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異世界王道冒険譚  作者: 雪野ツバメ
第二章 冒険者と仲間
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53.クエスト開始

 街門から草原に出るとどんよりとした空が目に入った。

 街の中だと不思議と空に目がいかなかったので、曇った天気に気が付かなかった。

 やはり曇っている空よりも青く澄んだ空の方が気持ちがいいし好きだった。

 晴れて気温が上がるだけで、体の中から温められて体力が満ちてくる。

 そんな中、曇天の草原を北に歩いて行く。


 午前10時30分

 ブランジリから草原を北に向かうと高く険しい山が広がる。

 目的の亜麻はその手前に生えているらしい。

 どんよりとした空を見上げながら、

「雨降るなよ~雨降るなよ~」

 と、祈る。

 ささっと目的の亜麻を依頼の量と少し自分用に集めて、ささっと帰りたい。

 体の疲れはほぼないが、昨日の戦いの緊張が精神的な休息を求めているようだ。

(早く帰って息抜きに昼寝をしてもいいし、ビアンゼさんを軽く手伝ってもいいな。

 リームちゃんと買い出しでもいいし。

 クランとリンを見に行って、僕も何か教わるのもいいな)

 クエストを早く終わらせて、できた時間でどうするかでうきうきしながら教えてもらった亜麻の採集場所を目指す。

 

 午前10時43分

 聞いてきた亜麻の採集場所はこの辺りのはずなんだが。

 場所の確認をするために地図を鞄から取り出す。

 地図を広げようとした時、地図が輝きだした。

「へっ?」

 呆然と掴んでいた地図を見ていると、輝きが強くなり、光の粒子となって地図が消えてしまった。

 光の粒子は風に流れるようにシュウの周りを飛び、腰のホルスターの魔術書に吸い込まれていった。

『地図を入手しました』

「入手しましたじゃねえ!

 元から持ってたよ!」

 ホルスターから魔術書を引っ張り出した。

 例のごとく、淡く光っている。

 魔術書を開き、最初のもくじに予想通り「地図」が増えていた。

 そのページを開くと、買ってから何度も見た地図がそのままそこに描かれていた。

 いや、そのままではない。

 今までクエストで行った場所だと思わるところは細かく記されている。

 薬草を採取した群生地には、そのメモと周りの岩なども描かれている。

 持っていた地図には岩は描かれていなかった。

 地図では平らにしか描かれていなかった草原も実際には緩やかな起伏があったりするが、新しい地図には小高い丘や見つけた小さな泉などが描かれている。

 その地図にまた唖然としながら見つめていると、

『マスターの記憶から入手したデータを地図に追加しました』

(また記憶覗かれたの?)

『否。

 以前に記憶から入手したデータを保存しており、記憶の閲覧に制限がかけられてからは閲覧しておりません』

(なるほど。

 それにしても、こんな細かく。

 すごいね)

『……』

 あ、なんとなく人だったらすごいドヤ顔されてる気がする。

(この地図、僕の今までの記憶を元に描いてるなら、これから新しく行くところはまた記憶を覗く必要がある?)

 地図には今まで訪れた場所は記されたが、これから新しく行った場所を増やすには、魔術書に記憶を覗かれる必要があるのか気になったので尋ねたのだった。

『否。

 過去にマスターが訪れた場所のデータを記憶を閲覧することで入手したまでであり、これからマスターが行く先は自動書記が可能です。

 自動書記を有効にしますか?』

 なん……だと……。

 地図の自動書記……。

 所謂オートマッピング。

 そんなこともできちゃうわけ……?

(お、お願いします)

『自動書記を有効にしました。

 この先、右手前方30mにクエストの採取対象「亜麻」があります』

 カーナビかっ!

 心の中で突っ込み、示された方向へ歩き出した。


 午前11時02分

 魔術書が教えてくれた場所とその周辺に亜麻は生えていた。

 最初はてきとうに採集して帰ろうと考えていたのだが、ここでまた魔術書が発動した。

『鑑定。

 亜麻。アマ科に属する一年草。

 茎の繊維から衣類に用いられる。

 麻よりも繊維が柔らかく、より衣類に適している。

 種からは食用に使用できる亜麻仁油が抽出可能。

 品質中』

 これが自動鑑定か。

 魔術書が話し出す前の鑑定は頭に鑑定結果が浮かび上がるという形容しがたい方法だったが、魔術書が細かくおしえてくれるのでこちらの方がいい感じだ。

(最後の品質中とは?)

