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09話 


 祭りで賑わう中、人々はある場違いな格好をした男女に釘付けになっている。


 「母さん、なんでこんな服を持っているの。」


 「え、だって面白いからに決まっているから持っているのよ。」


 「黒夢、これは結婚する男女が着るウェディングドレスではないか!?」


 「まぁ、相撲のまわしを来て町内をランニングするよりかはましか。」


 俺は、何故か日本のお祭りに黒いタキシードを着ることに、紫苑は純白のドレスを着ている。

 紫苑の狐耳はベールを被ることで隠れているが、パタパタと揺れる尻尾によりスカートが不自然に動いている。


 「母さん、どこにドレスなんか買うお金があったの?」


 「全部、ネットで最安値が買ったからお金の心配はしなくてもいいのよ。」


 「黒夢、あのたこ焼きという物が食べたい。」


 さいわい、黒のタキシードはスーツとあまり変わらないから悪目立ちすることはないと思うけど、その考えは紫苑を美しすぎるドレス姿によって無効化される。

 

 「白坂さん、その格好とても似合ってますよ。まるで新郎と花嫁さんみたいです。」


 「キサマら、その格好は儂等わしらのことを馬鹿にしておるのか。」


 「いや、罪滅ぼしで着ることに成りました。」


 「?」

 「?」


 多川たがわ村雨むらさめは、どうやら俺の言っていることが理解できないようだ。

 村雨は猫の姿ではなく紅葉柄の浴衣を着た少女の姿をしている。

 

 「あなた達も一緒に夜店をまわらない。」


 「えっと、何方様どなたさまですか?。」


 「黒夢の母です。」 

 

 母さんは二人の肩に手を乗せて捕まえる。

 その後、あんじょう俺は紫苑を始めに三人の女子に囲まれるが、紫苑が睨みを効かして恋愛に発展することは無かった。

 母さんに無茶を言われたり、あっちこっちに興味を持つ紫苑が迷子にならないようにしっかり手を掴んで出店の品を食べ歩く、射的や型抜き、金魚すくいでは一匹も取れないと紫苑がわめく横で多川さんが金魚を数十匹以上取っていてた。

 何だかんだで祭りは楽しかった。


 去年の祭りは一人りんごアメを無言で齧っていたのが嘘のようにめまぐるしくて疲れたが面白かった。


 祭りのシメは海面を浮ぶ船から打ち上げる花火。

 海岸沿いには人がごった返す中、俺達は多川さんの家にお邪魔して、クーラーが効いた部屋の中で冷たい飲み物を飲みながら花火が打ち上がるのを眺める。

 

 紫苑は遊び疲れてひとで堂々と寝ている。

 多川さんと一緒にお祭りを楽しんだおかげで、紫苑は二人を警戒することが無くなったが、親しき仲にもちゃんと礼儀はわきまえないといけない。


 「多川さん、トイレを借りていいですか。」


 「トイレは廊下を真っ直ぐ進んだところにまります。 あと、年上からさん付けされるのは落ち着かないので、凪沙なぎさと呼んでください。」


 「ありがとう凪沙なぎささん。」


 「はい。」


 さん付けされるのを嫌がられたけど、無意識にさん付けしてしまい。

 俺は逃げるようにトイレに歩く。


 「小僧、話がある。」


 トイレのドアを開けたら、男の神様が仁王立ちしている。

 俺はゆっくり戸を閉めて、何事も無くその場を引き返し、玄関に向かう。

 目的地点を公園のトイレに変更する。


 「人の話を聞かないやつは嫌いだ。」


 「トイレに待機スタンバイする神様に驚き気が動転してます。」


 「そうか、それは悪かったが逃げることは無いだろう。」


 「用件は手短にお願いします。尿意が迫っているので。」


 「そうか、手短に申す。 お前は本当にあの狐と本当にちぎりを交わすのか。」


 「紫苑とちぎりを交わさないと紫苑を封じると言ったのは、お前の方じゃないか?」


 「そう言ったが、人間が神を受け入れるのはそう簡単なことじゃないんだぞ。」


 おのちゃんが俺のことを心配してくれるが、俺はおのちゃんがトイレから離れた隙を狙って、トイレに滑り込む。

 尿意がすぐそこまで来ているゆえ、俺はおのちゃんを無視して用をたす。


 「二分、待ってください。」

 

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