第11話:水も滴る駄目女
「起きろー!朝だぞー!」
俺は父さんの声で目を覚ました。父さんが起こしに来るなんて、珍しいな……。
俺は体を起こし、大きく伸びをすると部屋を出た。
一階では既に全員揃っており、何事か分からないが準備をしていた。
「おはよう父さん。これ、何やってるの?」
「おう、おはようオーア!今日は久しぶりに旅行でも行こうかと思ってな」
旅行。普段行かない場所に観光に行ったりするやつのことだ。多分、俺の認識で合ってるよな……?
「旅行って……また急な……」
「ん?んー、まあいいじゃないか。オーアも含めた、初めての旅行だ!」
ここで俺は父さんが怪我をした俺に気を使ってこの旅行を計画したのだと気付いた。要は、療養という事だろう。
「……ありがとう」
「ん?どうしたそんな顔して?ほらほら!今から楽しい旅行なんだから、そんな顔するなよ!幸せが逃げちまうぞ?」
奥からマティ姉の声が響く。
「親父ーー!ちょっとは手伝ってってーーーっ!!」
「おーう!分かったすぐ行くーー!!……すまんマティが呼んでる。お前も必要な物だけこれに詰めろ。8時には出発するぞ?」
そう言うと父さんは俺に大きな鞄を渡すと、家の奥の方に走っていった。
旅行か……。昔の俺は、旅行とかした事あったんだろうか?こうやって、家族皆で準備したりしたんだろうか?
俺は自分の部屋に戻り、準備をする事にした。
まずは、歯ブラシ。これはいる。必要だ。次に替えの服。後は……日記とかも持っていこう。大切な事は記録しておきたいし……。他には……こんなもんかな?
準備を終えた俺は部屋を出て、階段を降りる。もう既に皆準備は済ませている様だった。
「よし!皆揃ったな!じゃあ行くぞ!」
父さんの声を合図に、俺達は家を後にした。
俺達は各々の荷物を持ち、大通りを歩いていた。
そういえば、どこに行くんだろうか?俺は父さんに尋ねる事にした。
「父さん。流されるように出てきちゃったけど、どこ行くの?」
「おう、行き先は勿論!観光名所として有名なル・サンチェ島だ!」
「ル・サンチェ……?」
「ル・サンチェってのはねぇ……ここから南東に行った先にある島なんだよ!あたしも初めて行くんだー」
ル・サンチェ。観光名所なのか……どんな所なんだろうか……。
「ピールは知ってる?ル・サンチェ島」
「私はマティ姉と同じで今日が初めてかな。でも、本で見た事はあるよ。砂浜がとっても綺麗な所らしいよ?」
砂浜が綺麗……本に書いてあるという事は余程綺麗なんだろう。
そう考えていると、今度は母さんが話し始めた。
「ル・サンチェ島の砂はお土産としても有名なのよ。時々、瓶に詰めた砂を行商人の人が売りに来るの」
「砂を?いくら綺麗でも……売れるの?」
「売れるから行商人の人が持ってくるのよ?」
「オーアァ、分かってないなぁ。あたし達女の子は、綺麗なものに目がないのさ!」
「……マティ姉はあんまりそういうの興味無いのかと思ってたよ」
「な!?失礼だなぁ!普段は仕事の邪魔になるから付けないだけだよ!」
そうか……綺麗なものは売れるのか。当たり前っちゃ当たり前だが、物の価値は分からないもんだな。
しばらく歩いていると、港が見えてきた。
港には大小様々な船が並んでおり、新しい土地に降り立つ人、新天地に旅立つ人、それを見送る人でごった返していた。
「おい離れるなよ。人が多いからな」
「親父はデカイから離れてもすぐに見つけられそうだね」
「ほら、こっちよ」
「オーア、ピール、あたしから離れんなよぉ?」
俺とピールはマティ姉に手を引かれ、母さん達の後を追った。家族って、手を繋ぐものなのか?
俺達は船着場に着いていた大きな船に乗り込んだ。本当に大きな船だ。もしかしたら、観光用の客船か?
