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B-5. 銃使い魔改造計画 その3

これで第一章は終わり。次から事態が動けばいいんですが。

 セイジが目覚め見えたのはログイン画面——ではなく、木の根元だった。木から落ちたが生きていたらしい。セイジは気分で服を叩いて土を落とそうとする。そこまで細かく作られてないからか、セイジの服に汚れは見られない。ちなみに、このゲーム内で服を洗ったことはセイジにはない。

「さて、どうしよう」

 セイジが思わず声を漏らした。今までは必ずログイン画面に戻っていたセイジ。この後の予定がないため、後はログアウトするだけなのだ。つまり、死んでいても問題なかったのだ。セイジは銃を取り出すと真上に向かって一発撃つ。以前戦闘中にやらかしたことを思い出す、まるで音に群がるように敵という敵が襲いかかってきたものだと。そして、それは現実になった。何に押し流されたのかもわからないまま、セイジは死に戻ったのだった。


 寝始めの状態で死ななくなるという目的を果たしたセイジは、ログインの感覚を今まで通りに戻した。しかし害意を読み取ることも、魔力を操作することも、まだ完全にできてはいない。そのため、酒場の常連たちに鍛錬を手伝って貰い続ける結果となった。

 セイジがまだ来ていない酒場にて、教えている面々が雁首(がんくび)そろえて話し合っていた。彼らがセイジを鍛えているのは、暇つぶしからだ。そう、セイジがあの二つを習得するということは、玩具(セイジ)で遊べなくなることを意味している。

「何かいい案ないかなあ」

「酒は飲みに来る筈さ。ただ、死ににくくなる以上町から出ない日がなくなるかもな」

「でも、彼にとってはいいことよ」

「カーンラッチェ。それでは私が面白くないんだ」

「我ら、じゃろうて」

 セイジの目的は戦いではない、というのだけが救いであった。このアリュゼアの町は最初の町(・・・・)だ。そう、ここはゲームの世界。いくつもの町があり、この町から遠くへ行けば行くほどどんどん敵が強くなる。隣町への道中の推奨レベルは7。すでにセイジのレベルは推奨以上なのだ。隣町に行ってしまえば、セイジがここへ寄ることはなくなってしまうだろう。

「何か穴はないものか」

 フォルヴォールが(ひじ)をつき、つまみを一つ放り込む。彼らはゲームの仕様を覗き見て、何か利用できるものがないか探す。しかし、莫大な情報の大半が敵のデータだ。すぐに飽きて他の方法はないかとダラダラ話すのだった。


 ある日、鍛錬が終わったセイジが東門へ出ようとすると、五人ほど門の入り口にたむろしているのを見た。その中で知っている顔もある。ナディアとイチジョーだ。二人はセイジに気づいたのか手を振る。そして、手を振り返すセイジの元へ来たのだった。

「セイジも隣町へ行くの?」

「……、隣町?」

 セイジは小首を傾げる。行動範囲が町と昼寝スポット(しゅうへん)で簡潔していたため、そこから先があることを考えもしなかったのだ。もうちょっと調べた方がいいと苦笑しつつ、ナディアはこのまま東へ道なりに進めば町があることをセイジに教える。

「ゲーム時間で大体十時間らしいから、今から行くと許容時間ギリギリなんだけどね」

 このゲームに限らずVR全体に関わるのだが、その気になれば五感全て再現可能な技術だ。人体に全く影響がないわけではない。VRを購入する際は必ず定期的に健康診断を受ける必要があり、一日に使用できる許容時間というものが存在するのだ。平均許容時間は現実世界で八時間。ホワイトドラゴンズ(このゲーム)では、大体の人が十六時間居続けることができるわけだ。ただ平均というように、この許容時間は個人差がある。

「隣町行くなら、パーティ枠一つ余ってるから一緒に行く?」

 旅は道連れということか、ナディアがセイジを誘う。しかし、セイジは首を振って断った。

「すまない。私では時間が足りない。途中までしかいけないな」

「そっか、残念ね。許容時間はどのくらいなの?」

 セイジは(ほお)を掻いて、小さな声で答えた。

「七時間だ」

 一瞬の間。ナディアは恐る恐る聞く、ゲーム時間か、それとも現実時間かと。

「ゲーム時間で七時間だ」

 まさかの半分未満だ。許容時間は個人差がある。その個人差は精々三時間くらいの誤差までが普通だ。ナディアはどう言葉をかけたらよいか分からず、『あー』や『えー』などのただの音を漏らした。

「会うことはほとんどないかもしれないが、元気で」

「え、ええ。機会があればまた会いましょ」

 このままで時間が過ぎるのは良くないだろうと思ったセイジは、無理矢理話を切り上げ去った。

 このゲームの仕様で別の町を拠点にする場合は、『徒歩』で到達しなければらないというものがある。許容時間が極端に短いセイジは隣町へ行けない。行ったとしても拠点として登録できない。ログイン時は必ずこのアリュゼアの町になるのだ。まるで序盤を遊べる体験版のようだった。普通にゲームを遊ぶ者ならば、止めてしまうだろう。セイジは知らないが、現実との時間の兼ね合いで隣町へいけず止めた者もそれなりにいる。

 ただ、目的がゲームではないセイジにとっては深刻な問題ではない。遠くに行けない分、寝る場所に飽きてしまうかもしれない。それだけであった。

 何も問題はないのだと、セイジは濃灰色(・・・)の瞳を細めた。

どうでもいい設定。

セイジのキャラ作りたての頃(Bパート)とAパートの目の色が違う。

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