第五十七話 神の気まぐれ
『登場人物』
【朝霧 悠】
この物語の主人公。世界最強であったが、『世界切断』という事件を経て弱体化してしまった。昔自分にかけた魔法によって数千年という時を生きている。使う武器は『叢雲』で、58364個もの魔法を使用できる。
『叢雲』の魔力を借りる『〆桜』を使用する。ランクは『IV』。全盛期は『XI』。
【キル・アストラ】
自己陶酔という言葉が似合う男。悠に勝るナルシストっぷり。一言一言が名言と言われている。ランクは『V』。
【菊池圭太】
第壱区の警官。オッドアイで、右目だけ赤い。
DAGに所属している。ランクは『VI』。
【END】
世界最悪のビースト。悠の全盛期と張り合える程の実力があり、『世界切断』当時からの唯一の生き残り。様々な世界を徘徊している。今は無限牢獄に囚われている。
【100万……?お主からかっているのか……!】
「なんだと?貴様もしや……」
悠はニヤリと笑みを浮かべると、目隠しをして後ろを向いたまま当然のように言い放った。
「私が負けると思っているのか?」
ダイヤは一瞬驚きで反論することすら忘れて、後に出たのは微かな笑いだけだった。
【その余裕も次のターンには崩れているぞ……!】
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【さて、ゲーム開始だ。『キャッチ』か『シャッフル』か選べ。】
「ギャンブル中毒者はなぜ失敗すると思う?自分を『手練』だと思い、自身の信じた方法に全てをBetするからだ。「この方法なら負けない」、「この戦法で負けたことがない」、先入観は恐ろしいな。」
【……?何が言いたいのだ?】
「『キャッチ』。」
突然何かを語り出したかと思えば、悠はダイヤの問いかけを無視して『キャッチ』を選択した。
【……あぁ、1枚目は赤ではない。】
そう言うと、ダイヤは『3』の数字が書かれた1枚目のコインをアストラに放り投げた。
【次は……】
「『キャッチ』だ。」
また次も迷いなく悠はそう言い放った。ダイヤは不信感からか、少し眉をひそめた。
【……チッ、2枚目も赤ではない。】
そう言うと次は1のコインをアストラに投げ捨てた。だが、悠は間発入れず
「『キャッチ』だ。この後2回とも。」
と言い放った。空気が静まり返って、全員が黙ってしまった。誰1人として状況を理解できなかった。悠は目隠しをゆっくりと解きながら話し始めた。
「慢心は時に人を殺す。貴様は今まで『5番目に置く』などと言う薄っぺらい戦略で勝ってきたのだろう。だが私の前ではその意味も……」
「皆無」。そう言いかけで悠の口の動きは止まった。目隠しを解いてダイヤを見た悠含め、ダイヤ以外の全員が理解できなかった。
【儂の手の中で良く踊ってくれたな。カッカッカ……カッカッカッカ!!!】
ダイヤが持っていたコインは『赤』。そして、机上に残っていたのは『4』。
そう、4枚目のコインは『赤』。
【お主の“負け”じゃ!!】
文字通り、裏の裏をかかれた。
悠はこう考えた。「2回連続赤ではなかったら3回目はない」、そう思うのが人間の心理なので、その裏をかきダイヤは3連続、いや4連続赤以外を置いたと。だが、悠はその裏をかかれたのだ。
【お主の思考が手に取るように分かるぞ……なに、このまま終わってもつまらん。今回のは無しにしてやろう。】
「その必要はないぞ。」
【?】
優しさというより、ゲーム続行の為に言ったのにも関わらず、軽く断られダイヤは困惑してしまった。
「先程の100万は、貴様の兵のうち、“スパイに入り込んでいる数”だ。」
【っ……カッカッカ!!やはり面白い、朝霧悠!!想定を常に超える男だ!!では、異世界警察の全ての兵数は……】
「2億5000万だ。」
