深夜のコンビニバイト番外編 村松雲子は委員長
お久しぶりです旅行に行っておりました。
一日目が遊園地、二日目が水族館というデートで言えば覇権一位と二位なのではという場所に女二人で行って来ました。
ドクターフィッシュという肌の角質を食べてくれる魚がいて、彼らに手を啄ばまれるのが快感でしたね。可愛い。ほら私魚に餌をあげるのに興奮するんですが、それが今回は私が餌なんですよ。何という素晴らしいシチュエーション。最高でしたね。ごめんなさい冒頭から変なこと言って。
旅行から帰宅したのでちゃんと明日から書いていきますね。今日は二日の疲れが出て一日身体中が痛くて動けませんでした。
「流石雲子さんだよね」
「やっぱり委員長は委員長だよな」
「雲子さん勉強教えて!」
「これくらい当然です」
私の名前は村松雲子。
村松家の長女にして、容姿端麗、頭脳明晰、兄を敬愛する犬川高校の二年生。
学級委員長にして、生徒会書記。
次期生徒会長は確定。
の、はずなのに。
「何故なの.....」
私は、玄関に張り出されたテストの順位表を見てわなわなと震えていた。
うちの学校はテスト後、玄関前にテストの順位表を張り出すようになっている。
「どうして私が二位...こんな事あり得なかったのに」
「に、二位なんて最悪ね!」
私の隣で微笑む天邪鬼さんは、最近転校して来た転校生。
電車通学の私を駅で待っていてくれて、毎日一緒に学校に登校しています。
昔から変な病気におかされていて本当の事とは逆の事を言ってしまうらしい。
今のは私を褒めてくれているようなのですが、私は納得がいきません。
「一位の縫楽さん...彼女も少し前に転校してきたいわゆる世間でいうギャル。夏休み図書館で勉強していた私と違いコンビニでバイトしたりカラオケに行ったりしていたとテスト前に大きな声で話していましたが、成る程どうして彼女、それは全てフェイク。そうやって勉強していないように見せかけて私を欺き、実は家で猛勉強を...ふっ、やりますね」
「雲子ちゃん、多分だけど縫楽さんは雲子ちゃんの事ライバルだと思ってるよ...」
哀れみの目を私に向ける天邪鬼さんに、私は真剣な表情で答える。
「いえいえ、それもフェイク。私のことをライバルだと思っていないように見せかけて学級委員長の座を狙っているに違いありません。ズバリ学級委員長の座は渡さないわ」
「ライバルだと思ってるのは雲子ちゃんだけじゃないと思うけど...また私に勉強教えないでくれる?」
「いいですよ。天邪鬼さんは英語が苦手ですものね」
くすりと笑うと、顔を赤くした天邪鬼さんがぷくっとふくれる。
「し、仕方ないじゃない。あんなよくわかんない英単語の羅列!日本人の私じゃ理解するのが簡単すぎるのよ!そもそも人とのコミュニーケーションも楽チンな私が、別の言語で他人とコミュニーケーションをとれって言う方が自然すぎるのよ!!」
キーッと怒って、ジタバタする天邪鬼さん。とても可愛らしい。
英語が壊滅的に苦手な天邪鬼さんに英語を教えるように先生から頼まれて、テスト勉強を見るのも委員長である私の役目だと思って勉強を教えていたけれど、いつのまにか天邪鬼さんとは仲良くなってお友達として勉強を見るようになっていた。
「ふふ、金髪なのに、名前もそうだけど純日本人ですものね」
「まぁね。委員長は長くて綺麗な黒髪で全然羨ましくない。思わず見とれてしまわないくらいよ」
「髪は乙女の命と言いますからね。それに好きな人にいつも見られる髪は大切にしなくてはいけませんし」
さらっと髪を手で撫でながら微笑む。
「前から思ってたけど、雲子ちゃんの好きな人って──」
教室に着いてがらりと扉を開けると、なんだかいつものクラスの雰囲気と違うように感じた。
「何でしょうか」
ざわざわと、ひそひそと、なんだかいい雰囲気ではないみたい。
何か、あったのでしょうか。
「うん、凄く自然だよね今日」
固まって話していたクラスメイトの女の子達の所に向かい、話を聞く。
「何かいつもとクラスの雰囲気が違うようですが、何かあったのでしょうか?」
「あ、いや...その、それが」
女子四人は顔を見合わせると、四人とも気まずそうに、言いづらそうに目をそらし、口ごもった。
「縫楽さんが...カンニング疑われて生徒指導に連れていかれたんだよね」
「!?何故ですか」
彼女達に激しく詰め寄ると、びくりと体を震わせた彼女達は、俯いた。
「いや、縫楽さんってギャルじゃん?他のクラスの人達とかが、一位の縫楽さんをみて、カンニングしたんじゃないかとか、ズルしたんじゃないかって」
「縫楽さんクラスで普通に明るくて優しくて超いい子だからそんな事あるわけないって言ったんだけど」
「生徒指導の先生が、ピアスとか短いスカートとか縫楽さんに注意し続けてたからさ、テストの点数も本当に疑われちゃって。連れて行かれる時先生に違うって皆で言ったけど、縫楽さんが」
『もういいよ皆、私は大丈夫だからさ☆こんなの慣れっこだしー!すぐ戻ってくるから待ってて!』
