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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第二章 冒険者と仲間
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76.受付の手

前回に引き続き冒険じゃないターン。


 そして、シュウはナイフを冒険者ギルドの受付嬢に見せても持ち主はわからないだろうと予想している。

 理由は、先程も述べた高ランクの冒険者程武器を隠す習性。

 特に猛毒を扱う武器等見せびらかす物ではない。

 シュウは受付嬢に見せるためにナイフを魔法鞄から取り出して机に置く。

 今は鞘の代わりにウサギの鞣し革を巻いている。

 もう一つ、持ち主がわからない理由がある。

 このナイフがシンプル過ぎるのだ。

 刃はロックホーンの鱗を貫くのに、柄や鍔には装飾が一切ない。

 ロックホーンの鱗を貫通するほどのナイフなのに打った人は銘も何も入れていない。

 まるで最初から()()()()()()()()()()()()()ように。

 見た目は武器屋でも売っている初心者用のナイフ。

 下手をすれば道具屋でも売っているかもしれない。

 ナイフは戦闘以外にも使うことが多くあり、冒険者活動に必須と言ってもいいからだ。

 見た目からの特定は難しいだろう。


 そう思いながら見た目はのほほんとしているシュウはティアリスにあのロックホーンは今どうしているだろうかと雑談を振った。


 暫くすると、個室のドアがノックされる。

 シュウが返事をすると。

 サーシャがドアを開けて入ってくる。

 後ろ手でドアを閉めようとしている所に向こう側から隙間に指が差し込まれる。

「わーたーしもいーれーてー」

 向こう側からドレーヌの声が聞こえる。

 聞こえないふりをしながらそのままドアを閉めようとするサーシャ。

「痛い痛い痛い!

 指が!指が千切れる!」

「もう、仕事してください」

 本気で泣きそうな声になったドレーヌをドアを開けて中に招きながら呟く。

「もう少ししたらあいつが帰ってくる時間なんだもん」

 ドアに挟まってた指をプラプラさせながらドレーヌが入ってくる。

 指が真っ赤になっている。

 いつも冷静なティアリスもそれを見て、冷や汗をかいている。

 ドレーヌが先程の椅子に向かう途中でシュウは立ち上がって近づく。

 スッと近づき真っ赤になった指の手を取る。

「「「え?」」」

 空いた手で腰のポーチを探り、軟膏型の傷薬を取り出す。

(ポーション程即効性は無いが、安価で効能幅広い。ただ打ち身や小さな擦り傷までで、血が出る程の切り傷になると医者に行きましょう。

 ちなみにこれもシュウの自作なので買ってすらいない)

 赤くなった指に傷薬を塗り込みながら、

「誰か冒険者の人で苦手な人でもいるんですか?」

 軟膏を塗り終わった手に今度は清潔な包帯を巻いていく。 

「ああああのだだだ大丈夫ですのでっ」

 ドレーヌが真っ赤になりながら慌てた声でシュウを止めようとするがササっと巻き終わって椅子に戻る。

(……)

 椅子に座って周りを見るとなぜかティアリスも立ち上がっていた。

「みんな座らないんですか?」

 周りを見上げながらシュウが呟くと、三人は同時に椅子に座った。

 ドレーヌは包帯が巻かれた指を反対の手で撫でている。

 他の二人はそれを凝視している。

「で、先程おっしゃられてた「あいつ」とは?」

 シュウは包帯を撫でるドレーヌに質問を繰り返す。

「あ、えーっと……」

 ドレーヌが質問に歯切れが悪いように視線をさ迷わせながら、言葉を探しているようだ。

「ドレーヌさんはある冒険者に付きまとわれてるんですよ」

「ちょ、ちょっとサーシャ!」

 横からドレーヌの事情を暴露したサーシャに今度はドレーヌが口を塞ごうとするが、サーシャの手に止められている。

「なるほど。

 その冒険者の方がもうすぐ帰ってくるんですね」

 納得したシュウはドレーヌを改めて見ると、冒険者が惚れてしまうのもわかるぐらい美人でスタイルがよかった。

(ん?

 ここにいる三人ともみんな美人じゃないか。

 それぞれタイプが違うけど)

 目の前で未だその冒険者の事で話をしているサーシャとドレーヌ、そして隣で我関せずと口を挟まないティアリス。

 それぞれが別の方向の魅力を持っている美人だ。

 とりあえず、それはいいとして(?)話を切り出さないとずっとこのまま進まなそうだ。

「あの、それで結果はどうでした?」

 話を振ったシュウは悪いなと思いつつもクエストの結果も気になる所だ。

「あ、ええと。

 それでは、まずは正規に受けられましたキリア草採集のクエストの方からしますね」

 サーシャが手元に用意していた袋をシュウとティアリスの方へ差し出してくる。

「鑑定した結果、どれも高品質のキリア草だったので報酬も上乗せされてます。

 採集の方法も丁寧で傷もなく、他の冒険者の方も見習ってほしいくらいと係員が言ってますね」

「採集の仕方はティアのお陰ですね。

 僕も少し教わってましたが、さらに詳しく教えてくれたんですよ」

「ティアリスさん、噂になるほど討伐依頼を受けてられたみたいですけど、これからは採集依頼もドンドン受けて欲しいですね」

 サーシャの手元の資料を覗き込みながらドレーヌが告げる。

 ちらりとティアリスを見ると顔を背けて窓の外を見ている。

(照れ隠し?

 うーん……

 いつも冷静なんだけど、その中でも何か反応が違う時がある……)

「それでもう一件の方ですが」

 サーシャが手元の資料を机に置き、預かっていたギルドカードを二人の前に置く。

「たしかにお二人のギルドカードにはロックホーンを鎮静した記録がありました。

 カードの判定とギルド長の判断で、クエスト:暴走ロックホーンを解決したと認められました。

 よって、報酬がこちらになります」

 サーシャは書類と一緒に持ってきていた巾着型の魔法鞄からドサッと言うほど重く膨らんだ袋取り出して、キリア草採集の報酬の横に置いた。

 キリア草採取のクエストはEランクだったが、聞いた話ではロックホーンはDランクのクエストだったはず……。

 ランクに差はあれど、ロックホーンの報酬は多すぎではないだろうか。

「ロックホーンの報酬多すぎじゃないですか?」

 Eランクでも簡単な採集クエストな(シュウにとっては簡単だったが、実はとても見つけ辛い)キリア草の報酬と比較するのも不十分だが、その報酬の十、いや二十倍は袋に詰められている気がする。

 そう思ったシュウはサーシャに質問をしたのだが、


「え?

 これでも依頼主が渋ったみたいで少ない方ですよ。

 ()()()()()()()としては。

 お二人はどうやってロックホーンを撃退されたんですか?」


前回に引き続きギルド内での話でした。

あれ?進んでなくない?

雑談ばっかでギルドの人仕事遅くない?

今回のイメージは給湯室のOLさんの会話(勝手なイメージですが)。

普段の窓口の手続きはテキパキと処理してとても早いです。

ですが、個室で他の目がないというのと今までもシュウが知らないことを聞くので普段から時間がかかっています。

サーシャはそれに慣れてしまっていて、それを聞いていたドレーヌは指を犠牲にしてサボ……手伝いに来ました。

この日の終業後ギルド長に二人は怒られます。

ちゃんと仕事はしましょうね。


ここまで読んで頂きましてありがとうございました。

皆さんの空いた時間を埋めることができたのなら幸いです。

これからもよろしくお願いいたします。

それではまた~

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