第10話 不幸スキルなんていらない
魔獣との戦い…となるはずがその先には?
遠くから魔獣の遠吠えのようなものが聞こえる。
魔獣の足音はどんどん近づいてくる…しかも大勢いるようだ。
「ゆ、雪…この数はさすがにやばいんじゃないか」
「そうね…ちょっとやばいかも」
ついに魔獣の群れが俺たちの前に現れた。
魔獣の群れなんて優しいものじゃなかった。軽く100匹はいるだろう。
「こ、こんなのどうすれば…」
「逃げるよ!!!」
突然雪は俺の手を引っ張り走り出した。
「うおっ…!!!!!はやいはやい、はやすぎる!!足もげる!!!」
とても人間とは思えない速さで雪は走り始めた。どんどん魔獣の群れが遠くなっていく。
これはもしかして助かるのか…?そう思った時俺はハッとした。
ただのフラグであったことに…
「しゃがんで!!急いで!!!」
雪が叫び俺をしゃがませる。
俺の頭上に猛烈な熱を感じた。
「一体何が起こったんだ!?」
そういいながら顔をあげるとそこにはそこにいてはいけないものがいた。
「ど、ドラゴン!?」
でかすぎる…一般人の俺が魔剣を使ったところで勝てる相手じゃない…
「私が注意を引き寄せておくからその間にあなたは逃げなさい」
「ゆ、雪な、なに言ってるんだ!?!?」
そういいながら雪はドラゴンに斬りかかる。
「ほら速く!後ろから魔獣が追い付いてくる前に!!」
くそ…どうしてこんなことになるんだ。俺の不幸スキルのせいなのか?どうしてみんな俺らを殺しに来るんだ…
普通の異世界ものなら強い相手が出てきてもなんかしらのチートスキルがあったりそこまで強くなかったり、殺意を持ってきたりはしないだろう。
一般人が魔剣とやらを持ったところ殺意むき出しの魔獣の群れとドラゴンに囲まれたらもうあきらめるしかない。
「ゆ、雪」
俺は身を挺して戦ってくれている雪を背に走り始めた。
「俺にもっと力があったらっ…」
雪と俺の命は一心同体だ。もし彼女の身に何かあったらわかるはず。
俺は全力で走る。走る走る走る。
追っては見えてこない…そろそろまいたのだろうか。
とは思いつつも念のために走って逃げ続ける。
30分くらいは走っただろうか?
どうやらまた森に入ってしまったらしい。
雪とスライム狩りして食事をとったのが懐かしくなってきた。そんなに昔のことじゃないのに…
雪はまだ生きている。ただそれだけはわかる、そして安心した。
雪はおそらく俺の居場所がわかるだろう。
彼女を待つためにも今ここで休憩をとるのもいいだろう。
「よし、ここらへんで休むか…」
少し見晴らしの良い場所で景色もいい。ここなら気分的にも安心できる。
俺は頭を整理する。
まず個々の異世界には何が起こったのか。殺人鬼や魔獣は生き残っていて普通の人間や生き物が全く見当たらない。
まず考えられるのは魔王の軍勢が攻めてきて町が全滅した、ということだろう。
またはそれ以外の何か強力なモノ。
そして俺がいまするべきは…
きっと生き残って何かの手がかりを手に入れることだろう。
何もしない限り俺も元の世界に帰ることができない。
ガサっ
「ん?」
今何か音がしなかったか?
こんな静かな森の中で自分以外の音はしていない。
するとしたら俺を殺そうとしてくる殺人鬼だ。
俺はいやな予感がして魔剣を構える。
俺はどうしても生き残らないといけない。
俺はふと思い出す。いや今まで考える暇がなかっただけかもしれない。
俺はこの異世界で一度殺されたはずだ。
どうして生き返ったんだ?
生き返るならば何度もやり直せばいいじゃないか、とは思ったがこれとは何かわけが違うように思う。
なんの根拠もないがおそらく今ここで死んだら俺はほんとにあの世行きな気がする。
まあ多少の根拠はある。
まず俺と雪の命は一心同体だ。俺が最初この世界で殺人鬼に殺されたときは雪は天界にいた。つまり死なない、無敵の状態だ。
しかし今は違う雪も俺も同じ世界にいる。しかも雪はほぼ神の能力を失った状態だ。
要するに前まで俺には神の加護のようなものがあったんじゃないかっていう考えだ。
それがあっているか間違っているかは知らない。
しかし今ここで死んではいけない理由にはなるだろう。
そして俺のいやな予感は当たった。
「お前が草壁幸太か?」
全身真っ黒のマントを纏った男が出てきた。
俺は魔剣をもう一度握りしめる。
「お、お前は誰だ…!」
次の瞬間俺の首に刃物があった。
「ひっっ…」
「おいおい、質問しているのはこっちだ」
男は笑っている。しかも背後を別の人間にとられている。
と、よく見たら俺は十数人のマントを纏った人間に囲まれていた。
ここで反論しても意味はないだろう。
「ああそうだ、俺が草壁幸太だ」
「お前は自分が何者なのかわかってここにいるのか?」
え、こいつは何を言っている…
「俺は異世界からやってきたんだ。この世界にはついさっき来たばかりだ」
俺がこういった瞬間周囲の殺気が強まった気がした。
「ほう、ここまで来て知らないふりをするかふふふ。まあいい、どちらにしてものうのうとここまで戻ってきたことは称賛しよう。敬意をこめてお前を殺すとしよう」
「!?!?」
次の瞬間俺の体全体に鈍痛が走った。おそらく鈍器で殴られたのだろう。
俺はまだ死ぬわけにいかないのに…くそっ
不幸スキルなんていらねえ…
心底そう思った瞬間だった
そして俺は意識を失った。
幸太の生死はいかに!?




