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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ


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第七十九話〜カフェをオープンする事になった② サンド対決〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。

 



 急遽、風邪をひいたお姉さんの代わりに、店長としてカフェをオープンする事になった私。現在の時間帯はちょうどお昼時だということもあり、店内はそこそこ賑わっている。



「ルノちゃん! ランペッジサンド二つね!」


「はーーい」



 決して暇ではないが、手が回らない程でもない。それはよかったのだが、一つ気になる事がある。



「ルノ! ランペッジサンドとチーズケーキね!」


「ルノさん、こっちはランペッジサンドといちごのロールケーキで……」


「はーーい」



 ちょっと皆さん。メニューをちゃんと見てますか?ルノサンドもありますよ?



「ルノちゃん! ルノチャンド二つね!」


「はいはい。ルノチャンドルノチャンド……きた!?」


「あ、ごめんルノちゃん! ランペッジサンドに変更で!」


「ズコッ……!」



 なんだ……せっかくテンション上がったのに。もう遅いが『ランペッジサンド』をメニューに入れた事を後悔した。同じサンドは二つもいらない!



「これはサンド差別だ。同じサンドなのにこれはおかしい。ランペッジさんが裏で何かやってるんじゃないだろうな……」


「へい、ランペッジサンドあがり!」



 今更だが一つ言っておこう。実は私は先程からケーキしか出してない。ではランペッジサンドは誰が?



「ありがとう、ランペッジさん! 追加で二つね!」


「任せろ、フユナちゃん!」



 本当にランペッジさんが裏(厨房)で何か(料理)してた!



「なんか楽だなと思ったら……ちょっとあなた。店長の許可もなく入られては困りますね! ほら、帰った帰った!」


「ちょ!? 誰だ君は! オレのサトリに頼まれたから助っ人に来たんだ!」


「あ、そうなんですか?」



 くっ……さりげなく仲良しアピールか! サトリさんも否定しないしな。今はこの場にいないだけか。



「あぁ。だからルノさんはケーキ類を頼む」


「いやです」


「え?」


「だって、ランペッジさんがランペッジサンド作ってたらそればっかり売れるじゃないですか。今からはランペッジサンドの注文がきてもルノサンドを出してください。どうせ両方パクリなんだからバレません」


「悪質!」



 だってこうもランペッジサンドばかり売れていてはルノサンドが可哀想ではないか。今日はまだ一つも注文きてないぞ……



「分かりました。それなら私も今から作るので『ルノサンド』と『ランペッジサンド』どっちが売れるか勝負です」


「な、なんだってーー!?」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 という訳で勝手に勝負を始めた私とランペッジさんは、それぞれ出来たてのものをサンプルとしてカフェの入口に置いた。



「これならサンド差別にあうこともないでしょう」


「望むところだ!」



 サンプルを置いたのは正解だったようで、カフェの前を通りかかった人達がどんどん入店してきた。



「ふふふ……これはすべてルノサンド目当てのお客さんですね」


「まだ分からないぞ。ランペッジサンドを食べてる店内の客を見て気が変わるかも」



 早くも火花を散らす私とランペッジさん。私達のそんな姿を見たフユナとレヴィナは……



「レヴィナさん。ルノとランペッジさんがイチャイチャしてるよ」


「これは三角関係というやつですね……」




 こうして、お昼のピークは本格的に始まった。


 予想通り『ルノサンド』と『ランペッジサンド』の注文がかなり入った。ご飯ものがこの二つしかないので当然だが。



「ルノちゃん、ルノチャンド二つね」


「はいはい、ルノチャンドーー」


「こっちはランペッジサンド入りまーーす!」


「こちらはランペッジサンド二つです……」


「任せろーー!」



 むむ……先程からずっとこんな調子だ。もはや数を数えている余裕などないが、おそらくランペッジサンドの方が売れている。



「うぅ、このままじゃ負ける……自分から挑んだ手前、負けたら恥ずかしい……!」


「はっはっはっ! ルノさん。罰ゲームの用意を忘れずにな!」


「!? そんな約束はしてませんよ!」


「むむむ? それはもう負けを認めたってことかな? (ニヤニヤ)」


「ぐぎ……! こうなったら……!」


「あっ、ルノさん! 逃げる気か!?」


「すいません、すぐに戻りますので」



 そして私は急いで外に出る。氷の箒を作り、飛ぼうとしたところで……



「ちょっとルノちゃん! 逃げる気!?」


「ぐええっ!?」



 サトリさんに引き止められた。思いっきり後から首を絞められながら。



「ち、違いますって。ちょっと家に取りに行きたいものがあってですね。一分で戻ってきますので!」


「ふーーん……そのままお昼寝とかしちゃダメだからね」


「し、しませんよ……たぶん」



 そんなこんなでなんとか目的の物を手に入れカフェに戻った私はさっそく作戦を開始する。



「まずは……っと」



 私は以前、家族旅行で撮った写真をサンプルの横に飾り『この人が作りました』と、説明書きをする。美女が作りました的な。



「ふふふ……あとは……!」



 急いで厨房に戻り、あの秘策を準備する。



「よいしょ」



 どすん!



