました。




