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10話


 長いようで、小学生の時に比べたら短い夏休みも終わりに近付き、俺は実家から自宅への生活に戻る。

 俺の自宅は学校の近くにある一軒家の借家である。周りが過疎化しているのか空き家だらけで家賃が凄く安い。


 「黒夢との二人だけの家かぁ、楽しみなのだぁ。」


 「家って、いっても学校を卒業するまで住んでいる借家だぞ。」


 「でも、二人だけ住むことには変わりないじゃろう。」


 「......そうだな。」


 約一ヶ月ぶりに帰る我が家。

 古い木造建ての平屋で、壁には放置された苦瓜ゴーヤが大量に実っている。


 「母上の家に似ていて落ち着くな。」


 「実家と比べたら狭いけど、1人で住むには十分広いぞ。」

 

 「2人では、どうなのか?」


 「さぁーー? でも、両隣との空き家だから気は使わなくてもいいぞ。」


 空き家ゆえ、草が伸び放題ゆえ大量の蚊が発生しているけど。

 家に非難すれば、どうってことは無い。


 「明後日から学校か。」

 

 部屋の中は生活感が無く、引っ越してきたような感覚だ。

 俺は、一通り掃除を済ませて、片っ端から家電のコンセントを刺して電気を付ける。

 そして、食料などが無いから買出しに行き、米とお惣菜とお菓子を買い。

 手短に晩御飯を済ませて、風呂に入って寝る。


 もう、紫苑と一緒の布団に寝ることに何の抵抗感も感じなくなった俺は、自分の成長に感心するが何か虚しさを感じる。 


、、

、、、 

 

 「黒夢、どうしても付いて行ったらいけないのか。」


 「うん。」


 俺は朝のニュース番組を見ながらインスタント味噌汁を飲む。

 ワカメが歯に張り付くと何か変な感じがするな。


 「どうしても、どうしても、どうしても、無理なのか。」


 「うん。」


 紫苑がテーブルの下に潜り、俺の足の間から上目使いで顔を出してくるが、俺は断固として紫苑を学校に連れて行く分けにはいかない。

 特に理由はないけど、連れて行くと色々面倒なので紫苑はお留守番をさせる。


 「黒夢は私のことを愛しているか?」


 「うん、、、ぅ、ゴホゴホ!」


 「黒夢、大丈夫か!?」


 「あぁ、大丈夫だ、少しせだけだ。」


 この時、せた俺は姿勢がまえかがみになり、紫苑は噎せた俺を心配してテーブルから体を出し、偶然的に口と口が接触した。

 これは、いわゆるキスである。


 俺は数秒間思考しこうが停止してが直ぐに顔を離す。


 「紫苑!?」


 「......」 

 

 紫苑は顔を赤らめて遠くを見ている。


 「おい 意識あるか?」


 「......ハッ 口付け!」


 どうやら、大丈夫なようだ。

 俺は残りの朝飯を口に入れて、食器を流し台で入れる。

 そして、足早に学校に行く支度を済ませて玄関に行く。


 「黒夢! もう行くのか。」


 「あぁ、出来るだけ早く帰ってくるから大人おとなしくお留守番していて。」


 「ちょっと待って、最後に頭を撫で撫でして欲しい。」


 「はい、はい。」


 紫苑のもふもふとした狐耳が生えている頭を優しく撫でる。


 「じゃ、行って来ます。」


 「黒夢、必ず生きて帰って来るんだぞ......ぐすん。」


 俺は毎日この茶番を続けると思うと肩が重くなる。

 紫苑は無事に留守番をつとめられるかはとても心配だ。



 久しぶりの学校の授業は軽く勉強するだけで、通常の授業より早く終わって思っていたより早くも自宅に帰宅できた。

 玄関の鍵を開けて、ドアのを開けた途端とたんに紫苑が走ってくるのを待ち構えるが、家の中に入る紫苑の姿は見えない。


 「もしかしたら。」


 紫苑が俺を驚かす為に隠れてないかと思い、部屋中を探してみるが見つからない。

 押入れも、タンスの中も、屋根裏も、布団の中にもどこも居ない。

 俺は紫苑がドコに行ったか考える。


 何かの拍子で家を出て迷子になっている可能性が高いが、なにちない。

 

 そういえば、鍵は閉まっていた。

 鍵は俺と母さんが1つずつ持っていて鍵は合計二つしてかないから紫苑は鍵は持ってないはずだ。

 窓から外に出たかもしれないが、家の中を調べてみると窓は全部閉まっている。蚊が入らないように窓は常に閉めているからな。

 俺はもしかしたら母さんが紫苑を連れ出したと思い、母さんに電話をかける。


 「もしもし黒夢。 一人暮らしの母親の生存が気になるの?」


 「いや違う。 母さん、今日俺の家に来た?」


 「言って無いけど、どうかしたの。」


 「紫苑が居なくなった。」


 俺は今の状況を母さんに報告した後、念のために凪沙さんにも連絡を取る。


 「もしもし、どうしましたか?」


 「紫苑が居なくなったけど、何があったか知らない。」


 「え、何ですか? もっと詳しく言ってください。」


 凪沙さんなら気配で紫苑を探せないかと尋ねるが無理だそうだ。


 「私はおのちゃんと村ちゃんと協力して探すから、何か気付いたことがあれば言ってくださいね。」

 

 「恩にきります。」


 一通り電話を済ませれ俺は出来ることを考える。

 なぜ、鍵が閉まっていたのか、俺は紫苑を探しながら近くの鍵屋さんを訪ねる。

 

 「お、白坂。久しぶりだな。」


 「先輩、最近この鍵の合鍵とか作りましたか。」


 学校を卒業して鍵師になった先輩が働く近所の鍵屋に入る。

 近頃の鍵屋では写真と鍵番号だけで簡単に合鍵が作れるから、もしかしたら勝手に合鍵を作られているかもしれない。


 「この鍵は、前に黒木が作りに来たな。」


 「ありがとうございます。」


 「ちょっと、、白坂のヤツ何を急いでいるんだ。」


 今日、黒木は学校を休んだと小耳に挟んだけど。

 まさか、紫苑の正体に気付き、俺が居ない時間を狙って家に侵入したのか?

 でも、なぜ黒木がそんな行動を取る。

 分からない。


 俺は原動機付自転車ゲンチャリを猛スピードで走らせて、黒木の家に向かう。



 「すみません、黒木くんは居ますか。」


 インタホンで黒木鉄也がいるか呼びかけると、ドアから中学生ぐらいの女の子が出てくる。


 「兄貴なら朝早くに出かけったきり帰って来ませんよ。」


 「では、帰ってくるまで部屋で待ちますね。」


 「お好きにどうぞ。」


 黒木の妹に入室の許可を取り、俺は黒木の部屋に入り引き出しの中や本棚の裏まで調べる。

 そこで見たものは、ケモノミミの少女が描かれた。漫画や同人、イラストポスターなどがあった。

 そして、引き出しの中には遠くから撮ったであろう紫苑の写真が数枚ある。


 プルルル

 携帯の着信音が鳴り電話にでる。


 「白坂さん、紫苑ちゃんの居場所がわかりました。」


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