62.未来を夢見て
外出できないお休みの日に
こんなのでよければ
お時間を潰すのにご利用ください
ティアリスの体を拭き終わると、寒くないように乾いた大きめのタオルかけておく。
焚火を挟んで反対側に少しは乾くことを期待してシュウの装備とティアリスのローブを並べておく。
できることならティアリスが起きる前に乾いて戻して起きたい……。
(起こさずに着せられるのか……?)
慎重に脱がせることで起きなかったが着せる時も同じとは限らない。
(とりあえず、早く乾いてくれ)
と心の中で願うシュウだった。
そして、シュウにはやることがなくなってしまった。
できる事なら、シュウも少し眠りたい。
クレヴァとの戦いは一瞬も気が抜けず、精神的にも体力的にも消耗してしまっていた。
少しでも気を抜いて休みたかった。
ただ、ここは街の外。
二人して寝るには危険すぎる。
魔物除けも持っているが使うかと言われれば我慢するところだった。
なぜならもう雨宿りしている木の反対に行けば街の外壁が見えていたから。
シュウは疲れの溜まった肩をグルグルと回したり伸ばしたりして少しでも疲労を抜こうと試みた。
ストレッチをしているうちにティアリスの肩の傷から腕の古い傷の事を考える。
(女の人の肌だしな~。
この先ティアリスさんがどんな人と出会うかわかんないけど、傷跡ってあるよりはない方がいいよな。
さすがにこの世界でもみんな冒険者ってわけじゃないし)
危険な依頼などを受けることが多い冒険者には、一生残る古傷が付き物である。
しかし、この世界にも冒険者以外の人々もたくさんおり、その常識が通じない人もいるだろう。
(ティアリスさんぐらいの美人なら貴族の人の目に留まって、声かけられるかもしれない。
そんな時、少しでも傷跡が少ない方がいいだろうな。
ドレス姿とか見てみたい)
一瞬そんなことも考えるが、
(僕の前で着る機会なんてないか……)
と、肩を落とす。
そんなことよりも今は傷だ。
ポーションでは消すことができないほど時間が経ってしまっている。
それは先程ポーションを使って試してみてもいる。
(まあ、古い傷でも元通りになるなら、冒険者ギルドの先輩たちも傷跡残っていないだろうしな)
シュウよりも数多く、過酷な依頼を達成した高ランクの冒険者達には顔や腕の見える所に古傷が残っている人が少なくない。
古傷は冒険者の勲章だ。と見せびらかすようにしている先輩もいるが、シュウ的には治せるものは治した方がいいのではと思う。
伊達に兄が医大に通い、日頃から医療の話を聞いている訳ではない。
(ん?
医療……日頃……兄……)
少し頭に引っかかるものがある。
(あっ!
こっちの常識でダメでも、地球の知識なら?)
どっちかというと医療というよりも、スキンケアや美容の範囲かもしれないが、形成外科の知識も使えば傷跡を完全に消せなくても小さくしたり、目立たなくできるかもしれない。
そして、運よくシュウには地球の医療について調べる方法がある。
(アルテ!
魔術書に取り込んだ医学の本見れる?)
シュウは魔術書に取り込まれた地球の医学の本についてアルテに尋ねる。
頭の片隅で図書館にどうやって返すか調べておかないととも思った。
『是。
可能。
キーワード検索も可能。
求む。
調べたい事柄、単語の提示』
アルテの返答に早速ホルスターから魔術書を取り出し、現代知識で知っている肌の知識から足りない部分を挙げて調べていった。
目を開けて広がる空は雲一つなく澄み切った青だった。
いつの間に眠ってしまっていたのだろう。
一瞬のうたた寝だったのか、しばらく時間が経っているのかわからない。
そして、ここはどこだ。
何をしていたのかも思い出せない。
周りを見渡して景色が目に入ってくる。
ここはーー。
「ここはお父さんの薬草畑?」
そこは家の裏にある、お父さんが世話をしている薬草畑だ。
あたしの傍らには摘まれた薬草が半分程入っている籠が置かれている。
「あ、あたし薬草採るお手伝いの最中だった?
大変急がなきゃ!」
お父さんに頼まれた薬草の採集の途中で眠ってしまうなんて、急いで残りの半分を摘み取らなきゃ。
五歳頃からお父さんから治癒術、お母さんからは攻撃魔術を学び、七歳を超えた最近になってやっと薬師でもあるお父さんの手伝いで薬作りも教えてもらえるようになった。
それなのに、基本にして大事な薬草の採集で寝てしまうとは……。
薬草を摘みつつ家の様子を伺います。
長い時間寝てしまっていたなら、心配性な二人は様子を見に出てくるでしょう。
「ふ~」
そんなに時間は経ってないようで家の方からはお父さんやお母さんが心配する声も聞こえません。
安心はしましたが、早く薬草を摘み切ってしまうのがいいと思います。
いい薬草を探そうと畑に目を戻します。
今日はいい天気でポカポカです。
これは眠気が来ても仕方ありません。
優しく吹く風が時折肌から熱を拭い去ってくれて心地よいです。
風の精霊さんでも遊びに来たのか今日はくすぐったい程、体の周りを風が吹きます。
お母さんはあたしは風の魔術と相性がいいねとよく褒めてくれます。
あたしも風さんは大好きです。
そんなことを考えながら左手で薬草を摘もうと手を伸ばした時に、
ズキッ
「きゃっああああ!」
急に左肩に痛みが走ります。
左肩を見るといつの間にか服を血が赤く染めています。
「痛い……。
痛いよぉ……」
痛みに涙も出てきました。
いつの間にこんな大怪我をしたのでしょう?