ダイヤは驚きで空いた口が塞がらないどころか、度肝抜かれて身体が動かせなかった。
「さて、貴様の番だ。」
そう言って、ふわっと目隠しをダイヤに渡した。ダイヤが受け取ると、悠は全てを見透かすかのような紅の色の目でダイヤを睨んだ。
「冷めさせるなよ。私を。」
いつもの『孤高』のイメージからは考えられぬ程に、悠は低い声でそう言った。ダイヤは恐怖心を抉り出されたかのような感覚になり、一瞬で冷や汗をブワァッと全身にかいた。
【上等じゃ、朝霧悠……!】
ダイヤは目隠しを巻くと、後ろを向いてキャッチャーとして準備をした。
【賭け人は500万じゃ。】
「良かろう。では選べ、【ダイヤ】。『キャッチ』か『シャッフル』か。」
【お主、適当な言葉を上から目線に垂れていたが……儂には戦術で負けているのだ。大口叩きも程々にしておけ。『キャッチ』じゃ。】
悠は「あぁ、赤ではない」と言うと、コインをアストラに渡した。
「ところでだがこのゲーム……イカサマはルール上ナシだろうな。」
【あぁ。】
そう言うと2人の間ではお互いを勘ぐるような、ヒリついた空気が流れた。
【……『シャッフル』だ。】
ダイヤは口を開くと、そう言った。
ダイヤは確信していた。朝霧悠が先程敗北したのは「わざと」である、と。朝霧悠は常に想定の範囲を超えてくる。つまり、ダイヤが勝つためには「自分の決定とは正反対の選択」をすれば良い、至って簡単な話だったのだ。
その後もダイヤは何度もシャッフルを繰り返した。ダイヤは自分に対するとてつもない自信がある。だからこそ、自信が無くなるまでシャッフルをし続けるのだ。
「次も『シャッフル』……」
【いや、『キャッチ』だ!!】
すると、悠は苛立ったのか、『3』が書かれたコインを地面に投げつけた。
「さぁ、早く選んだらどうだ!」
【『キャッチ』だ。】
今まで繰り返し『シャッフル』をし続けたダイヤの突然の二連続『キャッチ』。場の全員が驚愕で呼吸すら忘れてしまった。
「最後の1枚だ……存分に考えるんだな。」
ダイヤは言いなりになった訳では無いが、思考を繰り返した。朝霧悠という男が最後のコインをどの位置に置くのか。数分にも渡る思考の末、ダイヤが選択をしようとした瞬間、悠は口を開いた。
「『シャッフル』だ。『シャッフル』を使わせてもらおう。」
【はぁ!?】
そう、キャッチャーだけではない、ゲーマーもプレイ中1度だけ『シャッフル』を使用できる。
今まで見たことがないほど悠は満面の笑みでそう言い、思わずダイヤは立ち上がって叫んでしまった。
「なんだ、イカサマか?」
【お主、相当舐めているな……!!】
「あぁ。」
数分の思考が全て一瞬にして無に帰された。ダイヤは憤りを感じつつも、椅子に荒々しく座ってまた思考を始めた。
何故このタイミングの『シャッフル』。当然、思考を無に帰す為だけではないはずだ。
では何故。ダイヤが『キャッチ』を選ぶと思い焦ったのか。『シャッフル』だけならそんなに焦る必要がない。つまり、『赤』があったのは5枚目なのか。
いや、裏を突いているのか。確実に『赤』を取らせるために、まるで『赤』が5枚目にあったかのように心理誘導しているのか。
考えれば考えるほど裏の裏の裏……と続いてしまう。結論は一つ。自分を信じない。
【『キャッチ』じゃぁぁぁっ!!】
ダイヤはそう叫びながら目隠しを外してコインを見ると、大量の汗をかいてその場に倒れ込んだ。
『赤』は4枚目にあった。つまり、ダイヤの負けだ。
【っそ……くそ!!何故だ……何故お主は4枚目に赤を……!!】
ダイヤが奥歯を噛み締めてそう聞くと、悠は挑発するかのように力の入っていない顔で天を仰ぎながら言った。
「何となく?」
第五十七話 終
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