第七十八話〜カフェをオープンする事になった① 店長が風邪をひいた〜
〜〜登場人物〜〜
ルノ (氷の魔女)
物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。
サトリ (風の魔女・風の双剣使い)
ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。
フユナ (氷のスライム)
氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。
カラット (炎の魔女・鍛冶師)
村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。
グロッタ (フェンリル)
とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。
ランペッジ (雷の双剣使い)
ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。
スフレベルグ (フレスベルグ)
白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。
レヴィナ (ネクロマンサー)
劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。
コロリン (コンゴウセキスライム)
ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。
フユナとレヴィナのダイエットが無事に成功し、そのお祝い……という程のものでもないが、久しぶりにカフェへ行こうという事になった。
しかし。
「あれ? 今日、休みの日だっけ?」
たしか昨日がカフェの定休日だったので二日続けて休みというのは考えにくいのだが……
「こういうこともあるか。もしかしたらお姉さんの気まぐれで休みになったのかも」
「じゃあさ、温泉にいこうよ」
「あ、いいですね……」
「うーーん、そうだね」
この前、温泉旅行に行ったばかりだが本人達も乗り気なのでそうしよう。私も温泉は好きなので全く問題ない。
「んじゃ、今日は温泉! カフェはまた明日にしよう」
そして次の日。
「あれ、今日も休み? ついに閉店したとか?」
「旅行にでも行ってるのかな?」
ふーーむ……有り得なくはない。……が、なんか違う気もする。
「で、ではルノさん。今日も温泉というのは……」
「ん、あぁ……そうだね。せっかく出てきたんだし行こっか」
「やったーー!」
ま、さすがに明日はやってるでしょ。
そしてまた次の日。
「……」
「またやってないね」
「まさか本当に閉店……?」
とりあえず旅行ではないことは確定だ……これはまさか……
「うぅ……このカフェに通い始めてから約……何年だろ。忘れちゃったけど長い間お世話になりました……サトリさん……あと、ついでにお姉さん……あの世でもお幸せに……」
「なんの話?」
「いや、だから……お世話になったサトリさん。あとついでにお姉さんの来世での幸せを祈って……ん、サトリさん? 生きてたんですか」
「勝手にころすなーー!」
「ぎゃあああ!?」
サトリさんの魔法が炸裂し、グロッタ並の悲鳴が村中に響き渡った。
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どうやらサトリさんは買出しに出た帰りだったらしい。オープンしていない店内に案内され、そのままサトリさん達の部屋がある二階へ。私も前に来たことがある。
「ルノちゃん、そっちじゃないよ。こっちこっち」
「あれ、サトリさんの部屋に行くんじゃ?」
ということはお姉さんの部屋だろうか。
「姉さん、ただいま」
やっぱり。サトリさんがガチャっとドアを開けて入り、私達もその後に続く。するとそこにはベッドに横になったお姉さんがいた。
「おかえり。ルノさん達もいらっしゃい……」
「ご無沙汰してます。あの、大丈夫ですか?」
「いやぁ、実は姉さん風邪ひいちゃってさ。ここ最近はずっと看病しててお店もやすんでたんだよ」
「温泉旅行に行ってたんじゃなかったんですね」
「どこ情報さ、それ……」
まぁ、それは置いておいて。
「でも珍しいですね。あの極悪な鉄人とも呼ばれたお姉さんが風邪をひくなんて。手ぶらなのでせめて頭を冷やしてあげますね」
そして私はお姉さんの頭に手を翳して氷漬けにした。なんかアフロみたいになっちゃったな。
「うぅ……うぅ……!」
「良かったね……姉さんが健康だったら今のでルノちゃんは終わってたよ」
「あはは……まぁ、おふざけはこの辺にしといて……」
お姉さんのアフロを外して今度は真面目におでこを冷やしてあげる。
「風邪って言いましたけど大丈夫ですか?実は私達、昨日も一昨日も来たんですよ。お姉さんに会いたくて」
「それは悪いことをしてしまいましたね……」
「いえ、それは全然平気なので気にしないでください。それよりもせっかく来たので何かして欲しいことはありますか?」
「それなら、お願いがあります……」
「なんですか? 何でも……とは言いませんけど、私にできることでしたら」
「ルノさんにしかできないことです……」
「ふむふむ……」
ちょっと怖いが、私にしかできないならぜひやってあげたい。
「今日……今からカフェをオープンしてください……」
「???」
どういうことだ? お姉さんがこうして風邪をひいて動けないからカフェは休みなわけで、カフェが休みなのはお姉さんが風邪で動けないから。今もそれは変わらないはず。
「サトリさん、大変です。お姉さんが壊れました」
「ゴホッ! ゴホッーー!」
「うわっ!? ちょっとお姉さん!?」
ちょっとからかったら恨めしそうな視線をこっちに向けて咳をぶっかけてきた。子供か!
