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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第三十話〜金欠対策とフユナの愛〜

 



 まずいことになった。



「な、なんで……?」



 いつの間に? ここ一ヶ月以上、温泉に通いつめてたから?



「このままだとすぐにそこを尽きてしまう……!」



 一ヶ月間、温泉に通いつめただけで尽きるってどんだけだよ? って突っ込みはスルーするとして。とにかく早く手を打たないと……



「お金がなくなっちゃう!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 ここ一ヶ月ほど通いつめた私達はようやく温泉の誘惑から解放されつつあった。さすがにこれだけ続ければ飽きもするか。



「っていうのは建前で、本当は財産が底を尽きそうなだけだなんて絶対言えない……」


「何が尽きそうなの?」



 現在は朝の朝食を済ませ、コーヒーで一段落しているところだ。私は今後の事で必死に頭を働かせている。



「とはいってもやる事は決まってるよね」



 お金を稼ぐ。つまり討伐だ!

 手っ取り早くロッキの結晶を売るという手もあるがそれをやると人間として駄目になりそうなので却下。

 ならば真面目にコツコツ。サトリさんのカフェで働かせてもらうというのも考えたが、さすがに今後の生活費を賄えるほどは稼げないので却下。



「ふっ……久しぶりに本格的な討伐になりそうだな」


「???」



 ちなみにお金が尽きそうな事はフユナには言っていない。そんなこと知られたらフユナに幻滅されてしまうかもしれない。



『え、ルノ……お金なくなったの? それじゃもう一緒にはいられないね。バイバイ……』



「嫌だ! そんな事になったら……!?」


「ルノ、どうしちゃったの?」



 今でこそこんなふうに私に付いてきてくれているが、それはあくまで人としてやる事が出来ているからだ。



「私はフユナの手本になれるように頑張るからね」


「よく分からないけど討伐に行くなら一緒に行こうね」



 うぅ、フユナの優しさが心に染みる。



「いいの? フユナ。グロッタやスフレベルグと遊んでたっていいし、サトリさんと特訓しててもいいんだよ?」


「うん、だから今日はルノと一緒に過ごす日なんだよ」


「フユナー! やっぱり可愛いすぎるよ! ぎゅー! ちゅちゅちゅ!」


「く、苦しいー!」



 よーし、フユナ成分も補給したし、私、今日から本気出すよ!



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 という訳でいつものように山の頂上を目指しながら討伐をする。現れるのは相変わらずスライム系。



「いた! スライム!」



 バキャ!



 今日の私は気合が入り過ぎているのか、スライム一匹倒すのに特大の氷を出していた。



「ルノ、今日は気合が入ってるね」



 そう言うフユナは無難に双剣で倒している。



「ふっふっふっ、もちろんだよ。なんたって今の私は本気を出してるからね」


「ルノ、かっこいい!」



 とはいってもいくら本気でやったところでスライム討伐だけではたかが知れている。やはりレアモンスターを探さなければ……



「よし、フユナ。今日は金ピカのスライムをさがすよ!」


「そんなのいるの?」


「いるのはいるんだけど、これがかなりのレアモンスターでね。もしかしたら今日一日探しても見つからないかもしれない」


「ごく……!」


「だけど見つける事さえできれば生活費……いや、お小遣いが手に入るよ」


「う、うん……頑張ろう、ルノ!」



 気合を入れ直したものの、やはり金ピカスライム探しは難航した。出てくるのは定番のスライムばかり。



「むっ、火のスライム!」



 バキャ! 特大の氷弾。



「お、木のスライム!」



 バキン! 特大の氷の槍、



「あれは!? 雷のスライムか……」



 ズギャ! 広範囲氷結魔法。



「うーん、不調だなぁ」


「そう? 調子良さそうだよ」


「うん、魔法はね。ただやっぱり普通のスライムしか出ないからさ」


「そうだね。でも久しぶりにこうやってルノと討伐に来れて楽しいよ」



 な、なんて嬉しいことを言ってくれるのこの子は!? この可愛さ、プライスレス。


 しかし、その後も現れるのは普通のスライムばかりでついに頂上に辿り着いてしまった。



「ふむ、前半は見つからず……か。とりあえずお昼にしよっか」


「うん!」



 そしてお馴染みの売店でパンやらコーヒーやらを購入した。



「この泉も随分懐かしいね」


「うん。ルノと出会った場所だよね」



 ちなみに、いつか私が魔法で抉ってしまった森はバレない程度には元に戻っていた。


 そんな感慨に耽っていると、目の前にスライムが現れた。



「ん、氷のスライム?」


「ほんとだ。今日は暑いのにね」


「だよね。 ちょっと捕まえてみよう」



 よし、捕獲は難なく成功したけど。



「こ、これは!?」


「どうしたの、ルノ?」


「もしこれが氷のスライムだったら冷たいはず。でも冷たくないし、何よりこんな暑い日にいる訳ない。つまりこれは……!」


「ごく……!」


「コンゴウセキスライム!!」


「なにそれ?」


「コンゴウセキスライムはね、フユナの双剣の素材にもなってる超レアなモンスターなんだよ。そのレア度は金ピカスライムをも超える!」


「おー、すごい!」


「これは生活……お小遣いを差し引いてもお釣りが来るよ! 努力して探したかいがあったね!」


「良かったね、ルノ! これで生活費もしばらくは大丈夫かな!?」


「うんうん、大丈夫だよ! ……え?」


「???」


「フユナ、知ってたの?」


「なんとなーく、そうなのかなぁって。温泉に行ってばっかりだったのと、あとはルノの態度で分かったよ」



 うっ、まさかバレてるなんて思わなかったな。さすが私の娘だ。



「じゃあこれからも一緒にいれくれるのかな?」


「なんでそんな事聞くの? ずっと一緒でしょ?」


「も、もちろんだよ! なんて可愛い事言ってくれるの!? ちゅちゅちゅ!!」



 どうやら金欠の事をフユナはお見通しでした。

 そして私の心配も杞憂で終わりました。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 そして夕方。

 下山した私達は、捕獲したコンゴウセキスライムを買い取ってもらうためにカラットさんのお店に来ていた。



「というわけで、どうですか?」


「ふむふむ、ただでさえ見つかりにくいのになかなか上質ときたか。うむ、なかなかいいぞ」



「ほんとですか!」


「やったね、ルノ!」


「フユナのおかげだよ! ちゅちゅちゅ!」






 こうして私とフユナは金欠により新たな絆を育むことに成功したのてした。



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