27話
あれから数日後。
ちよ「若様、今日はいい天気ですね」
勘十郎「そだね」
今日はお城を出て町に来ています。
僕はほとんどお城の中の屋敷から外に出た事はないのだけど、立派な武士になるためには街とか村に住んでいる人たちの暮らしを知らないとイケナイと言われて今年の春頃から月に一度か二度こうしてお城から出かける許可がもらえてお出かけできるようになりました。
さて、今日はどこに行こうかな?
なんだか遠足していでみたいでちょっとわくわくします。
勝家「勘十郎様、足が疲れてはおりませんか?」
勘十郎「大丈夫、ありがとう」
勝家「そうですか。暑くはありませんか?」
勘十郎「大丈夫だよ。ありがとう」
今は8月に入ったところで暑いと言えば暑いのだけど、でも元の時代のあの気温40度近くでアスファルトが太陽で焼かれたあの暑さと比べると全然過ごしやすいし、このくらいの暑さならへっちゃらだよね。
勝家「そうでございますか。もしお疲れでしたらいつでも拙者がおぶって差し上げますぞ」
勘十郎「まだ疲れてないから大丈夫。ありがとう」
さっきから僕の事を心配してアレコレ話しかけてくれているのはマッチョな柴田勝家さん。今回外出する僕について来てくれた護衛役と引率の先生みたいな感じ。
勝家さんの他にはチヨと桜と僕の4人で今日はお出かけしています。
勝家「それにしてもその女子が例の女子ですか……」
あれ? 勝家さんが桜の方を見ながら意味深な事を話したような?
勘十郎「……こそこそ、チヨ、勝家さんってもしかして」
ちよ「あっ、勝にぃには全部話しました」
勘十郎「えっ、全部話しちゃったの?」
なんて事でしょう。あれだけ約束したのに話してしまうなんてそれは酷くないでしょうか?
ちよ「一緒に行動するのなら相手の力量が分からないといざと言う時にどう動くかとかどう守るか判断を迫られる場合もありますから、ある程度は知っておく必要があると判断して話しました」
勘十郎「そう言う事あるかもしれないけど……」
ちよ「心配しなくても大丈夫ですよ。勝にぃは口が固いから無闇に人に話すような事はしませんし、若様の秘密が漏れるような事はありませんからそれは安心してください」
勘十郎「うぅん、そうかなぁ」
勝家さんは律儀な人だから話さないと約束してくれたのなら話さないとは思うけど、ちょっと心配です。
ちよ「それに勝にぃも鬼とか赤鬼とか呼ばれていますから意外とサクラさんと気が合うかもしれませんよ」
勘十郎「そうなのかなぁ……」
気が合うかどうかは分からないけど、桜もこの数日でだいぶお屋敷の暮らしに慣れてきたみたいだし、色々な人とお喋りした方が本人のためにもなるのかな?
それに初めは色々心配したけど、桜って気になる事があったらジィーーとソレを見続けるくらいで言うほど問題とかを起こした訳ではないし、教える事自体はわりと楽な方だったのかもしれないね。
まあ話しちゃったのなら仕方ないし、いざと言う時にはとぼける方向で考えておきましょう。
勝家「チヨ、若様と何を話しているのだ?」
ちよ「んっ? 勝にぃの顔が怖いって話していたのよ」
勝家「なんだそんな事か。武士とは敵に怖がられてなんぼのモノだから怖がられるのは大いに結構、良い事ではないか」
うーん、さすがは従兄弟だけあってチヨに遠慮がないと言うか、ズバッとそんな事を言っちゃうのね。
勝家さんの方は大人の対応って感じでしょうか。
ちよ「敵に怖がられるのは構わないけど、近所の子供たちまで勝にぃが近くに行くとギャン泣きして逃げて行くじゃない。普段の時はもう少し愛想を良くした方が良いんじゃないの?」
勝家「武士が愛想良くしてどうするのだ。武士とはそう言うモノであるし、強くて毅然とした姿を見せる事が将来武士を目指す子供たちの手本や道しるべにもなるのだから、それも悪い事ではないぞ」
ふむふむ、確かに強いお侍さんの方がカッコ良くて憧れたりはしちゃうかな。
ちよ「なんだかそれっぽい事を話しているけど、逃げて行った子供たちを寂しそうに見ていたらちっとも威厳もなにもないと思うわよ」
勝家「なっ、いつ儂がそんな事をしていたと言うのだ」
ちよ「ほとんどいつも? ってか勝にぃを見ても逃げもせずに泣き出さない子供なんて若様くらいじゃないかしら?」
あれ? 僕?
