表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/100

第四十話「二人…」

評価、ブックマークありがとう御座います。

 ◆


 ダリの街の路地裏に、俺とスゥーミラはフードを被り、スゥーミラが助けたと言う二人の子供達を尾行していた。

 気配を殺し、気配を探り、一定距離を保って後を追う。

 これでも一流の冒険者だ。 尾行対象に気取られぬ様に動く事は朝飯前だ。

 スゥーミラはもともと気配隠蔽魔術を行使して、度々俺のベットに潜り込むほどの達人だ。 何時も俺の気配察知を掻い潜る手腕は、暗殺者にでもなれるんじゃないかと思う程だ。

 スゥーミラの話だと、気配隠蔽魔術は、人の五感全てに干渉して、認識阻害するのがコツだそうだ。 説明されても魔術が得意でない俺には難しい技術だ。

 しばらく二人で後を付けていると、少年と少女は格式の高そうな宿へと入っていった。

 相手は貴族の令嬢と執事、泊まるところはそれなりの所を選んで居るのだろう…


「ヴィリー様、二人は宿を取ったみたいですね」

「ああ、念の為に俺たちも同じ宿にするぞ… スゥーミラは確保した宿のキャンセルをしてきてくれ」

「そんなぁ…」


 残念そうにするスゥーミラ。 また良からぬ事を考えて居たのだろう。


「何か不都合でもあるのか?」

「な… 何でも無いです…」


 そう言うとスゥーミラは、しぶしぶ街の中へと消えていく。

 残った俺は様子を覗ってから宿へ入り、先に宿を取った二人の少年少女を、内密に護衛していると嘘の事情を説明しすると、宿の主人は(こころよ)く近くの部屋を用意して協力してくれた。

 だが、困った事にこの宿、なかなかの高級宿で、一泊銀貨一枚もする部屋しかない、貴族御用達の宿だった。 そこそこ程度の良い宿でも、一泊小銀貨二枚~三枚と言った所。 普通の冒険者が泊まる宿なら銅貨五枚~小銀貨1枚くらいまでだ。 二人が泊まった宿がどれほど高級宿か分かるだろうか?

 さすが貴族のご令嬢と執事だ。 泊まるところに金の糸目を付けないと言った所か… いくらバロンメダルの俺でも、二部屋用意するのは気が引けた。 俺はしぶしぶ二人部屋を用意し、スゥーミラを待ちながら二人の動向を監視した。


 ◆


 暫くして、宿のキャンセルに行っていたスゥーミラが、ノックと共に部屋の中へと入ってくる。 宿の主人に連れが後から来ると言って置いたので、俺の名前を出して案内してもらったのだろう。 俺も直ぐに動ける様に部屋に鍵は掛けていなかったので、スゥーミラは有無を言わさず入って来た。