俺達を乗せた船は警笛を轟かすと、港から出航した。港では俺達の乗った船を見送る人々が手を振っていた。
「出発したなぁ」
「酔ったらすぐに言うのよ?」
「大丈夫大丈夫!でかい方がかえって酔わないよ!」
「船に乗るの初めてかも……!」
俺は海を眺めていた。先程まで俺達が立っていた場所はどんどん小さくなっていき、港に立っていた人々は今や蟻の様な大きさに見えていた。この世界は俺が思っている以上に大きいんだな……。
そうやって物思いに耽っていると、父さんが声をかけてきた。
「どうしたオーア!何一人で黄昏てるんだ?かっこつけか?」
「ち、違うよ!ただ、海に出るのは、俺が記憶してる限りでは初めてだから、ちょっと驚いてただけ」
「……そうか。オーア知ってるか?あそこに飛んでる鳥」
「カモメでしょ?」
「そう見えるだろ?でもあれはカモメじゃないんだよ」
「じゃあ、何?」
「あれはな?えっと……そのぉ、あれだ……あれ……」
急に悩み始めた。まさか、はっきりと覚えてないのにこの話題をしてきたのか……?
「ウミネコだよウミネコ。恥ずかしすぎるよ親父ぃ」
「マ、マティ……!」
「あれさ、ニャアニャア鳴いてるでしょ?カモメはああいう風には鳴かないんだよ」
「そうなんだ。ウミネコはニャアニャア鳴く……」
「う、うんまあ、あれだ、マティが父さんの言いたいこと言ってくれたな……!」
「忘れてただけでしょ?」
「いやいや!覚えてたぞ!ちょっと潮風で喉を一瞬やられただけだ!ホント!」
「まっ、そーゆーことにしといてあげるよ」
け、結局父さんは何が言いたいんだろう?まさか知識自慢のためじゃないよな……。
「オーア、それでだな、父さんが何を言いたいかというとだ。目に見えているものが全て真実とは限らないという事だ」
「えっと……何?」
「いいか?お前の能力は感覚を共有する事が出来る。それはつまり、人の気持ちを理解出来るという事だ。それは良い事でもあるし、悪い事でもある」
「はぁ、うん?」
「父さんの見立てでは、お前は優しい子だ。だからこそ、情に流されやすいところがあると思う」
「そう、かな?」
「ああ。だから、もしも選択に迷った時は父さん達を頼れ!必ず父さん達はお前を助ける!お前が暗闇の荒野で迷ったのなら、俺達がお前を導く地図になってやる!そのことを忘れるな!」
そう言うと父さんは母さん達の方へ歩いていった。
「あー、分かりにくいよね?つまり親父が言いたかったのは、あたし達を頼れって事さ」
分かりにくいにも程がある。ウミネコの件、いらなくないか……?
「あ、うん。分かったよ」
「……ところでさ?その、手、痛まない?」
マティ姉は俺の左手を指差して言った。
「あー、うん。ちょっと潮風が沁みるけど大丈夫かな。グーロイネ先生がちゃんと引っ付けてくれたみたいだね。きちんと動くよ」
「そっか。無理しちゃ駄目だぞ?辛い時はすぐにお姉ちゃんに言うんだぞ?」
「心配しすぎだよ」
「そりゃ心配するって。あたしの弟なんだもん」
「ほら!こんなに元気!ね!」
俺は腕を大きく動かしてみせた。本当に……心配性な人だ。
「……ん!元気、ね!これから皆で部屋に行くみたいだから、こっち来な?」
俺は心配性な姉の後に付いていった。
船内に用意された部屋は大きな部屋だった。ベッドはちゃんと人数分あるし、何より風呂まである。他の部屋もこうだと言うのだから驚きだ。
「オーア兄!見て!窓から海が見える!」
ピールに呼ばれ、窓際に移動してみる。
「本当だ!凄いね、これ!」
「そりゃそうさ!頑張って高い船予約したんだからな!」
「久しぶりに大金を使ったわね」
「す、すまん母さん……」
「いいんですよ。皆でこうやって幸せを感じていられるんですから。安いものですよ」
「親父ぃ、これはいっぱい遊んで元をとらないとね?」
「う、うんそうだな!よし!皆でル・サンチェ島に着くまで遊ぼう!」
俺達はその日一日中船の施設で遊んだ。ビリヤード、ダーツ、俺の記憶には無い遊び、とにかく一日中遊びまくった。
船内で出た食事は格別としか言いようのないもので、恐らく昔の俺も食べた事が無いようなものばかりだった。
一日中遊んだ俺達は、くたくたになって部屋に戻り、眠りに就いた。
俺はふと水の音で目を覚ました。何だ?誰かシャワーでも浴びてるのか?
