ずっと 2
「あれそーとー我慢してるよ、昨日見てて思ったけど。少しは植田さんからいってあげないと」
「我慢??」
昨日は待望の班行動デーだった。初めて間近に和貴を見て会話をすることができた。
非の打ち所がない容姿に、ほんの少し周囲の同級生よりも大人びた雰囲気はやはり魅力だったが、半日以上行動を共にするとあっさり思い切ることができた。
「植田さんのことどんだけ好きなの?って何回突っ込みたくなったことか。好きすぎて手も握れないなんて気の毒すぎ」
美波は目をつぶって昨日の様を思い出していた。
深雪の傍らに立ちつつ、彼女の手をたびたび気にしていた和貴。
見られている本人はまったく気づく素振りもなく・・。
それを他人に気づかれまいとしている和貴が健気でならなかった。
「だってみんながいるのに手つなぐなんて・・・」
恥ずかしいじゃないかと反論しかけて、すぐに言葉をさえぎられる。
「植田さんがそうだから、浜崎が可哀そうなんじゃん!今まで私男なんか応援したことないよ」
「ええ・・?」
そうなのかな、と今度は真剣に考えた。あんまり簡単にそそのかされてはよろしくない。
けれど今日は瞬時に答えが出た。
よし、じゃあ今日の帰りは私から手を握ってみよう。
「うん。そうしよう!」
深雪は土産物の入ったビニール袋を腕にかけ、こぶしを握った。鼻息も荒く、自分自身に活を入れた。
「えっ?どうするって?」
東京行きののぞみ122号に乗り込み、改めてこの旅を振り返る。
修学旅行だったのにほとんど和貴と一緒にいられて、よかったのだろうかと不安になるくらい楽しかった。
びっくりするような事件があったのに無事に仲直りできたことで、これからの自分たちから不安を取り除いてくれるありがたいエピソードへ変わりつつあった。
座席に座り、友香が席を離れた隙に、首もとのペンダントを持ち上げ手のひらにのせてみる。
四葉のモチーフにはめ込まれた紅い石が、光を受けて輝いている。
昨日さんざんあちこちお参りしたくせに、深雪はまた光に向かってお祈りをした。
これからもずっと・・、ふたりが仲良く一緒にいられますように。
ここで、二人のお話はおしまいになります。
皆さんのお陰で完成(?まだまだ未完成ですかね・・)することができました!
私にしてみれば長めの小説なので、感慨もひとしおです。
できましたらご感想などいただけると大変うれしいです。
次回作も早いうちに掲載したいと思っていますので、これからもぜひよろしくお願いします!!