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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第七十七話〜氷の魔女のダイエット計画〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の鍛冶屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『人に危害を加えない』事を条件に開放された。ちょっぴりアホキャラ。


ランペッジ (雷の双剣使い)

ロッキの街で出会った双剣使い。雷のような黄色い髪を逆立てた、ちょっぴり目つきの鋭い青年。


スフレベルグ (フレスベルグ)

白銀の大鷲。自宅に植えてあるロッキの樹にある日突然やって来て住み着いた。


レヴィナ (ネクロマンサー)

劇団として村にやって来た、ルノと同い年くらいの女性。紫色の髪が目にかかりそうになっていて、第一印象は『幸薄そう』と思われるような雰囲気。


コロリン (コンゴウセキスライム)

ルノの使い魔。魔法陣の効果によってルノのまわりを漂ったり、杖の先端にくっついていたり。コロコロしていて可愛い。

 



 温泉旅行から帰ってきてからはひたすら平和な日々が続いた。今日も今日とて朝からカフェでのんびりする私達は、お昼前までコーヒーとケーキで時間を潰す予定だ。



「ずず……あちち……」


「むぐむぐ……」


「もぐもぐ……」



 この場にいるのは私・フユナ・レヴィナの三人。そして毎度セットで付いてくるサトリさん。グロッタとスフレベルグの二人に関しても、それぞれ家でのんびりしている。



「いやぁ、二人ともそうやって美味しそうに食べてくれるとこっちまで嬉しくなってくるよ」



 サトリさんが微笑みながらそんなことを言ってくる。視線の先には、チーズケーキを食べるフユナと、いちごのロールケーキを食べるレヴィナがいる。



「ルノ。チーズケーキもう一つ頼んでいい?」


「うん、いいよ」


「ルノさん。わ、私も……!」


「はいはい、好きなだけ食べていいよ。でも太らない程度にね」



 そんな感じでひたすらぐうたらするのがここ最近の私達の日課になっていた。


 そんな生活を続けていれば『太らないように』なんて言われても当然無理な話で……



 それから一週間後の朝。



「んしょ……んしょ……わっ!」



 どすん!



「ぐえっ!?」



 突然、熟睡中の私の上に何か重いものがのしかかってきた。



「ご、ごめんね、ルノ。大丈夫?」


「うぅーーん……フユナ……?」



 はて……おかしいな。今までも起きる時にこうなる事はよくあったのだが、今日はダメージがでかい。いつもならそのままかわいいフユナを抱き締めてちゅちゅちゅーー! っとする余裕くらいあったはず。



「フユナ……もしかして太った……?」



 こんな事は女の子に言うセリフじゃないが家族ということでセーフ。



「そ、そうかな? そんなことはーー」



 どすん!



「こ、今度はなに……!?」



 音がした方を見てみるが特に何も無い。……いや、いるはずのレヴィナがいない!



「いたた……」



 どうやらベッドから落ちてしまったらしい。位置的に私が真ん中。そして両端に二人が寝ているのだが、フユナと違ってレヴィナの方には壁がない。



「レヴィナ? すごい音したけど大丈夫……?」


「は、はい……お肉のおかげでなんとか……」


「お肉……?」



 謎な発言をするレヴィナがベッドに戻ってくる。なんだか身体が重そうだな。



「まさか……?」


「え? ちょ、ちょっとルノさん……!? きゃーー!」


「ちょっと……妙な声出さないでよ……」


「ルノ、何してるの?」



 フユナが不思議そうに見ているが今は確認することが先だ!



「……」



 私はレヴィナのお腹を触って状態を確認。そしてすぐに分かった。



「レヴィナ……あなた……」


「な、なんですか……?」


「……」



 これは嫌な予感がするぞ。



「フユナ。ちょっとおいで?」


「ルノ……なんか顔が怖いよ……?」


「怖くないよ?」


「ひぃ……」



 恐る恐る私の元に近付いてくるフユナ。と言ってもベッドの上なので逃げ場はないが。



「ちょっと失礼」


「え? ルノ……? あはははっ!」



 先程のレヴィナと同じようにお腹を触って状態を確認。すべすべしていて気持ちいい。だが、これで確定!



