↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/47

第30話:旅立ちを阻む業火

 俺は鞄に色々な物を詰め込む。

 もし、ヘルメスお姉ちゃんが言っていたヘルムート王国の王様が俺をあそこに埋める様に言ったのだとしたら、問い質さなくてはならない。

 場合によっては、殺さなくてはならないかもしれない。

 やる時は、父さんに見られない様にしよう。もし、見られたら……きっと父さんは俺を止めるだろう。あの時のマティ姉の様に……。

「よし、これでいいかな……」

 俺は荷物をまとめ、部屋を出る。

 音を立てない様に階段を降り、こっそり一階を覗く。

 ……誰も居ない。もしかしたら、今の内に出ればバレないかもしれない。それなら誰も巻き込まずに済む。

 俺は急いで玄関へと向かい、扉を開ける。

「おう。来たか」

 外には父さんが居た。いや、それだけではない。父さんだけでなく、皆が居た。

「……どうして」

 俺が困惑していると、マティ姉がこちらに近付き、肩を組む。

「水臭いなぁ~。今までも何回も言ってきたじゃん。あたし達は家族なんだよ?」

「でも、今度のは俺が自分でケジメをつけなきゃいけないんだよ? 父さんが付いてくるのは諦めてたけど、マティ姉達が付いてくる必要は無いよ」

 俺の言葉を聞き、母さんが口を開く。

「オーア。私はね、大切な家族が苦しむのは嫌なのよ。例え、あなたと血が繋がってなくてもね」

 血が繋がってなくても家族……これは今までも言われてきた事だ。

 俺も母さん達の事を大切に思ってる。家族だと思ってる。

「オーア。私は、家族のためなら生きられる」

 そうだ……俺だって、家族がいるから生きられる。家族のために生きられる。

 今度はピールが口を開く。

「私も家族が酷い目に会うのは嫌だからね。それに、私だって命を狙われた訳だし!」

 そう言うとピールは少し怒った様な様子を見せる。

 そうだ。この子も命を狙われていた。俺よりは優先度が低かったみたいだけど、それでも狙われていた事には変わりない。

 ふと、ヘルメスお姉ちゃんの方を見ると、俯いて涙目になっていた。

 当たり前と言えば当たり前かもしれない。

 彼女にとっては錬金術は師匠さんから教えてもらった技術だ。それが、自分の知っている人物に悪用されているかもしれないとなったら、とても辛いだろう。

 彼女は他の皆よりも大きい鞄を肩から提げていた。

 ……あの中には何が入っているんだろうか。恐らく、俺には想像出来ない様なものが入っているのだろう。

 俺はマティ姉が組んできた腕を外し、ヘルメスお姉ちゃんに近付く。

「無理に付いてこなくていいよ……? 辛いなら、グーロイネ先生の所に居てもいいし、何ならもうル・サンチェ島に帰ってもいいんだよ? 今のヘルメスお姉ちゃんなら、もう大丈夫だと思うし……」

 俺としては、彼女にはもうこれ以上抱え込んで欲しくなかった。

 彼女は、他の人より純真で、怖がりで、優しい人なんだ。それ故に、自分自身を苦しめてしまう。彼女には……もう苦しんで欲しくなかった。

「だ、大丈夫だよ? 私にとって……錬金術は、人を幸せにするものなの……。だ、だからもしっ……あの人が錬金術を悪い事に使ってるなら、ちゃんと……駄目って言わなきゃ……そうしないと、いけないんだ……」

 やっぱりだ。

 彼女は自分が何とかしなくてはならないと思っている様だ。無理に彼女がやる必要は無いのに……。

「……分かったよ。でも、約束して欲しい。もしも、どうしても無理だと思ったら、辛いと思ったら、無理せず帰って欲しい」

 ヘルメスお姉ちゃんは返事は返さなかった。しかし、静かに小さく頷いた。

 なるべく、彼女には無理をさせない様にしないと……。

「オーア。そろそろ行くか?」

「……うん。行こう」

 俺は父さんに返事を返し、ヘルムート王国へと旅立った。




 俺達は長距離移動に適した馬車に乗り、平原を進んでいた。

 周りの景色は俺達の状況など知らないかの様に、綺麗に輝いていた。

 俺達が乗っている馬車は、本来荷物を運ぶためのものらしく、俺達がいる荷台部分は家族全員が乗っても問題ない広さだった。

 俺は鞄から日記を取り出す。

 思い返せば、俺の最初の記憶はあのベッドの上だった。

 あの時の俺は不安に襲われていた。自分がどこに居て、自分が誰なのか分からなかったからだ。

 でも、今は違う。名前は思い出せないが、自分がどういう人間で、誰から愛されているのかが分かる。

 ページを捲る。

 これはマルデダに襲われた時の日記だ。

 彼は何も知らなかった。ただ上から命令されて俺を殺しに来ただけだった。

 今では彼も俺の味方をしてくれている。いや、もしかしたら彼にそういう感覚は無いのかもしれないが……。

 今から俺は、彼らを操っていた奴を倒しに行く。もしかしたら、違うかもしれないが。

 そうやって日記を見ていると、突然馬車が止まる。

 急停止したため。馬車そのものが大きく揺れる。

「な、何だっ!?」

「おい、どうしたんだ!?」

「い、いえ……それが……」

 御者が指差した方を見ると、馬車の目の前に炎が燃え盛っていた。どうやらこれに驚いて馬が止まってしまった様だ。

 俺には嫌な予感がしていた。

 炎……もしかしたら、あの時ムラードを殺したあの炎かもしれない。だとしたら、俺達は追跡されていたという事になる。

 馬車の上で、全員に緊張が走っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。