俺は体を起こし、窓から外を見た。まだ、外は暗く、月明かりが水面を妖しく照らしていた。
俺は音の出所を確かめるため、浴室に向かい、ドアを開いた。
しかし、中には誰もおらず、シャワーが独りでに動いているだけだった。高そうな船だが、こういう所はちゃんと整備してないんだろうか?そのような事を考えながら、再びベッドへ向かった。
その途中ふと見た窓に、人の顔が一瞬映ったような気がした。俺は少しぎょっとしたが、確かめるのも少し怖かったので、なるべく窓の方を見ないようにしながらベッドへ向かった。
だが、俺の脚はそこで止まった。足元が異様に濡れている事に気が付いたからだ。この濡れ方はおかしい。誰かが意図的に濡らさないとこうはならない。
俺はなるべく音を立てない様に部屋を出ると、辺りを見回した。怪しい音も人影も見当たらない。だが、明らかに、誰かが何かしてきている。
俺はそのまま客室が続く通路を抜け、娯楽施設へと入った。賑わっていた時間と比べると嘘のように静かで、酷く不気味だった。
そこにも特に怪しいものは見つからず、俺は焦った。
ここには明らかに何らかの能力を持った奴が入り込んでる。それも俺を狙っている奴が。相手がどんな能力を持っているのかは知らないが、やろうと思えば、この船ごと沈める事も可能かもしれない。そうなったら、俺の家族だけでなく、他の乗客まで命を落としてしまう。それだけは絶対に避けなくてはいけない。
俺は目を閉じ、周囲一帯に意識を集中させた。どこかにいるはずだ。明らかにおかしい動きをしている奴が……。
俺はふと、妙な気配を感じた。普通人の気配は一つの塊として認識出来る。だが、これは何だ?小さい粒みたいなのが、分散してそこら中にいる?これは何なんだ……?
俺は近くにあったダーツの矢を拾い、その気配の一つに向かって投擲した。
その直後、散らばっていた大量の気配が一斉に動き出し、俺に向かって飛び掛ってきた。
俺はすんでのところでそれを回避し、すぐさま気配の方に向き直った。するとそこには、全身が液体で構成されているかのような姿をした女性が立っていた。どうやら先程まで感じていた小さい気配はこの人物の飛び散った体のようだ。
「惜しい……!見つからないと思ったのに!」
「見つからない訳ないだろ?誘導があからさますぎる」
「まあいいけどね。私の能力使えばすぐに挽回出来るし」
「ほう?どうやってやるんだ?」
「折角だから教えてあげるよ。しっかり聞いててね?まずは私がこの体を球体状にする。その後、君に飛び掛る。後はそのまま窒息させる。どう?完璧でしょ?」
「確かに完璧だな。相手が俺じゃなきゃの話だけど」
「ふん!強がっちゃってさ!本当は怖いんでしょ?私に溺死させられるのがさ?」
「いーや、全然怖くないな。前に戦ったマルデダって男の方がずっと怖かったね」
「ああ、マルデダさんか。知ってるよ。でもでも、あんな下っ端と比べられるのは侵害だなぁ」
「俺からすれば、君の方が下っ端に見えるね」
「……何で?」
「自分から姿現して、こうやって敵の前でべらべら喋ってるからさ。少なくとも、マルデダはこんな馬鹿な事はしなかったね」
「……舐めないでよ……!私の能力!『ウォーターシップダウン』は最強なんだ!」
うわぁ……こいつ自分の能力に名前とか付けるタイプなのか……。メンドクサイ奴だな……。
「はいはい。じゃあさっさとその最強の能力とやらを見せてみてよ?」
俺がそう言い終えるや否や、目の前の敵の姿が球体に変形し、俺の顔に飛び掛ってきた。まさか、本当に言った通りに攻撃してくるとは……。
俺の顔は敵の体で作られた水球で包まれていた。正直対処法は簡単だ。俺は意識を自分にまとわり付いている敵に集中させ、呼吸の感覚をリンクさせた。