「ヴィリー様、二人の様子はどうですか?」

「今のところ動きは無いな…」

「大峡谷に向かうの、ちゃんと諦めてくれたんですかね?」

「まだ何とも言えないな…」


 そう言いながらも俺は子供達気配を探り続ける。


「ヴィリー様はお優しいですよね…」

「俺が?」

「はい… 見ず知らずだった私も命懸けで助けくれたし、今もこうやって出会ったばかりの二人の子供を、心配して尾行までして」

「俺はただ無茶をして、早くに命を散らすかも知れない子供達を、捨て置けないだけだ」

「照れなくても良いのにぃ」


 そう言って彼女はニヤケる。


「ほっとけ」


 俺はそう言って照れ隠しに後ろを向いて頭をかく。

 そんな俺に、彼女は後ろから抱き着いてきた。


「何のつもりだ?」

「何か照れるヴィリー様も良いなって思っちゃってつい…」


 背中越しに彼女の温もりを感じる。

 彼女の柔らかな胸が押し当てられて動くに動けない…

 俺の意識が彼女の胸に集中していると、彼女はぼそりと呟く。


「ねぇ… ヴィリー様…

 やっぱり私じゃダメですか?」

「……」


 俺は返す言葉が浮かばなかった。

 彼女と出会ってからもう二年になる。 最初こそ何だコイツはと思ったし、正直対人関係の得意でない俺には、相手にするのが面倒で仕方なかった。

 どう対処して良いかも分からなかったしな…

 しかし、健気にもこんな俺に尽くす彼女は、何時も一生懸命で、バカだけど何故か憎めなかった。

 こうやって二人で旅をしていて、尽くされ続けているのに俺はそれに応えていないのだ。 なんだか彼女に悪い事をしている気がしてくる。

 ただ、俺はずっと独りだった。 彼女の気持ちに応えて今の関係が崩れてしまうのが怖かった。

 俺が答えないでいると、スゥーミラは部屋を見渡して呟く。


「あの… ヴィリー様? 二人部屋にしたんですね…」

「あ… ああ… 宿の代金が思ったより高かったんでな、仕方なく二人部屋にした。

 た… 他意はないからな!」


 一応断っておく。 変な誤解されても面倒だし、スゥーミラなら襲って来かねない。


「本当ですかぁ?」


 彼女はジト目で俺を見つめてくる。


「ないったらない!」


 そう言って俺は否定しようと慌てて振り返ったら、スゥーミラは俺に弾かれる形で体勢を崩してしまった。 このままでは俺のせいで彼女が怪我をしてしまうかもしれない。 俺は思わず「スゥーミラ!」と叫び彼女を手で引っ張り返した。

 そして咄嗟の事で俺も体勢を崩し、戻って来たスゥーミラ共々ベットに倒れ込んでしまった。


「す… すまない…」

「…… えっと…… はい…」


俺が彼女をベットに押し倒した見たいな構図に、デジャヴを覚えるが、彼女は少し違った様だ。


「ヴィリー様… 初めて私の事名前で呼んでくれましたね。 嬉しいです」


 彼女はそう言って、凄く嬉しそうに頬を染める。

 思っていた反応と違い、俺も気恥ずかしくなる。 無意識とは言え、彼女を名前で呼んだ事に自分でも驚いている。


「えっと… その…」


 俺が何て言って良いか分からないで居ると、スゥーミラはそっと俺に手を重ねてきた。


「ヴィリー様さえ良ければ、これからも名前で呼んでくれると嬉しいです…」

「いや… 何かな……」

「呼んでくれないんですか?」


 俺が照れて言葉を濁すと、スゥーミラは悲しそうな顔をする。

 何かスゥーミラのそんな顔を見たくないと思えた。


「ぁあもう! 分かった。 呼べば良いんだろ呼べばっ」


 俺は頭を掻きながら、やけくそ気味に名前で呼ぶ事に同意する。


「ヴィリー様… もう一度名前で呼んで欲しいです」


 するとスゥーミラは嬉しそうに俺に微笑みかけ、悪戯っぽくそう言う。

 俺はため息をついてから、「スゥーミラ……」と呟く様に名前を呼ぶ。

 スゥーミラは目を細め、満足げだ。

 俺はそんな彼女にデコピンをしてから「調子に乗るな」と付け加え、彼女から離れようとした。

 しかし、今度はスゥーミラから俺に近づき、そのまま彼女は俺の唇に唇を重ねて、俺をベットに押し倒した。

 突然の事に俺は頭が真っ白になり、目の前の彼女顔をただ目を見開いて見つめる事しかできなかった。

 重ねた唇から伝わる彼女の甘い香りと柔らかな感覚、そして息遣いが肌を撫でる。

 彼女はただ目をつむり、俺の口に舌を絡ませる。

 俺は我に返り、慌ててスゥーミラの肩を掴んで引き離す。


「な… 何を…」


 早鳴る鼓動を感じながらも、俺はかろうじてそう呟く。

 スゥーミラは無言で俺を見つめ返し、頬を染めて目を潤ませる。 混乱する俺は、そんな彼女から目を放せなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