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魔物大量発生 3

(美女を持ってきました)

 そんな明るい声と裏腹に、俺の感情は沈んでいく。彼女が捕まえているのはシャルムだった。「おい、それは俺の物だ!」

 大きな声で叫ぶ。

(えーと、誰かしら?)

 心底不思議そうに尋ね、その質問を誰かが返す。

(新入りだ)

 そんな言葉は耳に入らず、睨みつける。

(私達のお仲間が、なんで怒っているの?)

「それは俺の奴隷だ」

 何時もなら、交渉、又は説得しているのだが、冷静さを失っている。

(貴方、何様?一応、私は先輩なんだけど)

(戦って勝った方が手に入れればいい)

 そう高らかに言ったのは、玉座に座る魔物。

 その言葉は、何故か俺に畏怖と冷静さを取り戻させた。

「スゥーハァーよし」

 深呼吸をし、自身の動揺を静まらせ、集中した状態にする。

 今現在、俺はシャルムより強い敵と相対している。勝てる確率は高くない。いや、全く無いといっていい。

 だからこそ、観察する。相手の動き、仕草などで、癖などを見つけたいのだが、分からない。そりゃ当然である。

 しかし、シャルムを縛っているのは極細の糸である。魔力を目に集めてやっと見えるような糸である。慣れるのに時間が掛かりそうなため、時間を稼ぐ。

「先程は冷静さを欠いた発言、大変失礼しました。私の奴隷を返してもらうため、精一杯努力させていただきます」

(ふーん、分別のつく子供ではあるようね。まぁ殺さないよう手加減はしてあげるけど、少し痛い目は与えるわ)

 そんな柔らかな口調とは裏腹に、目は鋭い。「では、ダーク参る」

(リング受ける)

 その瞬間、ダークは剣を打ち投げる。

(シュン)

 そんな風を穿つ音を立てながら、リングに向かって行く。

 しかし、一見何も無いところに、あたかもぶつかったように空中で止まる。

(乱暴な子だね)

 そんな事を言いながら、糸を動かし、俺の右腕に絡めようとしてくる。

 俺は、それを避け、剣のところにダッシュする。剣を掴んだと思った瞬間、剣がリングの懐に引き寄せられる。

 その為、バランスを崩し、その隙を突かれ、足やら手やらに糸が絡む。

「ク、」

 そんな悔しそうな顔を見て、リングは勝ち誇ったような顔をし、こう言う。

(ふ、ふ、勝負はあったようね坊や。意外と呆気なかったわね)

 そう言い、俺の魔剣、吸魂剣を触れる。

(何これ、え、)

 リングが俺の魔剣を触り、違和感を感じた隙を見て、俺は暗黒魔法、暴風魔法を全力で使い、リングの前まで吹っ飛ぶ。

(え)

「え」

 両者共に驚きの表情を浮かべる。何故なら、ダークがリングに突っ込んでいき、止まらず正面衝突したからだ。

 本来、新しく手に入れた、進化した魔法などは、出力などの違いを練習で確かめるのだが、それをダークは怠けてしなかったため、予想以上に体が吹っ飛び、そのままぶつかってしまったのである。

(ズドン、ズーッ)

 そんな音を周り一同、唖然とした様子で聞いている。地面を削りながら、両者が、水平に移動する。

 煙が立っている。そんな中で、ダークは手を動かし、立とうとする。

「よっと?」

 何やら、手に地面らしからぬ感触が!何だ?と不思議に思い、何回も揉んでいる。

(ヤメて)

 そんな声を気に、周りの状況を把握する。あれ?おれリングさんを押し倒し、その上胸を揉んでいる?アァー、ギルティー。

「すみませんでした」

 俺は人類史上、最も美しい土下座をする。頭を地面に擦りつけ、謝る。

(いや、そんなにはいいわ。事故なのよね?)「仰るとおりです」

 人間の本能のような速さで、発言する。

 にしても、ぶつかったら、一般的にどちらか一方が変な所に飛ぶと思うのだが、どういうことだ?

 そう疑問に思っていると、俺の体に少しの糸がくっ付いていた。

「何これ?」

 不思議そうに持ち上げていると、リングが理由を教えてくれる。

(坊やが突っ込んで来た時、減速させようと糸を絡ましたのよ。まぁ効果は無かったようだけど、はぁ)

 そうため息まじりに言う。あと一歩間違えたら、俺は負けていたかも知れないと思うと、恐怖を感じる。

 にしても、風が美味しい。これが心のゆとりかぁ。

(ほら、坊やのなんでしょ。傷つけては無いから)

 そう言い、シャルムを渡してくるので、丁重に受け取る。気を失っている姿は、まるでお姫様の様だ。

 俺は安心感からか、力が出そうに無い。そのため、地面に座り、魔法のカバンから布を取り出し、シャルムをそこに寝かせる。

 俺、超紳士と思いながら気を失った。


(ダーク、ダーク)

 そんな声と共に肩を揺らされて、俺は目を覚ます。

 するとシャルムが泣きそうな表情で俺の名前を呼んでいる。

(生きてたか。お前が死んだら寂しいぞ)

 そんな言葉に俺は憤る。

「俺も、お前が死んだら寂しいんだぞ、分かっているのかー」

 そんな叫びに怯んだのか、泣き出す。

(ウワーンゴメン、ゴメンなさいぃ)

 俺は頭を撫で、慰める。そんな家族の愛情物語に、水を差す方がいた。

 玉座に座っていた方である。

(貴方様はもしや、魔王様の右腕だったシャルム様ですか?)

 そんな驚きの声をにじませ、話しかけてくる。(ん?誰だお前?)

(俺です、俺。昔、弱かった魔人で、貴方様に魔力の使い方を教わったソルです。)

(んーん?お主がか!覚醒もしてなかった雑魚だが、才能だけが非凡だったガキか)

(そ、そうです)

(これまで、よく頑張ったな)

 そうシャルムが褒めると、とても嬉しそうに喜んでいる。


 「俺に事情を説明してくれー」

 そう空に叫ぶのだった。

 最近は予定通りに投稿が出来ず、大変申し訳ございません。

 忙しい為、週に三回、水曜日、土曜日、日曜日の十九時の投稿に変更します。これからも、宜しくお願いします。

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