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転移したらミミックになってしまった件。  作者: アイキ@kohe75438489
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相澤愛樹の類希ない日常

 相澤愛樹はいつものように目を覚ますと、目の前にあるはずのものがなかった。それは眼鏡である。彼はかなりの近眼で、眼鏡がないと侭に歩くことすらできない。そんな彼がメガネの予備を用意していない訳もなく、彼はメガネケースから予備を取り出す。そうしていつものように大きく口を開けてそれを食べる。そうすることで遠くのものも見えるようになるから不思議だ。近くにはいつも彼が通っているフルート教室が有り、その音楽が聞こえてくる。どこかずれたその曲調に彼の視神経は麻痺していく。近くから聴こえてくるノイズの音が彼の背中を押す。彼は何処に行くかもわからない岐路に立たされているのだ。つまり、眼鏡を吐き出して日常へと舞い戻るか、眼鏡を消化して何事もなかったかのような詰まらない人生を歩むか、その二択である。

 彼は落ち着こうと、ロータリーに腰掛ける。数多くの人が通行しており、その全てが欺瞞に見える。どこから見ても人間のようで実は怪物なのではないか?例えば、そこにいる少女は実はキメラという実験生物で人間社会は全て彼ら合成獣が支配しているのではないか?そんな妄想が彼を支配する。彼はいつもどおり右手の親指を噛み、その精神を落ち着ける。


「この世は須らく邯鄲の夢か…。馬鹿馬鹿しい…。もし夢だというのなら、もっと都合の良い展開にしてみろ!もっと俺を楽しませて見せろ!」


 彼は高らかに笑いだし、連絡橋から列車に向かってダイブする。そうして彼は全治一ヶ月の骨折をして、入院するのだった…。これが彼のなにげのない日常だった。彼はそれでそれなりに満足していたし、そんな人生で終えても良いと思っていた。他人から見て非常に滑稽で笑ってしまいそうな彼の行動にも意味はある。その例をいくつか紹介しよう。

――彼は、幼女が好きだった。それを舐め回すように視姦する。もうそれは癖といってもいい。幼女がいれば必ず視姦する。そうしてそれらをすべて完璧に記憶して、服の色下着の形髪型、その動作全てにおいてノートに書き下ろす。そうして出来たノートは逐一警官に渡し、その出来をチェックしてもらうのだ。彼はそうして何時間か拘留されその日課としている。彼はそのためだけに訪れる警官の選別を怠らなかったし、彼と同じ趣味を持つ警官は決して選ばなかった。彼は適度に怒り、そのあと解放される警官を必ず選んだ。その為に彼は列車でわざわざ移動して警官の駐屯所を巡るのであった。

 そんな彼が今日は失敗した。警官がそのノートを見ても全力で肯定してくるのだ。しまった、彼は隠れ幼女スキーだった。3人に一人は必ずこうなのだ。彼の経験からして間違いない。そういう人は怒るふりをするが決してその言に非難はない。ただただ職務という名の暴力を振るうのみ。そうして彼は長々と拘束されトボトボと自宅へ帰るのだ。

――彼は、人間の首なし像を作るのが趣味だった。街ゆく人々を観察して、その形あるいは仕草を具に覚える。彼は石膏でそれらを再現し、首を破壊する。そうして出来た像を本人の前に持っていく。「お届けものです」と渡されたわれもの注意と書かれた品には、自身の首無し像がある。大抵人間は理解できない現象にあったとき、動作をやめ静止する。彼はその様子を視姦し、又ニヤニヤと止まらない笑みを浮かべるのである。人間をからかうのは面白いなぁ、と。

――彼は、奇抜な行為をしているわけではない。今日も下着をつけず、隠しカメラを脳内に持ち、上から下まで全身真っ赤な服装をしているが、社会のルールにのっとって生活している。実際彼が牢屋に入れられたことは一度もない。彼はそれなりに荷物を右から左に運ぶことが出来る。彼はそれなりに金持ちだ。彼はそれなりに時間を持て余している。ただそれだけのどこにでもいる普通の人なのである。

 彼が病院に入れられたことは一度や二度ではない。それは彼のライフワークに反するからだ。病院でも彼は奇抜な行動を辞めることはない。まず、自らをカーテンで縛る。そうして更に自らをベッドに括りつける。そのさまを看護師に見せつける。看護師は彼を奇妙がり近づかないが、それでも続けるのだ。そうして彼はまた眠りに就いた。もうその時から彼は人間をやめていたのかもしれない。

 彼が朝目が覚めると、眼鏡がなかった。彼は近眼で、眼鏡がないと歩くことすら覚束無い。彼はそのためメガネを二つ用意している。そうして彼は大きく口を開けメガネを食べる。そうすることで彼は目が見えるようになるのだ。いつものようにフルートの音が聞こえてくる。その音階がその繰り返しが、彼の何気ない奇抜な行動によって終わろうとしている。彼は無性にそのフルートを食べてみたくなった。ああダメだもう我慢できない。彼はそう言って、ビルにある教室に突入してフルートを舐め始める。やはり、他人が吹いたフルートを舐めるのは至高だ。彼はそのフルート教室を出禁になった。入会料は払ったし手順にも従った彼の行動のどこに咎があったのだろうか?否ない。彼は、何ら間違ってはいない。彼はただただ欲望に素直に生きる、人間そのものであった。人間は獣。その本性は須らく野蛮なものなのである。

 そうこうしていると、彼はいつものようにビルの屋上から飛び降りた。このくらいなら全治三ヶ月で済むだろうと思われたその最中に彼の前に次元の裂け目が現れ、飲み込まれてしまう。彼は自殺を試みた人として、死亡届がなされその活動を終えるのだった。

 次に彼が目を覚ましたのは何でもない洞窟だった。そう、ここは暗い。彼は近眼だ。メガネがないと行動ができない為常に予備を用意している。彼は、徐に懐からメガネを取り出し口に入れる。そうして彼は目が見えるようになるのだ。彼の目が暗闇に慣れてきた。彼は、唯唯前を見て、その洞窟に向かって頭をぶつけてみた。全く痛くない。どこかのスイッチを押してしまったようだ。彼のメガネには次のような文章が表示されている。

 アイキLV1ミミックHP10 AT5 DEF10 INT5 AGI1【スキル】収納上手(宝箱に物を詰め込むのが上手くなる)

 彼は、なんの前置きや説明もなく、ミミックと言うものになってしまったのだった。

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― 新着の感想 ―
個性的で良き ただ、もうちょいルビ振ってもらいたい。。。
[一言] 冒頭から恐ろしくシュールでたまげました
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