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全員を救うと“消される”世界で、俺は選ばないことで全部残している  作者: 夕凪リィナ


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第39話 選ばないという選択

 ——次で終わる。


 そう言ったあと。


 世界は、静かだった。


 崩れているはずなのに。


 どこか。


 均衡している。


 不完全なまま。


 保たれている。


「……本当に、終わるのか」


 男が言う。


 声は低い。


 だが。


 逃げていない。


 私は、頷く。


「はい」


 短く。


 それだけ。


 少女が、こちらを見る。


 まだ、震えている。


 だが。


 目は、逸らさない。


「……どうやって」


 私は、少しだけ間を置く。


 そして。


 答える。


「決めます」


 男が、眉をひそめる。


「結局、選ぶのか」


 私は、首を横に振る。


「違います」


 静かに。


「選ばないまま、決めます」


 その言葉。


 少女が、息を呑む。


 男も、黙る。


 意味が。


 すぐには分からない。


 それでいい。


 私は、前に出る。


 一歩。


 空間が、歪む。


 だが。


 崩れない。


 今は。


 持っている。


 私は、手を伸ばす。


 何もない場所へ。


 だが。


 そこには、ある。


 すべてが。


 残っている。


 選ばれなかった可能性。


 消えた存在。


 重なった時間。


 すべて。


 ここにある。


 私は、それを掴む。


 引き出す。


 空間が、震える。


 世界が、反応する。


『干渉』


 上位の声。


 すぐそばで。


 私は、止まらない。


「これは」


 静かに言う。


「削りません」


 握る。


 強く。


「全部、残します」


 空気が、揺れる。


 世界が、軋む。


 だが。


 崩れない。


 まだ。


『矛盾』


 上位が言う。


 だが。


 前とは違う。


 否定ではない。


 確認だ。


 私は、答える。


「ええ」


 迷いなく。


「だから」


 言葉を、続ける。


「選ばせます」


 その瞬間。


 少女が、息を呑む。


 男が、目を見開く。


『意味不明』


 上位が言う。


 わずかに。


 だが。


 理解しようとしている。


 私は、説明する。


 必要だから。


「今までは、外から決めていた」


「削るか、残すか」


 短く。


 だが。


 正確に。


「それをやめます」


 そして。


 言う。


「全部、見せる」


 空間が、震える。


 強く。


 私は、手を開く。


 その瞬間。


 世界が、変わる。


 広がる。


 重なっていたものが。


 “分かれる”。


 ではない。


 ——“並ぶ”。


 同時に。


 すべて。


 存在する。


「……っ」


 少女が、目を見開く。


 前に。


 複数の未来が。


 並ぶ。


 生きる未来。


 消える未来。


 別の選択の結果。


 すべてが。


 同時に。


 見える。


「これが……」


 少女の声が震える。


「全部……」


 私は、頷く。


「はい」


 静かに。


「すべてです」


 男が、低く言う。


「……こんなもん、決められるか」


 その通りだ。


 私は、答える。


「決めなくてもいいです」


 男が、顔を上げる。


 少女も。


「……は?」


 私は、続ける。


「選ぶのは自由です」


「選ばなくてもいい」


 その言葉。


 空気が、変わる。


 ほんのわずかに。


 だが。


 確実に。


「選ばなければ」


 私は、言う。


「すべてが残る」


 そして。


「選べば」


 一つが、確定する。


 世界が、揺れる。


 だが。


 今度は、崩れない。


 成立している。


 ギリギリで。


 上位が、沈黙する。


 長い。


 そして。


『成立可能』


 初めて。


 肯定が来る。


 私は、目を閉じる。


 少しだけ。


 そして。


 開く。


「これで終わりです」


 静かに。


 言う。


 少女が、前に出る。


 震えながら。


 だが。


 止まらない。


 目の前に。


 一つの未来がある。


 子どもが、消えなかった未来。


 別の未来もある。


 違う形で。


 失われた未来。


 少女は、見ている。


 すべてを。


 長く。


 そして。


 小さく。


 手を伸ばす。


 触れる。


 一つに。


 その瞬間。


 世界が、確定する。


 わずかに。


 揺れて。


 止まる。


 少女が、息を吐く。


「……これでいい」


 小さく。


 だが。


 はっきりと。


 男が、苦笑する。


「……やっとか」


 だが。


 目は、穏やかだ。


 私は、二人を見る。


 そして。


 理解する。


 これでいい。


 すべてが。


 整った。


 上位が、言う。


『終了』


 短く。


 それだけ。


 だが。


 今度は。


 消えない。


 ただ。


 そこにある。


 観測として。


 私は、息を吐く。


 ゆっくりと。


 そして。


 手を下ろす。


 世界が、戻る。


 完全に。


 歪みが消える。


 重なりが消える。


 残るのは。


 一つの現実。


 そして。


 選択の自由。


 私は、空を見る。


 何もない。


 だが。


 分かる。


 もう。


 終わった。


 役目が。


 少女が、こちらを見る。


「……あなたは」


 言葉が、途切れる。


 私は、少しだけ笑う。


「残っていますよ」


 そう言う。


 だが。


 感覚が。


 薄れていく。


 存在が。


 軽くなる。


 観測されなくなる。


 それが。


 終わりだ。


 男が、言う。


「……おい」


 だが。


 私は、答えない。


 もう。


 必要ない。


 私は、最後に。


 言う。


「選ばなくてもいい」


 それだけ。


 静かに。


 そして。


 消える。


 音もなく。


 ただ。


 存在が。


 外れる。


 残ったのは。


 世界と。


 人と。


 選択。


 それだけだった。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


ついに「選択の形」が決まりました。


選ぶことも、選ばないことも、

どちらも許される世界へ。


次話、最終話です。


最後まで見届けていただけたら嬉しいです。

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