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断罪された悪役令嬢ですが、“嘘を一つだけ混ぜたら”全部壊れました ~正しさは、簡単に裏返る~  作者: 空乃エリシア


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第二十一話 戻る理由

 ――戻る。


 そう言った。


 だから。


 戻るしかない。


 廊下を歩く。


 さっきよりも静かに。


 けれど。


 さっきよりも重く。


 足音が、自分のものじゃないみたいに響く。


 頭の中が、まだ整理できていない。


 正しさ。


 嘘。


 選択。


 全部が混ざっている。


 それでも。


 止まらない。


 止まれない。


「……ここ、でしたね」


 あの場所。


 レティシア様と、あの人がいた場所。


 扉の前で止まる。


 一瞬だけ。


 迷う。


 開けたら。


 戻れない気がする。


 でも。


 戻るって、言ったから。


 手を伸ばす。


 開ける。


「失礼します」


 中へ。


 そして。


 ――止まる。


 視線が合う。


 レティシア様。


 その隣に。


 アシュレイ。


 二人とも。


 動かない。


 ただ。


 見ている。


 わたしを。


「……おかえりなさい」


 先に口を開いたのは、レティシア様だった。


 静かに。


 まるで。


 最初から、ここに戻るとわかっていたみたいに。


「……戻りました」


 それしか言えない。


 それ以上は。


 まだ。


 言葉にならない。


「どうでしたの」


 問い。


 軽くはない。


 でも。


 責めてもいない。


 ただ。


 知りたい、というだけ。


「……見られていました」


 言葉を選ぶ。


 慎重に。


「わたしじゃなくて」


 少しだけ、間を置く。


「“選択”を」


 レティシア様の目が、わずかに細くなる。


 理解した顔。


「そう」


 短く。


 それだけ。


 でも。


 それで十分。


「それで」


 彼女は続ける。


「何を選びましたの」


 核心。


 逃げられない。


 でも。


 逃げたくない。


「……まだ、選んでいません」


 正直に言う。


 嘘はついていない。


 まだ。


「ですが」


 一歩、前へ。


 自分から。


 初めて。


「選ぶつもりです」


 その言葉で。


 空気が、少しだけ変わる。


 アシュレイが、わずかに目を細める。


 レティシア様は。


 動かない。


 ただ。


 見ている。


「何を」


 問い。


 短い。


「……どちらにもなれる、と言われました」


 リュシアンの言葉。


 そのまま。


「だから」


 息を一つ。


 整える。


「どちらになるか、決めます」


 それは。


 宣言。


 逃げではない。


 その場で。


 決めるということ。


 レティシア様は、少しだけ考えるように目を伏せた。


 ほんの一瞬。


 そして。


「いいでしょう」


 顔を上げる。


 まっすぐに。


「では、その前に一つ」


 一歩、近づく。


 距離が縮まる。


 逃げられない距離。


「あなたに、もう一度だけ選ばせます」


 心臓が、強く鳴る。


 また。


 選択。


 でも。


 今度は。


 逃げない。


「……何を」


「簡単ですわ」


 レティシア様は、微笑む。


 優しくはない。


 でも。


 冷たくもない。


「先ほどの続きです」


 間。


「嘘をつきなさい」


 その言葉で。


 世界が、少しだけ揺れる。


 でも。


 今度は。


 崩れない。


「……どんな」


「あなたが見たこと」


 彼女は言う。


「それを、“少しだけ”変える」


 同じ言葉。


 でも。


 意味が違う。


 今は。


 理解できる。


 それが。


 ただの嘘じゃないこと。


 構造を壊すための。


 選択だということ。


「……それをすれば」


 わたしは聞く。


「何が変わりますか」


「すべてですわ」


 即答。


 迷いなく。


「あなたの立場も」


 間。


「この断罪も」


 そして。


「わたくしとの関係も」


 最後の一言が。


 一番重い。


 関係。


 それは。


 もう。


 他人ではいられないということ。


 共犯。


 あるいは。


 敵。


 どちらか。


 沈黙。


 長い。


 でも。


 今回は。


 逃げない。


 考える。


 自分で。


 初めて。


 ちゃんと。


「……わたしは」


 口を開く。


 震えはない。


 少しだけ。


 覚悟がある。


「嘘をつきます」


 その一言で。


 何かが決まる。


 戻れない。


 でも。


 それでいい。


 レティシア様が、わずかに笑う。


 満足ではない。


 確認。


 それだけ。


「では」


 彼女は言う。


「ここからは、共犯ですわね」


 その言葉で。


 胸が、少しだけ痛くなる。


 でも。


 嫌じゃない。


 むしろ。


 納得している。


 アシュレイが、小さく笑った。


「ようこそ」


 軽く。


 でも。


 意味は重い。


 わたしは、少しだけ息を吐いた。


 ――もう。


 戻れない。


 でも。


 進むしかない。


 それを。


 自分で選んだから。

ミレイユがついに一歩踏み込みました。


ここから関係は「戻れない形」に変わります。

そして、次はその代償が来ます。


ここまで面白いと感じていただけたら、ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

次は“嘘の結果”です。

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