「うお、なんだ!?」



 私の秘策とは手作りアイスだった。実は家族に好評だったあの日からちょくちょく練習を重ねてさらに腕は上達しているのだ。



「これをルノサンドのおまけとして一緒に出してと……ふふふっ!」


「反則だ! 改善を要求する!」


「現在、改善案は受け付けておりません」


「ちぃぃ! 店長を出せーー!」


「はい」


「店長ーー!?」



 そうなんです。忘れているかもしれないが、今日は私が店長だからメニューも思いのままだ。



「くそーー! じつはフユナちゃんがダメそうならルノさんを狙おうと思ってたのに見損なったぞ!」


「うわぁ……それってなんか妥協された感があって全然嬉しくないんですが」


「ならレヴィナさんだ!」


「ちょっと……手当り次第にうちの家族に手を出さないでくださいよ」


「こらーー! 二人とも注文たまってるから急いで急いで!」


「ひぇぇぇ!」


「うぉぉぉ!」



 勝負うんぬんの前にお客さんの量が凄かった。とりあえずさばき切ることを考えなければ!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そんな調子でランペッジさんとの勝負は閉店まで続いた。私はルノサンドとアイスを両方作らなければいけなかったので手間は倍増したが、負ける事を考えたら自然と力が湧いてきた。


 その結果……私は負けた。



「な、なんで……!?」


「ふっふっふっ……! はーーはっはっはっ!」



 くぅ……この悪魔め! まさか私の料理に毒でも盛ったのでは?



「まったく。なんの勝負してたのかは知らないけど……ルノちゃん。きみはアホなの?」


「ひどいっ……!?」


「だって……ルノチャンドとアイスを同時に出したらアイスが溶けちゃうに決まってるでしょ?」


「あっ……」



 そういう事でした。最初はそれでも注文してくれるお客さんはいたが、メニューを見てアイスがセットだと分かると次第に注文するお客さんも減ったいったと……



「それにサンプルを置くって案は良かったけどあの写真はなんなの?」


「よく撮れてたでしょう?」



 作った人の顔が分かるように置いたものだ。生産者の顔写真を乗せて安心安全を証明するあれと同じような意味。



「そこまでは良かったけど、複数人写ってる写真じゃちょっとね……下手したらグロッタが作ったと思われちゃうよ?」


「あぁ……!?」



 そう言ってサトリさんが目の前に置いた写真には仲良く写る私・フユナ・グロッタの三人。矢印でも書いておけば良かった……!



「……」



 呆然とする私。良かれと思ってやった事が全て裏目に出てしまったらしい。



「まぁ……とは言っても」


「???」


「勝負のことは置いておいて……お店全体の売り上げほ悪くなかったよ。メニューは少なかったからいつも通りとはいかないけど、それでも上々だよ」


「はぁ……」


「これも店長のおかげかな。ありがとね!」


「はい。お役に立てたのなら良かったですけど……しょぼーーん」



 正直、ランペッジさんとの勝負で頭がいっぱいだったので、そう素直にお礼を言われると若干申し訳なく思ってしまう。



「そう謙遜しないで。姉さんが元気になったら改めてお礼するからさ!」


「あ、いえ……そんなお気づかいなく」


「罰ゲームの件も後日改めてな!」


「ぐぐっ……!」


「あはは。何はともあれみんな、今日はご苦労でした! 本当にありがとうね!」



 こうして、嬉しいような悲しいような、複雑な心境のまま本日は終わった。まぁ、サトリさんやお姉さんの力になれたならそれでいいか。









 そして次の日。


 お姉さんの風邪も無事に治ったみたいで、カフェは通常通りオープンしていた。



「昨日は助かりました。改めてお礼を言います。ありがとうございました、皆さん」


「今日は私達の奢りだよ!」



 お姉さんが私達にお礼を言って、サトリさんと共に色々と料理を持ってきてくれた。



「はい、ルノチャンドも食べてね」


「ありがとうございます。じゃあ遠慮なくいただきますね」


「ありがとう、お姉さん!」


「い、いただきます……」




 ちなみに、余談……いや、私にとってはそこそこ重要な事なのだが、メニューを見ると『ルノサンド』の文字が消されていて『ルノチャンド』に改名されていた。



「あの、サトリさん。これって?」


「あ、それね……最初はギャグで言ってたんだけど意外と馴染んじゃってさ。これからはそれでいくね! てへぺろ」



 ある意味、ルノサンドが消滅した瞬間でした。



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