第九十五話 星の生命
土星は、先程吸った基地内の1億を超える兵の魂を口の中で噛み砕いて調理していた。
圭太が『破壊の焔』で攻撃したとしても、ビクともせず、巨大な餓者髑髏は調理を続けていた。
パーカーの通信で慎一さんが言っていた通り、『理』の異常が戻ったらしい。体が重く、魔法を打つだけでも体力を削られる。
「目の前に居なくとも……十星全員相手にしてるような感覚だな……!」
十星一人一人の力が規格外すぎる。金星の金の侵食は結構前に止まったようだが、警戒することが多すぎる。
そんな時、土星の暗い眼がピクリと動いたことで、圭太の警戒が更に強まった。
「凜奈、まずい気配がするっ……!」
そう圭太が言うと同時に、土星の眼の奥の眼光は取り戻され、不気味な光が宿った。
瞬間、土星の口は大きく開かれた。同時に、喉の奥からは電子音のような声が鳴り響いた。低い声と高い声が共存し、電磁波が飛んでいるようだった。
その声は衝撃となり伝わり、警戒を怠っていた凜奈はその波動によって数メートル吹き飛ばされてしまった。
飛ばされずに済んだ圭太だったが、凜奈を救助するよりも先に他の警戒すべき事象が生まれてしまった。
〖『囂叫應異魂』〗
地面は隆起するようにせり上がってきて、その膨らんだ地面はどんどん数が増えてきた。
その数が十になる頃には、初めに隆起した土は10m程にもなり、段々と頭部や体が作られて形になっていった。
『囂叫應異魂』と呼ばれるその怪物は、二本の太い足で立ち上がると、巨大な腕を振り下ろして、圭太を基地ごとぶん殴った。コンクリートの床は、辺りに散らばって砕けた。
「お兄ちゃん!!」
崩れた床と共に圭太は落下していった。ここは二階、一階との高さはそれほどでは無いが、あれだけ巨大な怪物に殴られたら当然、無事では済まないだろう。
ゴーレムの形に変貌していった囂叫應異魂は、基地を止まることなく破壊し続けた。
『橋本凜奈よ。土星の能力で土の怪物が生まれて……基地の破壊が侵攻してる!』
パーカーの通信の連絡は一度聞いて分かるように、なるべく事実を淡々と言うようにという指示が出ている。が、凜奈は少し慌てて声を荒らげてしまった。
直ぐに連絡はボタンを通って返ってきた。
『十星と戦闘中の兵は基地から出てください。』
蒼の声は連絡で直ぐに聞こえてきて、基地を見ると、次々に十星達が飛び出ていった。凜奈も圭太を抱えると、基地を出た。囂叫應異魂の破壊が止まることはない。
しかし、数体いるうちの一体だけの気は引けた。
「私も足手まといじゃ終われないのよ!」
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数十分前。悠が基地を真っ二つにし、地球は激昂していた。眼球には桃色の花びらが咲き、背には禍々しい巨木が生えていた。右の腕は苔むし、もう片方の腕は草むらのように雑草と花が咲き乱れていた。
大地の力を得ている訳ではなく、最早冒されているように見えるその容姿は、怪物と形容せざるを得なかった。
〖大地の血肉となれ!!〗
地球は喉から、加工されたかのような低い声を出して叫んだ。
〖地球〗
瞬間、地面には鼻が咲き誇り、植物の蔓はV-ENOMの肉体に絡むように巻きついていった。
喉元を狙って伸びた蔓を、V-ENOMはあしらうように、文字通り一蹴した。
「大地に囚われた哀れな化け物に……恐怖なんてねぇな!」
V-ENOMは地球に怯えていたが、いつもの調子を取り戻したようで、異形の地球に向かっていった。
V-ENOMの魔力は一点に集中した。一般的な魔法は右手の手のひらから放たれる。が、V-ENOMの魔法、『原子破壊』は右足に集中する。右足で触れた物の、『熱』『硬度』を無視して破壊可能になる術。
V-ENOMは軽やかな動きで地面を蹴りあげると、地球の頭部を思いっきり蹴りつけようとした。が、地面から勢いよく生えてきた大木が邪魔して蹴りは止められた。
〖邪魔スるな!!馬鹿モのが!!〗
舌が短い……舌があるのか分からないが、「サ行」と「マ行」が上手く言えていない。
“邪魔するな”とはどういうことか。乱心しているからかもしれないが、理性が完全に失われている訳では無い。
〖生命が短くなる音がシている……!!十星の生命力ごと削られてシマっているのだ!!〗
「何言ってんだよ……!?」
〖十星はモう長くない。〗
V-ENOMの耳には、狂人の戯言にしか聞こえなかった。だが、最後に言った言葉はV-ENOMの耳に入ってきた。
〖十星は皆、一度死んでいる……!!〗
第九十五話 終
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