『現在手に取っている亜麻の品質。

 品質の高い物を用いることで、作成される物の品質を高めることが可能。

 クオリティ』

 英語に翻訳してきたわ。

 そういえば、さりげなくデータとか言ってた気がするし、僕の記憶から英語も引っ張り出されたのだろう。

(これ、自動鑑定で高品質の物だけ集めるのも簡単なんじゃ……

 いや、ダメだ。

 それだと、僕だけの時に判断できなくなる。

 どれが高品質なのか、どうなってたら品質が違うのか見比べながら集めよう)

『……』

(この亜麻の品質は?)

 新しく採った亜麻を手に問いかけてみる。

『品質低』

 少し茎が黄色っぽくなってる気がして、少し萎びてるかな。

 次は緑が濃く、活き活きとした亜麻な気がする。

(これは?)

『品質高』

(よし。

 あ、自動鑑定も僕が聞いてから鑑定するようにできる?)

『了。

 自動鑑定を非自動に設定。

 マスターの要求に応じて鑑定を実施』

(自動でできるのになんか悪いな)

『……』

(よし、じゃどんどん採集していこう!)

 品質の良さそうな物を選んで採取し、少しずつ亜麻が集まっていく。


(そういえば、キミの名前も早く決めないとね)

『……』

(実際のところ、キミは何が話しているの?)

『……マスターのスキルより派生したスキルでありそれ以上でも以下でもありません』

(ふーん。

 スキルってことは何か名前がもう付いているの?)

『……近いモノであるなら、自動鑑定が近いかと』

(それは何か違うよな~)

『マスターの記憶から近しいモノに例えるならば、AIが近いかと』

(AIか~確かに自分で考えて話すから近いっちゃ近いんだけどな~。

 僕のイメージでAI、人口知能ってまだ感情がないものなんだよね。

 将来の地球では、どうなるかわからないけど。

 キミはそうじゃない気がするんだよ)

 シュウは刈り取った亜麻を持ち上げる。

 亜麻には小さな青っぽい色の花が咲いている。

(亜麻と言えば、花はこんな青っぽくて、茎や葉っぱは緑色で。

 亜麻色って聞くけど、青や緑系統の色じゃないよね)

『……亜麻色は亜麻の繊維の色から来ており、茶がかった金、栗色を指す場合に用いられます』

(なるほど。

 うーん。

 ……何かいい名前思いつかない?)

『……自己命名機能は持ち合わせておりません』

(機能なんてまた機械みたいに……。

 僕はそう思わないからな)

『……』


 ガサガサッ


 近くの茂みが揺れる。

 とっさに距離を取り、腰の小剣に手を掛ける。

 茂みから顔を出したのは少し大きめの野ウサギでお馴染みのワイルドラビットだった。

 こんな近くまで気づかないなんて油断をしていたわけではないが、少々物思いにふけりすぎたようだ。

 現状で集めた亜麻を袋に入れる。

「あ~たまにはこういうのんびりとした採集もしないとな」

 体伸ばしながら独り言ちる。

 そういえば昨日の蟻との戦いが思い出されるが、一昨日は地下水道の探索でゴブリンとも戦ったんだった。

 思い出しただけで疲れが戻ってきた気がする。

「あーもっと天気が良かったら、このままここで昼寝もいいのにな~

 光合成して疲れ取りたいよ」

『告。

 マスターは人であり、葉緑体を持たないため光合成は出来ません』

「あははっ。

 冗談だよ」

 シュウは笑って、もう一度体を伸ばした。


 午前11時17分

意地でも冒険はしない!

前々話で「麻っぽい植物」と言ってましたが、

クエストを依頼するのに対象が曖昧ってどうかと思いましたので

前々話の該当箇所を「亜麻」に書き直しました。

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