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サステナビリティ➅

 来たっ。1匹・・・2匹だと!?予想していなかった。2つの影が床に落ちた。その正体は・・・竜でもなく、妖精でもなく、はたまた騎士でも巨人でもなく―よく見知った顔。ラビと政樹だった。

「おい、どういうことだ、説明しろっ。」

クォーダの問いが早い。こっちだって頭の整理が追い付かないというのに。

「俺に訊かれても・・・」

「その弓でお前が作った転送陣だろうが。」

「そんなこと言ったって、俺だってそんな武器だとは知りませんでしたし・・・」

「あの2人、本物か?」

「多分・・・本人だとは思いますけれど、喋ってみないことには何とも―」

「これで偽物だったら笑うな・・・」

「さすがにそっくりさんということはないと思いますけれど・・・」

俺とクォーダの何の解決にもならない会話。果たして本物かどうか。


 「淳ちゃん、お待たせ。大丈夫?」

こっちは本物の様だ。

「ふん。こんな爺に情けない。さっさと片付けるぞ。」

間違いなくこっちも本物だ。封印が解かれているようで、既に臨戦態勢だ。

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ・・・そう来なさったか。おもしろい。」

こっちが理解する前に、敵さんの方が早く状況を把握してしまったようだ。もう何が何だか分からない。誰でもいいから説明して欲しかった。そして、こういう時の解説役は運び屋と決まっていた。

 「まず、如月さんの使った武器は『転送弓(てんそうきゅう)』という物です。召喚士のように幻獣を呼ぶことはできませんが、これまで遭遇した中で最も強いモンスターを味方として転送することができます。マジックポイントを使わずに召喚できますがひとつだけ条件がありまして、仲間モンスター枠2つで1体。クルルが帰って丁度2名分、空いていましたね。要するに、如月さんがこれまで出会った中で最強の助っ人2名がこちらのお2人ということになりますね。」

解説ご苦労、運び屋さん。そりゃ、まぁ・・・2人共、元魔王だもの。強さは折り紙付きだが―

 「淳ちゃん、あとは任せて。」

「任せてって・・・俺達も一緒に―」

「いいから大人しく見ていろ。お前達にはやるべきことが残っている。それに、そんなへろへろじゃ足手まといだ。」

封印を解かれたラビは相変わらずだった。もう少し言い方に気を配ってくれると傷付かずに済むのだが、有無を言わさず俺の意見を跳ね退けた。他の3人の意見を訊こうと周囲を見回したのだが、驚いたことに3人とも政樹とラビの意見に従ってしまった。運び屋、クォーダ、蓑口さんはまるで戦闘を終えたかのように座ったり、煙草を吸い始めてしまった。もちろん勝利を諦めてという風ではなく、勝ちを確信した表情で。


 現魔王vs元魔王コンビ。その戦いは一方的だった。圧倒的だった。ラビは素より、政樹がこんなに強いとは思わなかった。

「魔光弾。」

「ダーク・エクスプロ―ジョン。」

「退魔昇天破。」

「シャドウ・レイン・レクイエム。」

「魔天使降臨。」

「ジ・エンド・オブ・ライト。」

等々。派手というか騒がしいというか。大技のオンパレードに驚いたことは2つ。ひとつは政樹とラビの強さ。もうひとつは、魔王のヒットポイントがこんなにも潤沢に残っていたこと。それでも魔王は消え去った。政樹とラビがラスボスを倒した。




 「ラビ・・・もうお眠です・・・・・・」

首飾りを掛けられたラビ。今は政樹の背中で夢の中だ。あれだけ大魔法を連発したからな。魔王を倒した後、政樹が首飾りを掛けると気を失うように眠りに落ちた。

 「それじゃあね、淳ちゃん。」

「もう行くのか。もうちょいゆっくりしていけばいいのに。」

「1回の戦闘だけの参戦だからね。行かなくちゃ。」

「そうか、気を付けてな。ラビを頼む。」

「うん、またね。」

そう言って政樹とラビが転送陣に吸い込まれ、消えた。次は、俺達の番だ。


 「さて、終わりましたね。」

運び屋がまるで部屋の掃除を済ませたかの軽さで口を開いた。気持ちの切り替えが早い、早すぎる。俺とは違い、それはそれは長い旅路だったはずだ。もうちょっと往時を回想して感慨に耽ってもいいはずなのに。そしてそれは、運び屋だけではなかった。

「そんじゃ、俺は帰るぞ。」

クォーダが運び屋に向けて言い放った。

「ええ、お疲れさまでした。転送陣を描きますので少々お待ちを。」

そう言うと、柳は転送陣を一瞬で作ってしまった。ああ、作れるのね。しかも至極簡単に。もうこいつは何ができて何ができないか分からない。頭を抱えたくなったが、せっかくラスボスを倒したのだ、何も考えないことにした。考えるだけ無駄だ。

「行き先は大丈夫だろうな。」

「はい、直行です。」

「おう。」

長い間パーティーを組んで、その前はコンビだったと訊く、共に死線を潜り抜けたのに、あっさりと別れの挨拶が交わされた。クォーダが転送陣に足を掛ける。

「クォーダ―」

後方から運び屋が呼び掛けるも振り返ることはなかった。ただ。足は止めた。

「思った以上の長旅になってしまいましたが、お世話になりました。楽しい冒険でしたよ。願わくば、またお会いしたいですね。」

その言葉にも片手をあげて合図をするだけ。止めた足を再び進めた。転送陣の中でもこちらに振り返ることなく故郷へ帰っていった。クォーダらしいと言えばそうなのだが、最後くらい意地を張らずに挨拶なり、握手のひとつでも交わせばいいのにと、この時の俺は、俺だけが誤解していた。

 「それじゃ、私も行こうかな。」

蓑口さんは自らの手で転送陣を作り出した。行き先は自分で決めたようだ。

「無理矢理誘ってから、随分と連れ回してしまいましたね。どうもありがとうございました。」

すっと手を差し出す運び屋。

「いつか必ず遊びにおいでね。如月さんも。宿代、安くしてあげるから。」

運び屋、続いて俺とも握手をして、蓑口さんも旅立っていった。いずこかの宿へと。

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