「ぶっ!?うげっ!げほっ!ごほっ!?」
思っていたよりも早く俺から飛び退いた。ちょっと信じられない位にアホだな……。
「なぶっ!何する!?」
「いや、だから言っただろ。俺に対しては無意味だって」
「ぐぐぐ……!どこまでも私をコケにするのか……!」
目の前の敵と話していると、客室前の通路からピールとマティ姉が出てきた。どうやら目を覚ましたらしい。二人には悪い事をしてしまった……。
「ちょっと何やってんの!?」
「オーア兄!大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だよ」
「くっ、邪魔者が増えたか!でも問題なし!二人同時に倒す!」
そういうと彼女は再び球体状になり今度は二つに分裂して二人の方に飛んでいった。本当にメンドクサイな、こいつ……。
俺は一先ず、能力を持っていないマティ姉を優先して助ける事にした。やり方はさっきと同じだ。マティ姉の感覚を敵にリンクさせた。
すると、また後ろに飛び退いた。
「ぐえーーっ!?ぐっ、げほげほっ!?ふざけるな!」
「それはこっちの台詞だ。他人の感覚もリンク出来るんだよ」
「ふふっ、ま、まあ問題ないよ。そっちの子は始末出来るし!」
確かにまだピールは救出出来ていない。だが、する必要はないだろう。もう既に自分で対処しようとしてるのが見える。
「ほーーら!このままじゃこの子が死ぬぞぉ!君の目の前で、苦しみもがいて死ぬぞぉ?知ってる?溺死って肺の中が焼けるように痛むんだってさ!」
「……君も知ってるか?火で炙られると焼けるように痛いんだぞ?」
「はぁ?そんな当たり前のこと知ってるに決まっ……あぢぢぢっ!??」
ピールは自らの腕をロープのように分解し、部屋に置いていたライターを持ってきていた。それを使い、顔に纏わり付いている敵を炙ったのだ。
「あっづあっづ!!」
ピールに纏わり付いていた水は離れ、敵の体に戻っていった。
「ななな何て事を!人をライターで炙るとか、正気かっ!?」
「人を殺そうとした奴に言われたくないな」
「あたしの大切な弟と妹に手ぇ出して、覚悟は出来てるんだろうね?」
「……私も、大切な家族を傷付けるのは許せないかな……」
「ちょちょちょちょっと待って!分かった!降参!降参するよ!だ、だから、ね?も、もうこの辺で、勘弁、して、くださ、い……」
「どうする?オーア?」
「……君が所属している組織の事話したら許してあげるよ」
「え!?い、いやぁ……それは……」
「何だか知らないけど、オーアの言う事が聞けないんだ?ふーん?」
「……話して」
ふ、二人に圧されてる……。これは二人が前より強くなったのか?それとも、こいつが弱すぎるだけか……?
「ヒ、ヒィ……!ま、待って……い、言うよぉ……い、言うからぁ……!」
「じゃあ早く言え」
「早く」
「は、はひ!えっとその……実は、私も詳しくは知らないんだけど……上から、その人を殺すように命令されて……」
「そんだけじゃ分かんないだろーーー?」
「い、今から続き言いますぅ……!そ、それであの……可能であればそこのピールも殺せって……」
「ピール?ピールって言ったのかお前?何か足りてねぇよなぁ~~~~~~?」
「さん!ピールさん!です、ハイ!そ、それで、こ、殺しに……来ました……」
何だ?ピールもターゲットになってるのか?いったい何故……。
「おい、何でピールもターゲットになってるんだ」
「わ、分からない!で、でも可能であればって言われたから、多分そこまで重要ではないんだと思う……」
こいつらの所属してる組織の目的は何なんだ……。何がしたい……?