さっきまではこんな怪我はありませんでした。
「お父さん……お母さん……。
痛い!痛いの!」
痛みで立てず、家に向かって叫びます。
ですが、いつもならすぐ駆けつけてくれるお父さんやお母さんが出てきません。
「お父さん!お母さん!
助けて!」
再度、助けを叫びますが家からは物音ひとつ返ってきません。
今度はそちらの方も気になります。
娘が心配で事あるごとに確認に両親が一度も顔を出しません。
「お父さん?お母さん?」
肩の痛みで呟くような声を出しつつ、痛みを堪えて震える足に力を入れて立ち上がろうとします。
「つっ!
いたっ!」
今度は右足首に鈍い痛みが走ります。
よく見ると右足首もいつの間にか赤く腫れあがっています。
「なんで?なんで?」
急に現れた肩と足首の怪我に普段は年の割に冷静な彼女も頭が真っ白になってしまいました。
「なんで?どうして?
誰か、助けて!」
声を上げますが誰も来てくれる気配はありません。
両目から頬を伝って涙が流れ落ちていきます。
それ以上に肩の傷から流れ出る血は多く腕から指に伝い、地面に血だまりを作りつつあります。
早く家に入ってお父さんに治してもらわないと……。
痛む右足をかばって、左足に力を込めてなんとか腰を上げました。
ズキズキ痛む右足を引きずって少しずつ家に向かいます。
「お父さん!お母さん!」
近づくことで気づいてくれることを願って叫びます。
扉を開けて飛び出してくる姿を想像します。
が、それはいつまで経っても現実にはなってくれません。
いつもなら小走りでもそんなにかからない畑から家までの距離が今は何百倍も遠く感じました。
それでも、辛抱強く歩き扉の前にたどり着きます。
扉のノブに手をかけ、
「お父さん!助け……」
呼びかけながらノブを回し、扉を少しずつ開けました。
少しずつ広がる隙間から中の様子を覗きます……。
そこは真っ赤な血の海でした。
そこはいつもは普通の家庭の居間だったはずでした。
それが床が壁が天井が血飛沫によって赤く染まっています。
そして、その血の持ち主達も赤く染まってそこにいました。
そう、あたしのおとうさんとお母さんです。
ふたりは折り重なるように居間のまんなかにたおれています。
あたしは痛みもわすれてとびらの隙間からめがはなせなくなっていました。
「あ、あ、あァ……」
さっきまでたすけをもとめてさけんでいたのどから声がでません。
あたまもまっしろに……
いえ、めのまえのちのうみによってあたまのなかもまっかになったようになにもかんがえられません。
オかしくなりそウです。
あたしはトビラのすこしのすきまからナカをのぞいていました。
「っ!」
不意にその隙間の向こう側に「眼」が現れ、こちらを覗いています。
扉の反対側で同じようにしてこちらを覗いているようです。
ただ不思議なことに「眼」以外は真っ黒で何もわかりません。
「……あ、ああ、あアあ、アアあ……」
きょうふからひめいもあげられません。
そんなあたしに、
「ヤットミツケタ」
「眼」がこえをかけてきました。
おとこのヒとなのかおんナのひトなのかハッきリとききとれませんが、フシぎといってイルことはワカリます。
「ソンナトコイナイデイコウ?」
「眼」がアタシにむかってイイます。
「眼」ガとびらをアケようとシテいるのか、すきまがスコシずつヒロガッていきまス。
あたしはコワサのあまリニいっポさがってしまいマシた。
デスが、
さげたあしがじめんにふれることはありませんでした。
足元にぽっかりと闇が広がっています。
そこになすすべもなく落ちていきます。
落ちる瞬間、最後に見えた扉の隙間から両親が不自然に顔を向けて私を見つめているのが見えました。
前話でも書きましたが終わりませんでしたね
ほんとササッと終わってる予定だったんですが……
これを読んでいる皆さんがいつ読まれてるかわかりませんが
この話を考えている時、某ウィルスのワクチンを打ちました。
反作用の熱で寝込みましたがどうしようかなーと頭で考えていました。
で、できたのがこの話の後半ですね。
皆さんもお体大事にしてください。
いのちをだいじに




