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第128章:鋼鉄の帰還と、プレハブの守護神


地下の暴走


ゴールデンウィークが明けた、5月のある日。 俺、古田降太は、いつものように裏世界の園芸部でお茶を飲んでいた。

「平和ですねぇ……」

「そうね。加藤先生も地下で静かにしてるし」

櫻子先輩が微笑んだ瞬間、ズズズ……と床が微振動を始めた。

「地震?」

「いいえ、この世界に自然災害はないわ。震源地は……地下!?」

ドォォォォン!!

爆発音が響き、通気口から七色の煙が噴き出した。

「先生!?」

俺たちは慌てて地下への階段を駆け下りた。


融合するガラクタ


配管室のドアを開けると、そこは光の渦に包まれていた。 部屋の中央で、先生が集めた「七不思議の残骸ガラクタ」が、強力な磁場に引かれるように空中に浮き上がり、回転している。

人体模型のパーツがカシャカシャと組み合わさる。

多言語ラジオの真空管が赤く輝き、鼓動のような音を立てる。

ナルシストの鏡の破片が、煌めく装甲板へと変化する。

空き缶プレス機のアームが、剛腕を形成する。

そして、その中心には、8インチフロッピー「コア」を握りしめた、加藤先生(霊体)がいた。

「うおおおっ!? なんだこれは! 体が引っ張られる!」

「先生! 離れてください!」

「ダメだ! 吸い込まれ……ぐわぁぁぁ!!」

カッ!!

強烈な閃光が走り、俺たちは目を覆った。 光の中で、先生の魂がデータ(OS)となり、ガラクタの集合体へとインストールされていく。

『SYSTEM: KATO_OS... BOOTING...』

無機質な電子音が響き渡り、光が収束した。


メカ校長、爆誕


そこに立っていたのは、もう幽霊ではなかった。 身長2メートル超。 人体模型の筋肉美をベースに、鏡の装甲を纏い、胸部には真空管が赤々と燃えるリアクター。 右腕にはプレス機の油圧アーム、背中には野球のバット(アンテナ?)を背負った、鋼鉄の巨人。

「……ふん」

巨人が動いた。 その目は、サングラスのような黒いバイザーで覆われている。

「せ、先生……ですか?」

俺が恐る恐る聞くと、巨人はバイザーをクイッと上げた(サングラスをずらす仕草)。 その下にあるのは、間違いなく加藤先生の、ニヒルで冒険心に満ちた眼光(LED発光)だった。

『おう。待たせたな、少年』

スピーカー(ラジオ)から、重低音の効いたイケボが響く。

「な、ななな……」

「なんと! 体がある! しかも、生前より調子がいいぞ!」

先生は自分の鋼鉄の腕を見下ろし、グーパーと握りしめた。 油圧シリンダーがプシューと音を立てる。

「力が……みなぎるッ!!」

ドゴォッ!!

先生が軽く壁を殴ると、宇多川先輩の絵によって「鉄壁」と化していたはずの壁に、風穴が開いた。 物理と霊力が融合した、規格外のパワーだ。


次元突破


「櫻子! 少年! 俺は行くぞ!」

「えっ、どこへ!?」

「決まっている! 『現世』だ!」

先生は天井(現世の地面)を見上げた。

「この体なら、結界ごとき突き破れる! 私はまだ、あのプレハブ小屋でやり残した仕事(昼寝とか)があるんだ!」

「ちょ、待っ……!」

止める間もなかった。 先生は膝を曲げ、ロケットのように跳躍した。

「マッスル・ディメンション・ブレイカー!!」

ズガァァァァァァン!!!!

天井が砕け散り、空間そのものに大穴が開いた。 先生の姿が、光の彼方へと消えていく。

「……行っちゃった」

「……元気ねぇ」

取り残された俺と櫻子先輩は、ぽっかりと開いた天井を見上げて呆然としていた。


プレハブの主、帰還


現実世界。放課後の校庭。 サッカー部や野球部が練習に励む中、校庭の隅にある「プレハブ小屋(旧校長室)」の上空に、雷のような光が走った。

ドスンッ!!

地響きと共に、巨大な物体が落下してきた。 土煙が晴れると、そこには鋼鉄の巨人が仁王立ちしていた。

「な、なんだアレ!?」 「ロボット!? どこから降ってきた!?」 「宇宙人か!?」

騒然とする生徒たち。部活動が止まり、校舎の窓からも生徒たちが顔を出す。 パニック寸前だ。

遅れて駆けつけた俺(屋上のドアから戻ってきた)は、群衆をかき分けて前に出た。 これはマズい。完全にアウトだ。

「ま、待てみんな! 落ち着いてくれ!」

俺は必死に声を張り上げた。 1年生の時の文化祭(第52章)、付喪神が暴れた時に使った「あの嘘」を、もう一度使うしかない!

「こ、これは……ボランティア部と科学部が合同制作した、『加藤校長追悼モニュメント・ロボ』だ!」

「えっ、ロボット?」

「そう! 校長先生の遺志を継いで、学校を見守るために作ったんだ! 最新のAIと、宇多川先輩(伝説のOB)のデザイン監修が入ってるから、こんなにリアルなんだよ!」

俺の苦しい言い訳に、生徒たちがざわつく。

「すげぇ……さすが宇多川先輩」 「校長先生への愛が重すぎるだろ」 「動いたぞ? すげぇ技術力だな」

生徒たちは、かつて様々な怪現象(七不思議)を受け入れてきた猛者たちだ。 「古田が言うならそうなんだろう」「ウチの学校ならありえる」という空気になり、奇跡的に納得し始めた。

『……ふぅ。騒がしいな』

その時、巨人がプレハブ小屋のドアをガチャリと開け、中に入っていった。 ソファにドカッと座り(スプリングが悲鳴を上げた)、窓から生徒たちに向かって手を振る。

「うおお! 校長ロボが手を振った!」 「すげぇ! リアル!」

生徒たちが歓声を上げて手を振り返す。 俺はへなへなとその場に座り込んだ。

「……なんとかなった……のか?」

死んで悲しんだのも束の間。 加藤校長は、「メカ校長(高性能モニュメント)」として、以前よりも数倍タフに、そして騒々しく、現世に帰還を果たしたのだった。

これより、3年生の学校生活は、この鋼鉄の守護神に見守られながら進むことになる。


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