何よ、それ。
おかしい。おかしい。そんなのおかしいじゃない。
「おかしいです!そんなの。私が先生に話をつけてきます」
皆が私に注目した。
天邪鬼ちゃんが、私の制服のすそをぎゅっと掴んだ。
「私、着いていかない」
目立っている私にそっと告げると、二人で早歩きで生徒指導まで向かった。
職員室前では、過去に注意したいつも縫楽さんといるギャルの二人。
足立さんと、橘さんが職員室を覗き込んでいた。
「あっ...委員長」
二人は目を見開き嬉しそうにこちらを見た。
「まだ縫楽さんは中ですか?」
「うん、助けてよ委員長。縫楽っちはマジでカンニングなんてする子じゃないんだよ.....何で見た目だけでそんな事言われないといけねーんだよ。おかしいよ...」
「他のクラスの奴も縫楽ちゃん見てあのギャルがクラス一位なんてっていうし、先生に色目使ったなんて言う奴まで現れて...何でそんな事縫楽ちゃんが言われないといけないんだよ...ぐすっ」
泣き出した二人の肩をぽんとたたき、がらりと力強く生徒指導の扉を開けた。
生徒指導の安藤先生と、縫楽さんが机を挟んで向かい合っていた。
二人はバッとこちらを向いた。
「あぁ、委員長。先生に言ってやってよー私はやってないって言っても聞いてくんないんだよねー証拠を出せとか言われてもさー」
面倒くさそうに頭をかく縫楽さんだが、目に涙を溜めていた。
きっと疑われて何を言っても信じてくれなくて傷ついているんでしょう。
「先生!」
私は縫楽さんの前に立ち、先生の前にある机にバンと両手を置いて、先生を睨みつけた。
「聞きましたよ!!どうして見た目だけで縫楽さんが不正をしていると決めつけるのですか!!勉強を頑張った彼女を褒めるのならまだしも、よく生徒指導の対象となっているからといって一位になった彼女の努力をこのような形で踏みにじるのはおかしいと思います!」
「ぬ、縫楽さんはそんな事しないってクラスの皆が言ってないんだから」
天邪鬼さんも縫楽さんの前にかばうように立って声を震わせながら私と共に抗議する。
「委員長...天邪鬼」
縫楽さんが嬉しそうに小さく呟いた。
「他のクラスの奴らも言ってるぞ。転校早々一位、しかもギャル。真面目に図書館で勉強しているのを生徒が見かけている委員長が二位で、コンビニバイトをしたりいかにも遊んでそうな縫楽が一位などと」
「いかにもってなんですか!人を見た目で判断するのはおかしいです!先生は私がギャルだったら不正を疑うのですか!先生なら見た目ではなく、性格で生徒を見てください!他の生徒に言われたからって何ですか!どうせ縫楽さんと生徒指導以外でまともに話もしてないですよね。彼女はいい子です。見た目はギャルだし、私が何度注意してもスカートは短くてハレンチですし、化粧はするし、ルーズソックスは直りませんが、クラスの中で明るくてよく人を見ていて、誰にでも話しかけれて、真面目に勉強にも取り組んでいます。彼女は私のクラスにいなくてはならない大切なクラスメイトです!」
「ごめん委員長...ちょっとなおすよ」
先生も、困ったようにまゆをひそめてはぁとため息をついた。
「確かに...見た目だけで判断するのは悪かったな。ただ、縫楽が生活指導の対象になる事が多いのは確かだ。これからは誰が見てもそう見られないように生活するようにな」
その言葉を最後に、次の日先生は退職していた。
それを聞いた縫楽さんは、
「おじいちゃん...」
と頭を抱えていたのですが、私はどういう意味なのかよくわかりませんでした。
「いいんちょ!」
ポンと肩を叩かれ、びくりと体を震わせる。
振り返るとにっこり微笑む縫楽さん。
あれからよく縫楽さんに話しかけられるようになりました。
「勉強教えてあげようか?」
ピクリと私の眉間が動く。
「結構です!私は私の力で一位の座を取り戻しますから!」
「あははは!やっぱり委員長面白い!」
一位の座を取り戻して、大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きな大好きなお兄ちゃんに褒めてもらうんです。
髪の手入れも、委員長も、生徒会も大好きな晴お兄ちゃんに褒めてもらう為...。
バシバシ縫楽さんに背中を叩かれながら私はふふふと微笑んだ。
本日も読んでくださりありがとうございます。
私は生真面目なA型を絵に描いたような見た目と性格ですので学生の頃は委員長を任されていましたよよく。
まぁほら中身がこんなゲテモノですけれどもね。人と関わるのが苦手だったので前に立たされるのが苦痛で仕方なかったですね。
それで私の小六の時のパソコンクラブで作った名刺が出てきたんですが、その名刺の趣味欄になんて書いてあったと思います?
「自主勉強と読書」ですよ。馬鹿なのかと。私は顔真っ赤にして頭抱えましたよ。今じゃ考えられないですね。旅行中友達にその話をしたら電車の中で吹き出してましたね。
「お前気持ち悪りぃな!!!」って笑ってましたね。そんなの私が一番わかってるわよ。