「で?組織の名前は?」
「こ、これだけは勘弁して!ホントに消されちゃうよ!」
「そんなのあたし達には知った事じゃないよな?」
「そ、そんなぁ……!お願いだよぉ……!これだけは勘弁してぇ……!」
何か余りにも哀れになってきた。もう勘弁してやるか……。これ以上は弱い者虐めみたいで気分悪いし。
「分かったよ。これで許してやる」
「ほ、本当ぉ……!?」
「ああ。ただし、もうこんな事するなよ?もしまたやったら……」
「ま、またやったら……?」
「ただじゃ済まない」
「どどど、どうなるんですかぁ……!?」
しまった……脅しで言ったんだがな……。具体的に言うとなると思いつかないな……。
俺が思い悩んでいると、ピールが口を開いた。
「こうなるよ」
そう言うと、ピールは肉体を解れさせ、伸ばした体を敵の体に侵入させた。体が液体状だからかすんなり体に入っていった。
「うひっ!?」
「こうやって私の体を入れて……」
「い、入れ、て……?」
「中でかき混ぜる」
そう言うと共にピールは侵入させた部分をグルグルと動かし始めた。
「ひっ!?うっ、ひゃ!あ。あっ!?」
「場合によってはこうする」
今度は解れさせた部分を相手の体に巻きつけ、首元をくすぐり始めた。
「あっ!はははは!あはひひ!はっ、はっ、もうっ!やめへへえへ……!?」
そう言われると、ピールは体を元に戻し、相手を解放した。いくらなんでも、ちょっとやりすぎなんじゃ……。
「はぁっ……はぁっ……!うっ、げほっげほっ!」
「分かった?」
「わか、分かりましたぁ……!十分!身を持って!分かりましたぁ……!」
その言葉を聞くと、二人はこちらに目配せをして部屋に戻っていった。
「あの……大丈夫?ちょっとやりすぎたかも……」
「い、いえいえいえいえ!とんでもございませんです!ちゃちゃちゃちゃんと身を持って知りましたからぁ……!」
ほ、本当に大丈夫だろうか?敵ながら、余りにも無様で同情してしまう。
「そそっそれではこれで!わわ私は帰りますので!しっ、失礼しましたぁ!」
そう言い残し、彼女は海へと飛び込んでいった。水になれる能力を持っているようだから大丈夫だとは思うが、あの様子だと少し心配になってしまう。
俺は再び寝るために部屋へと戻った。父さんと母さんは寝ているようだった。
俺がベッドに入ると、マティ姉とピールがこちらに寄ってきた。
「オーア。大丈夫だった?」
「うん。まあ相手が抜けてる人で良かったよ」
「確かに、マルデダと比べると凄い間抜けだったね」
「あはは……そういえばピールは大丈夫だった?」
「何が……?」
「さっき凄い事してたけど、あれ相当無理してたでしょ?」
「う、うん……と、とりあえずやってみたんだけど……あれでよかったのかな?」
「ピール、あれとりあえずでやったの?随分慣れてる感じだったから、ピールにそういう性癖があるのかと思ってお姉ちゃん心配しちゃったよ」
「な、ないよそんなの……!」
「ま、まあ何はともあれ、怪我とか無くて良かったよ」
「そうだね。楽しい旅行で怪我とかしたら台無しだもんねぇ」
「う、うん。何とも無くて本当に良かった……」
「よし!そんじゃ、今日は三人で一緒に寝よっか!」
マティ姉がとんでもない事を言い出す。ピールはともかく俺は男だぞ?そういうの気にならないのかな……?
「ささっ、ほらほら二人とも、もっとお姉ちゃんに引っ付け引っ付け……!」
「う、うん……!」
「ちょ、ちょっと……俺、男なんだけど……」
「ん~~?どうした~?もしかして、お姉ちゃんを意識しちゃってるの~?」
「ばっ!そんな訳ないじゃん……!」
「じゃあ遠慮はいらないって。ほら、ぎゅーっ……!」
俺とピールはマティ姉に抱き寄せられた。
意識なんてしていない。そう。そんな訳無い……。明日になればまたいつも通り接しよう。そう思いながら、俺は眠りに就いた。