勝家「うむ、流石は信秀様のご子息だけあって勘十郎様は肝が据わっておられる、なんとも頼もしい限りであるな」
あら、なんか褒められている。
そんな事を言われると僕照れちゃうかも。
ちよ「勝にぃ良かったわね。近くにいても泣かない子がいて勝にぃも嬉しいでしょう」
勝家「チヨおぬし儂を揶揄っているのか?」
ちよ「揶揄っている訳じゃないけど勝にぃは嬉しいのかなと思ってそう話しただけだよ」
勝家「まったく口の減らない娘に育ったものだ、いったい誰に似たのだろうな」
うーん、流石は従兄弟だけあるっ感じチヨがこんな風に子供っぽい感じで話しをしているのを見るのは珍しいかも、やっぱり親戚の人とかの人の方が話しやすいとかあるのかな。
とは言え流石にソレは言い過ぎかもしれないね。
勘十郎「チヨあまり変な事を言ったらダメだよ。勝家さんは優しいからたまたまその子はそうなっただけだと思うよ」
勝家「な、なんと!」
ちよ「優しいって言うか、まあ面倒みはいい方だとは思うけど、逃げたり泣かなくなるまでが大変と言うか、逃げ出されたら面倒見が良いも悪いも関係ないし、ただの顔の怖い極悪人みたいな感じで終わってしまうのじゃないかしら」
勝家「極悪人って……チヨ流石にそれは酷くないか?」
勘十郎「勝家さんはいずれ立派な武将さんになるの。いやいまも立派な武将さんなのかもしれないけど、いずれは自分のお城を持った大名になるのだから変な事を言ったらダメだよ」
いま勝家さんがどのくらいのポジションにいるのか知らないけど、確かそうだった筈だよね。
勝家「な、なんと、拙者が城持ちの大名ですと!」
ちよ「ないない、あるとしても今より少し子分が増えた切込隊長くらいが関の山なんじゃないかしら」
勘十郎「そんな事ないもの僕は知っているの。勝家さんはうちの中で一、二を争うほどの立派な武将さんになるの、だから変な事を言っちゃダメーー」
勝家「なっ、なんと! そこまで拙者の事をかってくださるとは、この勝家、生涯、勘十郎様に忠義を誓いますぞ」
ちよ「いや勝にぃ子供の話を真に受けてどうするのよ」
勝家「子供とは言え、勘十郎様は信秀様のお子であられるのだから我ら家臣が忠義を尽くすのは当たり前の事ではないか」
ちよ「いやそれはそうだけど、勝にぃ子供に手玉に取られてどうするのよ?」
勝家「手玉になど取られおらんぞ。勘十郎様は他のお子とはなにかが違う。いずれ立派な大将になられて我ら家臣を導いてくれる大きなお方になる事まちがいないな」
ちよ「それを手玉に取られていると言うのじゃないかしら?」
勝家「なにを言うか。儂の目に狂いはない、このお方こそ織田の名を天下に知らしめる大きなお方になる事そういないわ」
はぅ、メッチャ褒められている。
でも褒められるのは嫌いじゃないし素直に喜んでおきましょう。
僕は立派な武士になるつもりだから問題ないよね。
ちよ「そうですか。っと若様どこか行きたい所はありますか?」
勘十郎「えっ? ええと、町の外に出てみたいかも」
急に話が変わったので少し戸惑ったけど行きたいところと聞かれて僕はそう答えました。
前にお出かけした時にお城の近くは見ていたからももう少し遠くに行ってみたいよね。
ちよ「町から出るのは危険じゃないかしら?」
勝家「儂がいるから問題ないぞ」
ちよ「それもそうか、勝にぃなら山賊とかゴロツキが出て来ても顔を見ただけで逃げて行くでしょうし、問題ないのかしら」
勝家「ほぉ、そこまで儂の名がとどろいていたとは知らんかったが、儂も有名になったものだな。はっはっはっ」
ちよ「いや顔が怖くて逃げて行くって話の積りだったのだけど……それじゃあ行きましょうか」
勘十郎「はーい」
そうして僕たちは町の外へと歩いて行くのでした。
町の外はどうなっているのかな?
楽しみ〜〜。




