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☆氷の魔女のスローライフ☆  作者: にゃんたこ
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第十三話〜初めての家族旅行② ロッキの樹と巨大な怪鳥〜


〜〜登場人物〜〜



ルノ (氷の魔女)

物語の主人公。見た目は十八歳の不老不死の魔女。少し癖のある氷のような美しい色の髪が特徴。氷の魔法が大好きで、右に出る者はいないほどの実力。


サトリ (風の魔女・風の双剣使い)

ルノの友達。綺麗な緑色の髪をお団子にした、カフェの看板娘。風の魔法・双剣の扱いに関してはかなりの実力者。


フユナ (氷のスライム)

氷漬けになっているところをルノに助けてもらい、それ以降は魔法によって人の姿になって一緒に暮らしている。前髪ぱっつん。


カラット (炎の魔女・鍛冶師)

村の武器屋『カラット』の店主。燃えるような赤い髪を一つにまとめた女性。彼女の作る武器は例外もあるがどれも一級品。


グロッタ (フェンリル)

とある人物の手により、洞窟に封印されていた怪狼。ルノによって『危害を加えない』事を条件に開放された。





 家族旅行二日目の朝。

 

 なぜだかいつもより早く目が覚めた。旅行先あるあるだ。



「ふぁ……よく寝た……」



 カーテンを開けてみると、天気は見事に快晴。今日はロッキの樹に登るので、これで心置き無く楽しめるぞ。



「むにゃむにゃ……サトりんかくごぉ……」



 フユナはどうやらサトリさんを討伐する夢を見ているようだ。恨みでもあるのかな?



「そして……なんでグロッタは氷漬けになってんの? ドMの衝動が抑えられなかったのか、それとも単純に寝ぼけてたのか?」



 さすがに正気の状態で私達に危害を加えようとすることはないだろう。あれからは曲がりなりにも家族として仲良く生活してきたんだからね。



「けど、寝ぼけて襲われるってのも怖いな。結果は見ての通りだけど」


「うーーん……あ……ルノ? おはよう……」


「おはようフユナ。ほら、いい天気だよ。さっそく準備して出かけようか」


「うん! ……なんでグロッタは氷漬けなの?」


「あぁ、あれはね、グロッタの趣味だよ」


「ふーん……?」


「とは言え、このまま持っていくわけにもいかないから助けてあげるか……」



という訳でグロッタはちゃんと助け出してから出発しました。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「さて、今からロッキの樹に登る訳だけど……せっかくだしお昼も上で食べたいね」



 私達がやってきたのは街のシンボル、巨大な六本のロッキの樹。その内の一本の根元だ。そこには受付があり、案内板が置かれている。

 


「ふむふむ……上には行く時は、大きな怪鳥に運んでいってもらうと。割と早く着くみたいだね」



 登ろうと言った手前、素手でよじ登るとかだったらどうしようかと不安になっていたが杞憂だったみたいだ。あたりまえか……こんなのよじ登るとか不可能だ。



「ルノ。遊べる所もけっこうあるみたいだよ」


「あ、ほんとだね。六本の樹、全部に何かしらのお店やらがあるみたいだね」


「これなら一日中遊べるね! どれから行くーー?」



 心なしかフユナのテンションもいつもより高い。初めての旅行でこれだけの施設。私だってテンションアゲアゲだ。



「よーーし、悩んでても仕方ないしとにかく登るよ!」


「おーー!」



 という事でいざ出陣。今日で帰らなきゃ行けないから、遊べるのは夕方くらいまでかな。



「いらっしゃい! 何名様でしょうか?」


「えっと、三人(?)です」



 一瞬、グロッタを人に含めるか迷ったが細かい事は気にしない。一応家族だからね。



「へい、まいど! では、次の迎えが来るまで少々お時間がございますのであちらのホームでお待ち下さい」


「なんか電車みたいなシステムだな」



 ホームで待っているとすぐに怪鳥がやってきた。風圧でとんでもないことになっている。案内板なんて倒れてるぞ……



「うわぁ……グロッタくらいあるね」


「ほんとだ。グロッタ、お友達になれるんじゃない?」


「ガルル……」



 迎えにやって来たのはグロッタにそのまま羽を生やしたような大きさの怪鳥だった。怪鳥と怪狼。仲間みたいなものかとも思ったが、グロッタは威嚇しているのであまり関係ないようだ。


 私達は怪鳥の背中に取り付けられている座席に座って、ベルトを締めた。ジェットコースターに乗る直前のような緊張感がある。



「では、出発しますよーー!」



 御者さんがそう言うと、フワッっという浮遊感に襲われた。



「おぉ、飛んだ!」


「すごーーい!」


「ガクガク……!」



 予想以上の絶景だ。これに一時間くらい費やしてもいいくらい! と、私達のそんな気持ちが顔に出ていたのか、御者さんが気を使ってゆっくり飛んでくれた。ありがとうございます……



「ねぇ、ルノ。グロッタにも魔法でこういう翼つけて飛べないかなぁ?」


「出来なくはないけど……」



 それ、私も思ったけど肝心のグロッタがね……



「ガクガク……!」


「グロッタ……高い所苦手なんだね」


「そ、そんなこと……ありません! 地上の方がす、好きな……だけ……!?」



 そう言って頭を抱え込んでしまった。ある意味氷漬けのままの方が良かったかもしれない。ちょっとかわいそうなことしたな。



「あ、ルノ! てっぺんが見えてきたよ!」


「おぉ……こうして近くで見ると大きな島みたいだね」



 イメージ的には自然豊かな島が六つ浮かんでいるような感じだ。そんな事を思っていると突然遠くの方で声が聞こえた。



「きゃあああ!」


「うぉぉぉ!」



 おそらく恐怖の声。また別の所からは……



「きゃあああ!」


「うぉぉぉ!」



 さっきの声とは意味合いが違う。今のは楽しんでいるような感じだ。



「なんだか沢山悲鳴が聞こえるね?」



 フユナが不思議そうに首を傾げている。しかし私達がそんな疑問が解決する間もなく、怪鳥は頂上のホームに着いてしまった。



「では、お客様。お帰りになる際にはまたホームまでいらしてください。ホームはそれぞれの樹にもございますので、そちらでもかまいませんよ」


「分かりました。あの……ちなみにさっきの悲鳴は?」


「では、楽しい時間をお過ごしください!」


「え、ちょっと……!?」



 そう言って怪鳥に乗った御者さんは別のお客を乗せて帰って行った。なんだか含みのある笑顔を浮かべていたけど……



「まぁいっか。さすがに危険は無いでしょ」


「ルノ、早く行こーー!」


「ワンワン!」


「はいはーーい!」



 フユナが私の前を歩きながら手招きしてきた。どうやらグロッタも元気になったみたいだ。



「とりあえず案内板は……と……」



 私達はまず案内板のある受付まで行ってみた。知らない土地に来たらまずはこれに限る。



「えっと、なになに……」



 私達を出迎えたのは根元にあったものよりも大きな総合案内板だった。写真や文字など、見やすくデザインされている。そこには……


 1・食事の樹

 2・お土産の樹

 3・安らぎの樹

 4・恐怖の樹

 5・空中列車の樹

 6・湖の樹


 要約すると、それぞれの樹がレストラン・お土産売り場・休憩所・お化け屋敷・ジェットコースター・プールになっているらしい。



「え、つまりこれって……」



 ロッキの樹の上は完全に遊園地でした。




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