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第123章:受け継がれる紅茶と、空き缶プレスの重み


ボランティア部の危機


2年生の3月。卒業シーズン。 ボランティア部の部室(家庭科室の端)は、いつになく深刻な空気に包まれていた。

「……というわけで、来年度の部員数が規定ギリギリですわ」

3年生の本田キティ部長が、活動日誌を閉じながら言った。 現在、3年生(キティ、溝渕、宇多川)が抜けると、残る部員は俺(古田降太)と、1年の安倍清和、そして幽霊部員になりかけの赤城烈兎(野球部兼任)だけだ。

「廃部の危機、ですね」

「ええ。ですが、この部は無くすわけにはいきません。……古田様」

キティ先輩は、真剣な眼差しで俺を見た。

「次期部長は、貴方に託します」

「俺が、部長ですか?」

「貴方なら大丈夫です。この1年、数々のトラブル(主にオカルト案件)を解決し、個性的な部員たちをまとめてきましたもの」

先輩は、愛用のティーセットを俺の前に置いた。

「『優雅かつ迅速』。この精神を忘れないでくださいね。あと、美味しい紅茶の淹れ方も、安倍くんに叩き込んでおきましたから」

「えっ、僕ですか?」

安倍くんが目を丸くする。 どうやら、次期・お茶汲み係(兼・魔除け担当)は彼に決まったらしい。


職人の遺産


「古田。俺からもこれを受け取れ」

副部長の溝渕福造先輩が、巨大な布に包まれた物体をドンと置いた。 金属の塊だ。

「これは?」

「俺が廃材を集めて自作した、**『半自動空き缶プレス機・改』**だ」

溝渕先輩は、布を取り払った。 そこには、無骨だが機能美あふれる、手動レバー式のプレス機が鎮座していた。

「俺の足(踏みつけ)には劣るが、市販品よりは遥かにいい仕事をする。テコの原理を応用し、軽い力でアルミ缶を極限まで圧縮できる優れものだ」

「す、すごい……! これがあれば、部費の確保も安泰ですね!」

「ああ。メンテナンスは欠かすなよ。……油を差す時は、缶コーヒーの空き缶を使え(※迷信)」

溝渕先輩は、無口に俺の肩を叩いた。 その手はゴツゴツとしていて、温かかった。 キティ先輩も、溝渕先輩に寄り添うように微笑んでいる。 この二人の「阿吽の呼吸」も見納めかと思うと、胸が熱くなる。

「任されました。……俺、この部を守ります」

俺は深く頭を下げた。 部長としての責任と、先輩たちからの信頼。 その重みが、心地よかった。


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