「二人とも太ったでしょ!」


「「ひどいっ!?」」



 カフェに通い詰めた結果だった。



「ま、まぁ……なってしまったものは仕方ない、とりあえず起きようか」



 確実に二人の体重は増加している。だが、幸いな事に、見た目の部分ではそこまでの変化は無い。強いていえばお腹くらい。



「「よいしょ……よいしょ……」」


「……」



 いやいや、冗談でしょ。ベッドから降りるだけだというのに二人ともやたら辛そうだぞ。



「「よいしょ」」



 ずん。



 ちょっと大げさに表現したけど、遠からず……って感じ。



「ぐすっ……」


「ル、ルノ……?」


「なんで泣いてるんです……?」


「気にしないで……二人はどんなにおデブになってもかわいいから……」


「「ひどいっ!?」」



 なんだか今日は二人の息がピッタリだな。同じおデブとして何かが共鳴しているのか。



「そんなこと言ってる場合じゃないよ! このーー」



 ぽよん。



「お腹を見てーー」



 ぽよん。



「ちょっとは焦りなさい!」


「えーーん!」


「ひどい……ひどいっ……!?」



 先程、二人のお腹の触り心地が良かったので叱りながら再び触ったら泣いてしまった。てかレヴィナは『お肉』とか言ってたし、自覚はあったんだと思う。



「ぐすっ。そもそもなんでルノは大丈夫なの……?」


「そうですよ。ルノさんだって私達と一緒だったのに……」



 確かに。……と、一瞬思ったがここ数日を振り返ってみたらすぐに理由は分かった。



「だって私、コーヒーしか飲んでなかったからね」


「うそだーー! ルノもチーズケーキ食べてたよ!」


「そうだそうだーー!」


「ふふん。読み返してごらん? 私は『ずず……』ってコーヒーを飲んでる音しか出してないから(キリッ)」


「ずるーーい!」


「ブーーブーー!!」



 むむ、今日の二人はブーイングが多いな。そんなに責められたら私だって悲しいよ?



「と、とにかく! 食べるなとまでは言わないけど、運動はするよ。ほら、着替えて着替えて!」



「「ブーーブーー!」」



 こうして私達……主にフユナとレヴィナが痩せるためのダイエット生活は始まった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「おや、早起きですな!」


