第二十八話〜ヒュンガル温泉ツアー〜
スフレベルグとの早朝の散歩を終えて帰宅したその日のこと。
朝食を終えてのんびりしていると、来客があった。
「おはよう! おじゃまするね!」
「おはようございます、カラットさん」
そう言ってドアを開ける私。
「何言ってるの、わたしだよ!」
目の前にいたのはサトリさんだった。
「いや、声で分かってましたけど。師匠と同じ登場の仕方ですね」
「えー、そんな所まで師匠に似ちゃってたかぁ」
「はは。まぁ、上がってください」
「おじゃましまーす」
そして場所はリビング。
「やっほー! フユナちゃん!」
「サトリちゃん! いらっしゃい!」
次に外に向かって。
「グロッタもお久ー! ……ワシーー!?」
「サトリさん? それ、なんのネタですか?」
「いやいや! 鷲! 大鷲! グロッタといる大鷲はなに!?」
「え?」
見てみるとグロッタの小屋の上にスフレベルグがとまっていた。今日は下まで降りてきてたのか。
「あぁ、あれは私達の新しい家族。大鷲、フレスベルグのスフレベルグですよ」
「フスレベルグのスレフベルグ???」
「フレスベルグのスフレベルグです」
「んんー? ややこしいな??」
難しい顔でサトリさんはスフレベルグの方に歩み寄って行った。
「初めまして、フス……スレ……スフレベルグ?ルノちゃんの友達のサトリだよ」
「スフレベルグです。よろしくお願いします」
「おぉ、しゃべるのか……」
「ところでサトリさん。今日は突然どうしたんですか?」
「あ、そうだそうだ。実はさ、村に温泉が出来たから一緒にどうかなーってね」
「え、温泉ですか? いつの間に……」
「温泉? フユナも行きたい!」
「うん、行こ行こ! で、ルノちゃん。どうかな?」
「ぜひ、行きましょう」
そういう訳で、本日はちょっとした温泉旅行へ行くこととなりました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「へぇ、結構大きいんですね」
「ロッキの温泉宿みたいだね」
村の端っこのほうになかなか立派な温泉宿ができていた。後ろの山から温泉を引いているのだろうか?
「んじゃさっそく入ろうか。中には食事出来るところもあるから温泉のあともゆっくりできるよ」
「やったー! 楽しみ!」
宿の内装は予想以上に綺麗だった。これ、普通に観光地としてやっていけそうだな。
「ほら、ルノちゃん。見とれてないで行こ。温泉が冷めちゃうよ!」
「えー、やだー!」
「何言ってるんですか。温泉が冷めるもんですか……いや、なんか嫌な予感……」
そうして、温泉の目の前までたどり着いた。広々としていて空も見える。素晴らしい!
「ほっ、冷めてなくて良かった。嫌な予感してたんだよね」
「ルノ、何言ってるの?」
「そうだよ、ルノちゃん。フユナちゃんもいるんだからあんまりアホな事言っちゃだめだよ?」
「さ、さっきまで自分で言ってたくせに……」
「ははっ、ギャグだよ」
「むむ……」
そんなこんなでいざ、温泉へ!
「ふぅー、まさか村でこんな温泉に入れるなんてね」
「これからは毎日入れるね」
「う、うん。毎日はあれだけど、ちょくちょく来ようか」
「うん!」
「二人とも、温泉にうつつを抜かしてないでカフェにも来てよね。わたし泣いちゃうよ?」
「なに子供みたいな事言ってるんですか」
「そうだよ、サトリちゃん。カフェにも毎日行くからね」
「いや、毎日は」
「ありがとうフユナちゃん! ちゅちゅちゅ」
「あ、ちょっと!」
フユナにそれやっていいのは私だけだぞ! 許せない!
私はフユナを引き離そうと襲いかかった。
「さ、だいぶ温まったしそろそろ出ようか?」
「うん!」
そう言ってスッと移動する二人。
バシャーン!
「ごぼ……!」
「ルノー? 早く行こー!」
「まったく、あんなにはしゃいじゃって。ルノちゃんはお子様だなぁ」
こんなつもりじゃなかったのに!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
温泉の後、私達は食事スペースへと移動した。
「へぇ、なかなか本格的なんですね」
「ほんとだね。びっくりしたよ」
「フユナ、あれ食べたいな」
「それじゃ、みんな好きな物買ってここのテーブルに戻ってきてね」
「わかりました」
「はーい」
そして、私とフユナはうどんみたいな、そばみたいな麺を注文し、サトリさんは定食みたいなものを注文した。
「「「いただきまーす!」」」
「うん、けっこう美味しい!」
「ほんとに旅行みたいだね!」
「ふむふむ、これカフェでも出したいな」
サトリさんが変な事言ってる。カフェで定食出てきたらなんかいやだな……どうか変なカフェにはなりませんように。
「ねぇねぇ、二人このあと暇?暇ならなんかしようよ」
「そうですね……」
「あ、それじゃサトリちゃん。ツリーハウスに来る?」
「ツリーハウス?」
「そうか。完成してからまだ誰も来てないのか」
「ロッキの樹の上にね、家と大きなテラスがあって気持ちいいんだよ。スフレベルグもそこに住んでるんだよ」
「へー、なにそれ! 行ってみたいな!」
「うん!」
「じゃあ決まりですね」
ということになり、私達は温泉を満喫した後はツリーハウスへ向かうという、本当に旅行のようなスケジュールになった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おーい、スフレベルグー!」
バサッ、バサッ!
私が呼ぶと大きな音をたてながらスフレベルグが降りてきた。
「おぉ、かっこいい!」
「何かご用ですか?」
「うん。サトリさんをツリーハウスに案内してあげたいから乗っけてもらえないかな?」
「そういう事ですか。では、背中に乗ってください」
「ありがとうね」
そして私達はスフレベルグの背中に乗った。
「あ、せっかくだからグロッタも連れて行こうか」
「え!? わたしくしは遠慮」
ガシ……
「ぎゃあああ!? ガクガクガクガク!」
有無言わさず連れていきました。
あっという間に到着。
今日は天気もいいし、ツリーハウスで過ごすには最高だ。
「ほー! これはすごいね! 羨ましいなぁ」
「ロッキの街のやつをイメージして作ったんだよ」
「なるほど! なんか見覚えあるような気がしてたんだよね!」
そうしてまったり過ごすこと数時間。
「それにしてもルノちゃんの家もだいぶ家族が増えてきたね。ちょっと前まではカフェに入り浸るニートだったのに」
「し、失礼な! あの時も言いましたけど一歩手前までしか行ってませんよ!」
「まぁまぁ、そのおかげ(?)でフユナちゃんとも出逢えたんだしむしろ良かったじゃない?」
「なんか誤魔化された気が……」
「そうだよ! ルノがにーとじゃなきゃフユナはこんなに幸せにはなれなかったよ」
そう言ってフユナが抱きついてきた。あーフユナ可愛いすぎるよ! あと、ニートじゃないからね!
「そうですぞ、ルノ様!」
「えぇ、ワタシは幸せです」
「もーみんな可愛いすぎる!?」
その日、私は家族の愛を改めて感じたのでした。