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前向きに‼レジ業務体験記  作者: 登本


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29. 7月 気になる客2 夫婦

 ムシムシする。今日も制汗剤を塗ってガンバるぞ。汗を止めるのだ。

 やる気、元気、根気。

 暑い、身体が加湿器になった気がする。


 そんな週末に、よく見かける客が来た。

 夫婦で手をギュッツと、毎回つないでいる。仲が良いのだ。歳は私よりも、気持ち上かな⁇ぐらいの年齢で、旦那サンは、少し小太り気味で、奥さんはすご〜く痩せてる。歩く事も困難で時々車椅子で来店することもある。さらに、奥さんはきっと余命が数年で末期の病だと思う。本当に枯れ枝のような人なのだ。また、私は、奥さんの顔を見た瞬間、泣きそうになった日もある。長生き出来ますように。と願った日だってあるのだ。

 とにかく、旦那サンは奥さんを本当に大事に丁寧に、話しを聞いて、さらに優しく答えて、接している。献身的な介護に、尊敬の念が湧き、旦那サンの優しい慈愛の目がとても印象的なのだ。買い物中もずーっと、ずーっと、奥さんを見つめているのだ。歳を重ねても、奥さんの事が、昔のままきっと大好きなのだ。

 毎回、買う商品は、チョット豪華な寿司や惣菜だ。想像するに、一次退院中で、家族の時間を満喫して、夫婦、水入らずで過ごす予定なんだ。

 余命があと、わずかだから、1日1日を大事に過ごしているんだ…

 私はずーっと、今日までそう思っていたのだ。


 今日、隣のレジの花子サンが、真剣な顔で「さっきの夫婦知ってる⁇」

 と聞いて来た。

「はい、もちろんです。奥さんは余命があるんですよね!⁇見かけるたびに、心苦しいンです。」

「ハア⁇ははははは(笑)何言ってんの⁇どうしてそうなるの⁇」

「違うんですか?」

「違う。違う。ははははは(笑)登坂サンきっと知らないから、これからは、気を付けてよ‼」

 花子サンから、教えてもらった事は、奥サンはアルコール中毒で、ただ今、禁酒中!

 もし、お店に一人でアルコール飲料を買いに来ても売るな‼って事。数カ月前に、旦那サンがお店まで来て頼んだ事。

 今まで、知らなかった。ずーっと、ずーっと、余命が…あると思ってた。あの、手をギュッツとつないでたのは、逃げるなコラー‼って事で、あの優しい目は、まさかの監視⁇じゃあ、囁きながら話している事は⁇ただの内緒話⁇週末のお寿司やオードブルは⁇手抜き料理か?


 ふーん、そうか、そうか、知らなかった。私の理想の夫婦が…。でも、あれから、見かけるたび、禁酒頑張れ‼って応援しているのだ。


 私も、明日もガンバるから。

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