表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチングアプリでマッチした相手は異世界の第三王女でした。〜召喚された最強クラフトマンは、崖っぷち小国を立て直して無双する〜  作者: 富益 啓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/26

第26話 カナンの初嫉妬

防柵づくりの翌日、村は妙に明るかった。


夜を無事に越えられたというだけで、人の顔つきはここまで変わるのかと湊は感心した。


朝食代わりに配られた野菜スープをすすっていると、昨日まで怯えた顔をしていた村人たちが、次々に声をかけてくる。


「ミナト様、この縄の結び方、もう一度教えてくれませんか」

「荷車の位置、うちの畑側でも応用できますか」

「昨夜のあれ、ほんとにすごかったです」


質問は全部、実務的だ。

それが逆に嬉しい。見世物扱いではなく、役立つ人間として見られている。


ただ、その“役立つ人間”に対する感謝が、若い娘たちのあいだでは妙に別方向へ転がっていた。


「異世界の職人様って、思ってたよりちゃんとしてるよね」

「ちゃんとしてるって何」

「もっと変な人かと」

「でも優しい」


聞こえてる。


湊は苦笑しながら、防柵の結束位置を直していた。

その後ろで、カナンの機嫌がだんだん悪くなっていく。


「結びはここ。引く方向そろえるとほどけにくいから」


「わあ、手きれいですね」


「職人だからね」


「異世界でもモテそう」


「それはどうだろう」


そこへ、どすん、と鈍い音が響いた。

カナンが荷木材を必要以上の勢いで地面へ置いたのだ。


村娘たちがびくっとする。


「作業の邪魔だ」

カナンが無愛想に言う。


「あ、ご、ごめんなさい」


娘たちは慌てて散っていった。


湊は唖然とする。


「いまの、ちょっと怖かったよ」


「事実を言っただけだ」


「いや絶対ちょっと機嫌悪いでしょ」


「悪くない」


悪い人の返しだった。


その様子を少し離れた位置から見ていたリゼリアが、ふっと目を細める。

何かを察した顔だ。


昼、村の広場で簡単な休憩を取っていると、村の娘が湊へ花を編んだ紐を差し出してきた。


「これ、お礼です」


「え、俺に?」


「はい。昨日、村を守ってくれたから」


素朴だが丁寧な手仕事だった。

受け取ろうとしたその瞬間、横からすっと白い手が伸びる。


「ありがとうございます」


リゼリアだった。

彼女はにこやかに礼を言い、その紐を湊の手ではなく、自分が受け取る。


村娘が目を瞬かせる。


「殿下?」


「彼はわたくしの大切な方ですので」


さらりと言った。


しかも否定の余地がない笑顔付きで。


湊は咳き込みそうになる。


「王女様、急にギア上げるのやめてもらっていい?」


「偽恋人ですから」


「便利ワードみたいに言う」


「……そうですね。でも、便利だから使えるのです」


カナンはそのやり取りを見て、さらに面白くなさそうな顔になった。


午後、防柵の補修位置を確認しに外周を歩いていると、カナンがぽつりと呟く。


「……軽率だ」


「何が?」


「お前が」


「俺?」


「……手を貸しすぎだ」


そこまで言って、彼女ははっとしたように口を閉じた。


湊は少しだけ考え、それから聞く。


「もしかして、妬いてる?」


「は?」


「いや、違うなら違うでいいんだけど、今の感じかなり――」


「違う!」


即答だった。

ただし声が少し大きい。


「……違う、が」


「が?」


「護衛対象の注意力が低いと困るだけだ」


「なるほど。じゃあ護衛対象に近づく女の子は全員排除で」


「そういう言い方をするな」


頬が少し赤い。

気づいていないなら、それはそれで相当分かりやすい。


その日の夕方、リゼリアがこっそり湊へ花紐を返してきた。


「はい」


「取り上げたままじゃないんだ」


「必要な牽制は終わりましたので」


「王女様、怖いなあ」


「でも、少し面白かったです」


そう言って笑う彼女の視線は、少し先で無愛想に剣の手入れをしているカナンへ向いていた。


湊もつられてそちらを見る。


S級冒険者は、いつも通り無表情を装っている。

けれどその耳が、ほんの少し赤いことに、リゼリアも湊も気づいていた。


毎日21時更新予定。お気に入り登録ぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