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全員を救うと“消される”世界で、俺は選ばないことで全部残している  作者: 夕凪リィナ


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第35話 選べるということ

 ——私も、選べます。


 その言葉で、空気が止まった。


 少女は、真っ直ぐにこちらを見ている。


 震えていない。


 逃げてもいない。


 ただ。


 決めている。


 私は、数秒だけ沈黙した。


 男が、小さく言う。


「……本気か」


 少女は、頷く。


「はい」


 短く。


 それだけ。


 だが。


 軽くはない。


 私は、一歩だけ近づく。


 距離を測る。


 視線を合わせる。


「……どうやって」


 私は問う。


 少女は、少しだけ考える。


 だが。


 すぐに答える。


「分かります」


 曖昧な言葉。


 だが。


 嘘ではない。


「引かれる前が」


 続ける。


「見えるんです」


 その言葉。


 私は、目を細めた。


 男が、息を呑む。


「……それって」


 男が言いかける。


 私は、手で制する。


 今は。


 確認が先だ。


「……試します」


 私は言う。


 少女は、すぐに頷く。


 迷いがない。


 それだけで。


 十分だった。


 その瞬間。


 ——歪みが開く。


 小さい。


 だが。


 速い。


 一人。


 端にいる男が引かれる。


 時間は、ほとんどない。


「……行けますか」


 私は言う。


 少女は、すでに動いている。


 迷いなく。


 走る。


 速い。


 だが。


 正確だ。


 私は、動かない。


 見る。


 その動きを。


 少女は、手を伸ばす。


 掴む。


 だが。


 ——切らない。


 押す。


 流れを、ずらす。


 ほんの少し。


 その瞬間。


 引きが、逸れる。


 私は、そこに合わせる。


 掴む。


 戻す。


 弾ける。


 静寂。


 男は、地面に崩れる。


 呼吸が戻る。


 完全に。


 私は、少女を見る。


 その目。


 少しだけ。


 揺れている。


 だが。


 崩れてはいない。


「……できました」


 小さく言う。


 私は、頷く。


「はい」


 それだけ。


 十分だ。


 男が、近づいてくる。


 まだ完全ではない。


 だが。


 立てる。


「……お前」


 少女を見る。


 言葉が続かない。


 当然だ。


 これは。


 普通ではない。


 少女は、視線を逸らさない。


「……私も」


 言う。


 ゆっくりと。


「残りたいから」


 その言葉。


 私は、わずかに息を止めた。


 理由。


 それが重要だ。


 男が、黙る。


 理解している。


 この意味を。


 私は、言う。


「……残るためには」


 少女が、頷く。


 先を読むように。


「選ぶ必要があります」


 私は、首を横に振る。


「違います」


 少女が、止まる。


 男も、こちらを見る。


「選ばないために」


 私は続ける。


「選ぶんです」


 その言葉。


 少女の表情が、わずかに揺れる。


 理解しようとする。


 だが。


 完全ではない。


 それでいい。


 今は。


 全部は、必要ない。


 そのとき。


 空気が、変わる。


 今度は。


 静かではない。


 ——歪み。


 だが。


 今までと違う。


 速い。


 そして。


 多い。


 同時に。


 五つ。


 別方向から。


「……来る」


 男が言う。


 私は、頷く。


「分かります」


 少女も言う。


 私は、少女を見る。


「できますか」


 少女は、少しだけ間を置く。


 そして。


「やります」


 それだけ。


 十分だ。


 私は、頷く。


「分担します」


 短く。


 それでいい。


 私は、三つ。


 少女に、二つ。


 男は、動かない。


 だが。


 見る。


 学ぶ。


 それでいい。


 歪みが、迫る。


 私は、動く。


 同時に。


 少女も。


 速い。


 そして。


 正確。


 私は、一つ目を止める。


 掴む。


 戻す。


 弾ける。


 その間に。


 少女が一つ。


 止める。


 成功。


 だが。


 二つ目。


 わずかに遅れる。


 引きが強まる。


 私は、視線だけで追う。


 流れを見る。


「……そこです」


 私は言う。


 短く。


 少女が、反応する。


 位置を変える。


 ほんの少し。


 その瞬間。


 流れが変わる。


 戻る。


 弾ける。


 二つ。


 成功。


 私は、残りを処理する。


 三つ。


 すべて。


 止める。


 静寂。


 五つ。


 すべて、終わる。


 私は、立ち上がる。


 少女を見る。


 呼吸が荒い。


 だが。


 立っている。


「……できました」


 もう一度言う。


 今度は。


 はっきりと。


 私は、頷く。


「はい」


 それだけ。


 男が、ゆっくりと言う。


「……増えたな」


 私は、空を見る。


 何もない。


 だが。


 分かる。


 これは。


 始まりだ。


「……増えます」


 私は言う。


 少女が、こちらを見る。


 不安が、少しだけある。


 だが。


 逃げない。


「……なら」


 少女が言う。


「もっと増やします」


 その言葉。


 私は、目を細めた。


 来た。


 次の段階。


「……誰を」


 私は問う。


 少女は、迷わない。


「選べる人を」


 その瞬間。


 空気が、変わる。


 男が、息を呑む。


 私は、静かに頷く。


「……そうですね」


 それしかない。


 これは。


 個人ではない。


 もう。


 ——拡張だ。


 私は、前を見る。


 拠点の外。


 さらに先。


 まだ見えない。


 だが。


 確実に。


 いる。


 同じものが。


 そして。


 分かる。


 次は。


 探す戦いになる。


 そのとき。


 空気が、わずかに揺れる。


 遠くで。


 新しい歪み。


 だが。


 違う。


 これは。


 ——呼んでいる。


 私は、目を細めた。


 来た。


 向こうから。


 選ばれる側が。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


ついに「選べる側」が増えました。

個人の戦いから、“構造の拡張”へ。


ここからは仲間を増やすのか、それとも——選別するのか。


次の章の方向が見え始めています。


続きを見届けたいと思っていただけたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。

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