「おはよう、グロッタ」


「「……」」



 私達は運動するために着替えて外に出てきた。朝食の時間はまだ先なので、軽くランニングでもするためだ。



「むむ……? フユナ様。それとレヴィナよ。なんだか太っ」


「しーー!」


「むごっ!?」


「太っちゃったことに関しては触れないであげて。もう私がいじっちゃったから(ボソボソ)」


「は、はぁ……分かりました」


「グロッタ? 何か言ったーー?」


「いえいえ! お二人共、ずいぶんと肉厚に」


「はい、グロッタ。静かにしようね」


「ぎゃあああ!?」



 またフユナとレヴィナが泣いてしまいかねないので、この辺で静かにしてもらう。



「んじゃ、そこの草原を軽くランニングしよう」


「「えーー」」


「えーーじゃないよ。これ以上肉厚になったら見た目にまで影響してきちゃうんだからね」


「えーーん!」


「ぐすっ!」



 あ、しまった。さらっと口に出してしまった。



「ルノ様、触れないでおくのではなかったのですか?」


「こ、これは二人を鼓舞するためだよ……」



 そんなこんなで始まったランニングは予想以上に早く終わろうとしていた。ダメな意味で。



「はぁ……はぁ……」


「ぜぇ……ぜぇ……」



 うーーむ。レヴィナは元々運動は得意ではないイメージはあったが、フユナに関しては双剣も使うし、動きもかなり速かったはずだ。



「ほら、二人ともファイトーー!」



 私はというと、グロッタと共に小屋から見守っている。若干、フユナ達の痛い視線が刺さるが仕方ないとなんとか割り切った。



「まぁ、でもあの程度ならそんなに焦ることも無いのでは?」


「まぁね。まだお腹がぽっこりしてきたくらいだし」



 だが、見た目にまで影響してからでは遅いのだ。お腹のぽっこりは危険信号。今のうちから対策しておくに越したことはない。



「そういう意味じゃグロッタは健康だね。羨ましい」


「ゲラゲラ!」



 お腹をわしゃわしゃしながら確かめると相変わらずの笑い声をあげるグロッタ。うん、健康健康。



「た、ただいま……ぜぇ……ぜぇ……」


「終わりました……よ……ヒュ……ヒュ……」


「はい、よく頑張りました」



 やはりいつもより疲れてるな。レヴィナに至っては死にそうな勢いだぞ……



「それじゃ、朝ご飯にしようか。私が作ってくるから二人はストレッチでもしててね。身体のケアは大事だよ」


「「はーーい……」」



 そのままの流れで朝食はグロッタの小屋の前で食べることに。スフレベルグも呼んで、家族全員での朝ご飯だ。



「はい。ルノサンドに、キャベツの炒め物に、サラダ。あとキャベツのスープだよ」


「美味しそう!」


「ごくっ……!」



 キャベツづくし感は否めないが、運動してお腹が減っているのか、いつもより食い付きがいい。だが、それで良い。ダイエットだからといって食事を抜くのは意味が違うからね。



「さ、たんと食べなさい。動いて食べる! これがダイエットの基本だよ!」


「「いただきまーす!」」



 いい食べっぷりだ。今日ほど作ったかいがあると思った日はないかもしれない。



「んじゃ、私達も食べようか」


「今日はいつもより豪勢ですね」


「ふふん。ダイエット中でも食べる楽しみは大切でしよ?」


「では、遠慮なく! ガツガツ!」



 スフレベルグとグロッタにも今朝の朝食は好評だった。こんなにもみんなが喜んでくれるならこれからもこれくらいの気合いを入れて料理するのもいいかもね。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 そしてダイエット開始からキッチリ一週間経った日の朝。


 どさっ……



「むぐ……?」



 突然、熟睡中の私の上に何かが乗っかってきた。



「あ、ルノ……ごめんね」


「うん、大丈夫だよ」



 フユナだった。どうやら起床するために私の上を通る最中だったみたいだ。そこでふと気付く。



「あれ? フユナ……元に戻ったんじゃない?」


「え……ほんとに?」



『何が』までを言わなくても伝わった。ここ一週間、頑張ってきた結果が出たのだ。



「ほんとほんと! 全然重くないよ! やっぱりフユナはこうでなくちゃ! ちゅちゅちゅ!」


「うわわっ!?」



 なんだか私の方までテンションが上がってしまい、そのままフユナを抱き締めてしまった。



「ということはレヴィナもかな!? チョンッ!」


「ぐえっ!?」



 どさっ……



 私は横で未だに熟睡中のレヴィナをつついてベッドから落としてみたが、音が軽い! 我ながらひどい事しちゃったなと思ったが、二人が元通りになってくれて嬉しかったので大目に見て欲しい。



「うぅ……な、なんですか……?」


「おめでとうレヴィナ! ダイエット成功だよ! ちゅちゅちゅ!」


「うわっ!? えっ? あ、ほんとだ。お腹が……!」



 レヴィナも今気付いたようだ。努力の結果はある日突然現れるって改めて実感したよ!



「んじゃ、今日は二人のダイエット成功記念ってことで久しぶりにカフェに行こっか」


「やったーー!」


「いちごのロールケーキ……!」



 せっかく痩せたのに、と思うかもしれないが今日はくらいはいいだろう。



「あ、でもちゃんとチーズケーキは一つにしとくから大丈夫だよ」


「私も気を付けます……」



 うんうん。適度に動いて適度に食べる。二人とも大切な事を学んでくれたみたいだ。そこまで計算した訳じゃないけど……良かった良かった!








 みなさんも食べ過ぎには気を付けましょう。




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