第六十二話 ペット
「っ……ふざけるなぁぁあああぁ!!」
仝々は思わず熱くなってしまい、小さいウラヌスに巨体のまま飛びかかった。だが、ウラヌスが手を振りかざすと、天からはもう一体の怪物が現れた。
大量の小さな鱗に囲われた身体は、鋼鉄のような硬さと柔軟性を両立していて、生物としての進化の過程でどんな異常現象が起こったのか気になるくらいだ。
「この二匹はアイのペットなんだ。鱗がある方が『天脳』で、ない方が『脳天』。」
「お呼びじゃねぇよ!!」
仝々はそう言うと、大きく振りかぶって天脳を蹴りつけようとした。だが、軽く避けると、挑発するようにクルクルと回り始めた。
V-ENOMはビルから下りて、怪物二匹の下にいるウラヌスを蹴り飛ばそうとしたが、突然平衡感覚を失って、その場に倒れた。
「なっ……なんだこれ……」
「人の頭には“三半規管”ってものがあるんだ。アイにもユーにもね。その中のリンパ液で人は傾きや方向を感知する。」
そう言うと、ウラヌスは脳天の頭を近づかせて犬のように撫でた。
「天王星って星は傾いてる。そう、脳天の能力はユーのリンパ液を傾かせるんだよ。」
「いつの間にそんな能力……!?」
昔V-ENOMと仝々がウラヌスと相対した時の能力は、少し飛べるだとか、その程度の能力で、二匹の怪物すら見たことがなかった。
V-ENOMは立てないだけでなく、だんだん目眩もしてきて気持ち悪くなってきた。
一方の仝々は天脳に攻撃を続けたが、一度も当たらず我慢ならなくなってきた。
「まだ手の内は見せたくなかったんだけどなぁ……!」
仝々は『巨大化』の能力を解除すると、短刀を二本取り出して、くるくる回すと天脳に向けた。
「『巨大化』!!」
そう言うと仝々は短刀を巨大化させて、天脳に突き刺そうとした。だが、天脳は軽く体を捻ると、嘲るように口を大きく開いた。
だが、引けをとることなく、仝々は短刀の上を走っていくと、天脳に近づいていった。天脳は開いた口を仝々に向けると、口の中から突然光を放った。
次の瞬間、天脳の口からはレーザーが放たれ、直線上にあるもの全てを焼き尽くした。だが、仝々は危機一髪短刀から飛んで避けて、天脳の体に着地した。
「『巨大化』!!」
仝々は天脳の身体に触れると、そう叫んだ。瞬間、天脳の身体はどんどん膨張して大きくなり、短刀に突き刺さって、そのまま息絶えた。その体はどんどん塵になって消えていった。
「これで一体討伐か。」
そんなことを呟きつつV-ENOMの方を向くと、V-ENOMは地面に倒れて意識を失っていた。そう、脳天の能力で体が耐えきれなかったのだ。
仝々は助けようと、走る構えをした途端、ウラヌスに止められた。
「おっと、ユーは来ないでもらおうか。一歩でも動いたらこの女の子を殺しちゃうよ?」
仝々はどうすることも出来なくなり、その場に立ち尽くしてしまった。能力を使用したとしても助け出せそうにない。それに、助け出せても脳天があまりにも厄介だ。
脳天がゆっくりと頭を上げて仝々を見ようとしている。能力を使用するつもりだろう。一生のように長く感じるその間、仝々は微動だにできなかった。
「『〆桜』。」
その声が耳に届いた瞬間、脳天は真っ二つに切り裂かれ、ウラヌスは声の主を睨んだ。
「朝霧悠。」
悠は初めに居たビルの屋上からウラヌスを見下ろしていた……いや、見下していた。こちらの人格で〆桜を使用するのは初めてだったが、直ぐに解除してしまった。
叢雲を鞘に収めてその場に尻もちを着くように座り込んだ。
「助けてやるのは最後だぞ。V-ENOM、仝々。」
悠がそう言った瞬間、授業中に名前を呼ばれ起きた生徒のようにV-ENOMは飛び起きた。
「全く……ペットを二匹もやられちゃうなんてね。」
そう言うと、ウラヌスは翼があるようにフワリと浮かんで数メートルはある小屋の屋根に乗った。
すると、一瞬にして魔法陣を地面に描き、詠唱を始めた。
〖創星の時より廻りし天の理よ
傾き運命の天王星、今ここに顕現せよ〗
瞬間、どす黒い炎のようなオーラがウラヌスの姿を包み込んだ。それと同時に、爆発するような魔力がウラヌスの中で弾けた。
辺りのビルが倒壊し始め、電線は嵐の日の木のように大きく揺れ始めた。
〖超新星解放〗
その言葉が聞こえると同時に、ウラヌスを覆っていた炎は吹き飛ばされ、中から化け物のうような姿のウラヌスが現れた。
「『惑星解放』じゃないのか……!?」
『惑星解放』は良く知っている。十星が力を解放し、覚醒した形態だ。金星も墓本との戦闘中に使用していた。
だが、『超新星解放』とはなんだ。ウラヌスの全身には漆黒の翼など、異形の部位が大く作られていた。だが、思考する隙もなく、天を突き破って一匹の怪物が現れた。
〖おいで、アイのペット。ヴァーギン。〗
その見た目は、先程の二匹の怪物を超越する程にグロテスクな見た目だった。奇妙な液体が全身から流れ出し、目玉が“口になっている”。反対に、口の中には大小様々な目玉が入っている。
〖超新星解放を使った時だけ来てくれるんだ。ヴァーギン、奴らを潰してしまえ。〗
ウラヌスがそう指示すると、ヴァーギンと呼ばれる怪物は地面に「ズシンッ……」と全身を落とした。すると、狂ったかのように暴れだし、そのまま仝々達に突っ込んできた。
仝々が近くの瓦礫を前に置いて、それを『巨大化』の能力で爆発的に巨大化させ、盾代わりにした。
だが、ヴァーギンは自身の身体を地面と反発させるようにして、上空に大きく飛び上がった。
「まずいッ……」
そう言い終わるより先に、ヴァーギンの巨体は仝々達の居た場所に落下してしまった。遠くから見下ろす悠は口は開かずに少し眉をよせた。
第六十二話 終
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