「はいはい、咳が出るならマスク。それがないなら手でこうして抑えましょうね」
「むぐーー!」
「で……どういうことですか、サトリさん?」
「えーーとね、つまり。ルノちゃん達も知っての通り、このカフェは姉さんの小さい頃からの夢そのものな訳だよ」
ふむふむ。確かにカフェに取材が来た時にそんな事を言っていたな。
「だからさすがにこう何日もお休みにするのは自分も嫌だし、いつも来てるお客さんにも申し訳ない……って事かな」
「そんなに私のことを……!」
「いやいや、そんなピンポイントじゃないから! てか、ルノちゃん、一昨日来たらしいけどその前の一週間くらい全然来なかったね」
「いや、それは理由がありまして。そちらにいらっしゃるフユナとレヴィナがおデブ化してしまってダイエットしていたんですよ。ぷっ!」
「むむーー……!」
「ぐぎぎ……!」
「あぁ……二人ともずいぶんケーキ食べてたもんね」
「そうなんです。サトリさんもいましたね」
「うん、見てた」
カフェでお茶するときはだいたいサトリさんもセットだからな。
「それで、話は戻りますけどオープンするにしてもお姉さんがこんな状態だから無理なのでは?」
「そこはアレだよ。姉さんとコンビ組んでたルノちゃんが厨房をやるんだよ」
「えぇ……!?」
確かに一時とはいえ、コンビを組んだのは事実だし、メニューの品も一通り作れるからできなくはないが……
「そういう事ならフユナも手伝うよ!」
「そうですね、私も……」
「おぉ! ありがとう二人とも!」
あぁ……これはもうやる流れになっちゃってるな。でもそれだと厨房は私一人になってしまう。
「安心してよ、ルノちゃん! ドリンク系のものくらいはこっちでやるから」
「そうですか……? まぁ、それなら何とか」
まだ少し不安はあるがお姉さんの気持ちも分からなくはないからな。
「ではその形でぜひやりましょう」
「おーー!」
「感謝するよ、ルノちゃん!」
「むぐむぐ……(ありがとうございます)」
あ、いけない。お姉さんの口、ずっと押さえたままだった。
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という訳で、まずは準備だ。さすがにいきなりオープンはできない。とりあえずは……
「では、今日一日は私が店長です」
「「「えっ?」」」
なんだこの『こいつ何言ってんの?』みたいな顔は。けっこう傷付くんですけど。
「私はお姉さんの代わりなので当然、店長です。コレ、重要」
「別に、何日もやる訳じゃないから店長だろうが何でもいいけど……」
「ふふ、決まりですね。では、まず……本日のメニューはコーヒー・チーズケーキ・いちごの(以下省略)・ルノサンド・ランペッジサンドの五つのみです。私の手が回らないので」
「その判断はいいけど、その『ランペッジサンド』って何さ?」
「よくぞ聞いてくれました。『ランペッジサンド』とはロッキサンドをパクっただけなのに私の『ルノサンド』より美味しいという忌まわしきメニューです。もちろん、ランペッジさんが作りました」
「ルノも同じ事してるよね(ボソボソ)」
「フユナさん、言わないでおきましょう……(ボソボソ)」
なんかボソボソと二人が言ってるな。
「ふーーん? まぁルノちゃんサンドより美味しいなら別にいいか。作り方は分かるの?」
「その点に関しては問題ありません。一度、ランペッジさんが作ってくれたのを食べたのでそれをパクっ……再現できるのでお任せ下さい」
「うん、分かった。ならそれで行こうか」
という訳で本日の方針はこれで決定だ。あと、不安があるとすれば……
「あと、一応聞きますが『私、厨房できます!』って方がいればぜひこちらに」
「「「しーーん」」」
「……」
くっ……あわよくばサトリさんに手伝ってもらおうと思ったけどやはりだめか。接客の中心がいなくなっちゃうもんな。
「まぁ、ここまできたらやるしかありませんね。メニューも少ないし大丈夫なはず……」
「よし! んじゃさっそくオープンするよ! いつもより遅いオープンだからいきなりお昼時で忙しくなるかもしれないから気合い入れてね!」
「「「おーー!」」」
こうして、私達は急遽、お姉さんの代わりにカフェをオープンすることになったのでした。




